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次期社長と紡ぐ未来のために
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「梨音ちゃんなら安心して翔真を任せられる。そうそう、結婚式のブーケは梨音ちゃんのお気に入りの花で作らないとな」
「えっ?」
結婚式のブーケ?
しげさんは一体何を言っているんだろうと首を傾げた。
「かすみ草とガーベラが好きと言っていただろう。翔真が梨音ちゃんと付き合っていると聞いてその事を思い出したんだ。わしはそれらを取り入れたブーケを作ってあげたいと思っているんだ」
「あっ……」
そういえば、どんな花が好きか聞かれたことがある。
会話の一部、ほんの些細なことを覚えてくれていたことが嬉しかった。
それがまさか結婚式のブーケにまで飛び火するとは思わなかったけど。
「じいちゃん、そんな話もしていたのか?」
「梨音ちゃんとは入社した頃から仲良しだからな。翔真よりわしの方が付き合いが長いんじゃないのか?なぁ、梨音ちゃん」
しげさんは私に向かってお茶目にウインクしてくる。
「なんだよ、それ」
「おや、わしに嫉妬するのか?」
「うるさいな、じいちゃんは」
思わず眉間にしわを寄せた立花さんを見てしげさんは愉快だと笑う。
さっきまでピリピリしていたのに、今では賑やかな空間に変わっている。
二人のやり取りをじっと見ていたら、秘書の亀井さんが私のそばに来た。
「先日は大変失礼しました。無礼をお許しください」
「いえ、そんな……気にしないでください」
亀井さんに深々と頭を下げられて困惑する。
「無礼って亀井さんまで梨音ちゃんに何かしたのか?俺の味方だったはずだよな?」
「先日のことを河野さんに謝罪をしていなかったので……」
怒りの矛先を向けられた亀井さんは申し訳なさそうに言うと、社長が謝罪の言葉を口にした。
「すまない、亀井。責められるべきはすべて私だ」
「あぁ、そうだよ。すべての元凶は親父だ。この落とし前はきっちりつけてもらう。母さんが旅行から帰ってきたら報告するから」
「翔真、それはちょっと……」
社長の顔色が悪くなる。
それを見たしげさんが「まさか」と疑問を投げかける。
「和志、洋子さんに無断で翔真の縁談を進めようと思っていたんじゃないだろうな」
「……っ」
「全く、そんなことをしたら洋子さんの怒りを買うだけだぞ。冷静に考えたら分かることだろう」
「やっぱりな。おかしいと思ったんだ」
立花さんは呆れたようにため息をつく。
「すまない」
「謝らないといけないのは俺じゃなくて梨音ちゃんだろう。それと、母さんが仕事ばかりでどこにも連れていってくれないって愚痴ってたぞ。休みの日ぐらい母さんと出掛けてあげなよ」
「そうだな……」
社長は小さく笑った。
あんな穏やかに笑う人なんだ。
社長の意外な姿を目の当たりにして驚いていたら、しげさんが立ち上がると私のそばに来てこっそり耳打ちした。
「和志は洋子さん、翔真の母親には頭が上がらないんだよ。偉そうな社長も形無しだろう」
社長の家がかかあ天下だとは思わなかった。
「翔真。ここを使っていいから梨音ちゃんと話をしなさい。和志、わしらは席を外そうか」
「そうですね。河野さん、私の身勝手な言動で君に辛い思いをさせてしまい本当にすまなかった。許して欲しいと言うのはおこがましいけど、私から一言だけ。翔真のことをよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
社長が頭を下げるので、私は慌てて立ち上がって頭を下げた。
「ほら、二人とも顔を上げて。あとは若い二人に任せよう」
しげさんは、社長と亀井さんと一緒に社長室を出て行った。
「えっ?」
結婚式のブーケ?
しげさんは一体何を言っているんだろうと首を傾げた。
「かすみ草とガーベラが好きと言っていただろう。翔真が梨音ちゃんと付き合っていると聞いてその事を思い出したんだ。わしはそれらを取り入れたブーケを作ってあげたいと思っているんだ」
「あっ……」
そういえば、どんな花が好きか聞かれたことがある。
会話の一部、ほんの些細なことを覚えてくれていたことが嬉しかった。
それがまさか結婚式のブーケにまで飛び火するとは思わなかったけど。
「じいちゃん、そんな話もしていたのか?」
「梨音ちゃんとは入社した頃から仲良しだからな。翔真よりわしの方が付き合いが長いんじゃないのか?なぁ、梨音ちゃん」
しげさんは私に向かってお茶目にウインクしてくる。
「なんだよ、それ」
「おや、わしに嫉妬するのか?」
「うるさいな、じいちゃんは」
思わず眉間にしわを寄せた立花さんを見てしげさんは愉快だと笑う。
さっきまでピリピリしていたのに、今では賑やかな空間に変わっている。
二人のやり取りをじっと見ていたら、秘書の亀井さんが私のそばに来た。
「先日は大変失礼しました。無礼をお許しください」
「いえ、そんな……気にしないでください」
亀井さんに深々と頭を下げられて困惑する。
「無礼って亀井さんまで梨音ちゃんに何かしたのか?俺の味方だったはずだよな?」
「先日のことを河野さんに謝罪をしていなかったので……」
怒りの矛先を向けられた亀井さんは申し訳なさそうに言うと、社長が謝罪の言葉を口にした。
「すまない、亀井。責められるべきはすべて私だ」
「あぁ、そうだよ。すべての元凶は親父だ。この落とし前はきっちりつけてもらう。母さんが旅行から帰ってきたら報告するから」
「翔真、それはちょっと……」
社長の顔色が悪くなる。
それを見たしげさんが「まさか」と疑問を投げかける。
「和志、洋子さんに無断で翔真の縁談を進めようと思っていたんじゃないだろうな」
「……っ」
「全く、そんなことをしたら洋子さんの怒りを買うだけだぞ。冷静に考えたら分かることだろう」
「やっぱりな。おかしいと思ったんだ」
立花さんは呆れたようにため息をつく。
「すまない」
「謝らないといけないのは俺じゃなくて梨音ちゃんだろう。それと、母さんが仕事ばかりでどこにも連れていってくれないって愚痴ってたぞ。休みの日ぐらい母さんと出掛けてあげなよ」
「そうだな……」
社長は小さく笑った。
あんな穏やかに笑う人なんだ。
社長の意外な姿を目の当たりにして驚いていたら、しげさんが立ち上がると私のそばに来てこっそり耳打ちした。
「和志は洋子さん、翔真の母親には頭が上がらないんだよ。偉そうな社長も形無しだろう」
社長の家がかかあ天下だとは思わなかった。
「翔真。ここを使っていいから梨音ちゃんと話をしなさい。和志、わしらは席を外そうか」
「そうですね。河野さん、私の身勝手な言動で君に辛い思いをさせてしまい本当にすまなかった。許して欲しいと言うのはおこがましいけど、私から一言だけ。翔真のことをよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
社長が頭を下げるので、私は慌てて立ち上がって頭を下げた。
「ほら、二人とも顔を上げて。あとは若い二人に任せよう」
しげさんは、社長と亀井さんと一緒に社長室を出て行った。
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