そして、恋の種が花開く。

松本ユミ

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そして、恋の種が花開く。

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七月七日、同窓会当日。

今日は土曜で仕事は休み。
朝寝坊しようと思っていたのに、なぜかいつも仕事に行く時間より早く目が覚めてしまった。
思いの外ソワソワしている自分がいて、このテンションは遠足に行く前の小学生の様でひとり気恥ずかしくなる。

それを紛らわす為、朝から洗濯したり部屋の片づけをしたり身体を動かすことにした。

十二時を回り、昼ご飯を軽く食べ終えると特にやることもなくテレビを見る。
こういう時って時間が経つのが遅い気がして、朝から何度時計を確認したか分からない。

ようやく出発時間の一時間前になり、準備を始める。
メイクを済ませると肩まである髪の毛をサイドでまとめ、ロイヤルベージュのシフォンワンピースを着た。
襟にパール風のビジューがあしらわれていてお気に入りだ。

全身が映る鏡の前に立ち、どこかおかしなところはないかチェックし、カーディガンを羽織って家を出た。
最寄り駅に着き、電車に乗りこむ。
時間的にも電車は空いていたので窓側の席に座り、バッグからハガキを出して目を通していた。

同窓会、か。
私が通っていたのは家から近くて普通科の高校。
成績は良くも悪くもなく、目立つことのない平凡な学生だった。
勉強に部活、友達と遊んだり当時付き合っていた彼氏と……って最後の話は思い出したくもない記憶で思わず顔を歪めた。
ちょうど到着を知らせるアナウンスが耳に届き、目的の駅に電車が着く。
席を立って電車から降りると改札を抜け、同窓会会場に向かった。

同窓会はベリルスターという十八階建てのホテルの中にある宴会場のひとつを貸し切って行われる。
ベリルスターはこの辺りでは有名なホテルで、宿泊施設だけではなく、レストランやバーやカフェ、スカイラウンジなどがある。
会場は三階の宴会場とハガキには書いていた。
こういう機会がないと高級なホテルに来ることは滅多にない縁遠い場所。

今日は三十七期生の同窓会。
この学年は七クラスあり、二年から文系と理系のコースごとに分かれていたから一度も同じクラスになったことがない人もいる。
多少の不安を感じながら足を進めた。

ホテルの中に入って目に飛び込んできたのは大きな笹。
今日は七夕ということで、一階のロビーに笹が飾られていた。
まだ開始時間まで余裕があったので、笹のある場所へ向かう。

『ご自由に願いごとをお書きください』という案内と一緒に、テーブルの上に短冊と色とりどりのペンが用意されていていた。

さまざまな年代の人が群がり短冊に願いごとを書いていて、私も黒のペンを取った。
懐かしい、短冊に願いごとを書くなんて何年振りだろう。
最後に書いたのは小学生だった気がする。

少し考えて文字を書いていく。
さすがに恥ずかしくて自分の名前は書けなかったので、ピンクのペンで桜の絵を描いた。
自分のトレードマークみたいなものだ。

願いが叶うといいなと心の中で思いながら短冊を笹に飾った。
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