同期と私の、あと一歩の恋

松本ユミ

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同期という距離

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過去のことを思い出すだけで苦々しい気持ちになる。
しかし、いつまでも引きずられているわけにはいかない。
切り替えて目の前の仕事に集中しよう。

ふと、ずっと気になっていたことを思い出して口を開いた。

「ねぇ、このアニマルシリーズってレアアイテムはまだ導入してないでしょ。だから、今回はレアアイテムとして色違いを提案しようと思うんだけど、どうかな?」

「あー、そこは盲点だったかも。他のカプセルトイにはレアキャラとかレアアイテムは導入済みだもんな。いいと思うよ」

本田くんは感心したように言う。
彼の言葉はいつも私に自信を与え、背中を押してくれる。

「本田くんに相談してよかった。ありがとう」

笑顔でお礼を伝えた。

私たちは同期ということもあり、お互いに遠慮なく本音で言い合えるのがいい関係だと思っている。

『もっとユーザー目線で考えたほうがいいと思うけど』
『うーん、でもこのターゲット層には、こっちの方が刺さると思わない?』
『確かに。じゃあ、その方向で進めてみよう』

こんな風に企画について正直に意見交換できるのが本当にありがたい。
私たちはライバルであり、良き相談相手だ。

新しい発想や行き詰っていた問題の解決策は、会話の中からヒントを得て見つかることもある。
馴れ合いのない真剣なやり取りがあるからこそ、お互いに高め合っていけるんだと思う。


「どういたしまして。てか、早く取り掛からないと残業する羽目になるぞ。今日の飲み会、広瀬だけ不参加で美味い酒が飲めないかもな」

ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる本田くん。
せっかく感謝の言葉を伝えたのに、すぐにこうやって軽口をたたいてくるんだから。

「分かってるって! 今から集中するんだから邪魔しないでよ」

手で追い払うような仕草をすると、本田くんは楽しそうにクスクスと笑う。

「はいはい。じゃ、頑張れよ」

肩をポンと叩いてから、彼は隣の自席に座った。

さて、やるかと気合を入れ直す。
とりあえず、あのアイデアをもとに企画内容をまとめないといけない。
核となる部分が決まったので具体的な作業に取り掛かれる。

この後は資料を作ったり、関係者との調整などやることが山積みだ。

企画書に説得力を持たせるためのデータが欲しいので、ユーザーの生の声という裏付けも必要になってくる。
そのためには、アンケートをとらないといけない。
出来るだけ早くデータ収集を開始したいので、今日中にその準備を済ませておきたい。

スクィーズという、いいアイデアが浮かんだので絶対にこの企画を通したい。
大きく深呼吸してからパソコンに向き直り、キーボードに手をのせた。
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