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3章
50.兄さんは、僕にとって憧れだった*
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カタカタと身体が揺さぶられている。重い瞼を開けると、光の閉ざされた狭苦しい空間で横たわっていた。
ここは、どこだ? 板張りの床は固く、冷えきっている。起き上がろうとしたところで、両手と両足が縛られていることに気付いた。
「なんで……」
そういえば僕は、ロランに寮から連れ出され、気絶させられたんだ。床から伝わってくる振動から、ここが荷馬車の中だと察した。
拉致されて、どこかに運ばれているようだ。とんでもない事態になっていると知り、ぼんやりしていた頭が一気に覚醒した。
横たわりながら周囲を見渡すと、人影を見つける。
「兄さん、起きたんだね」
目を凝らしてみると、それが弟のリオンだと気付いた。身を捩じらせながら寝返りを打ち、リオンのもとに近付く。
リオンは、膝を抱えて蹲っている。その光景を見て、ピンときた。
原作でも似たような展開があった。悪役令息のアレン・マクミランがモブを操って、リオンを拉致するんだ。
原作通りなら、向かう先は闇オークション。愛玩目的で美しい青年を囲おうとする高位貴族に売り払わられるんだ。
僕もこの場にいるということは、双子まとめて売り払うつもりなのか? 一体、誰がそんなことを……。
状況を把握しようとしていると、リオンが冷たい手で、僕の額に触れる。
「まだ頭が痛い? ひどいよね。魔法で気絶させるなんて。傷つけないでってお願いしたのに……」
触れられたことで、リオンは手足を拘束されていないことに気付く。闇属性の僕だけが警戒されていたのか?
理由は分からないが、この場にリオンがいるのは救いだ。リオンに拘束を解いてもらって、二人でこの場から逃げ出そう。
「リオン、今すぐ逃げよう。二人で力を合わせれば、学園に戻れるはずだ」
希望が見えたものの、リオンはふっと可笑しそうに笑う。
「逃げる? そんなの許さないよ」
「は……?」
どういうことだ? 逃げ出さなければ、僕らはどこかに連れて行かれるんだぞ?
わけが分からずに固まっていると、リオンは冷たい手で僕の頬を包み込んだ。
「僕らはこれから、新しい地で二人きりで生きていくんだ。ロラン先輩にそういう場所を用意してもらったから」
……なにを、言っているんだ? 思考が追い付かずにいると、リオンは僕に寄り添うように床に横たわった。
「流石にもう気付いているよね? 僕が、兄さんのことをどんな風に想っているのか」
至近距離で瞳を覗き込まれて、ゾクッと鳥肌が立つ。目の前にいるのは弟のはずなのに、まるで知らない男を前にしているような気分だ。
リオンは静かに微笑みながら話を続ける。
「僕は、ずっと兄さんが好きだった。兄弟としてではないよ。もっと深くどろどろとした感情で、兄さんのことを見ていた」
リオンが、僕のことを好き。キスを迫られた時もその可能性は過ったけど、気づかないふりをしていた。そんなのは、あってはならないことだから。
リオンは僕との距離を縮めると、こつんと額を押し当てる。幼い頃に、じゃれ合っていたように。
「明るくて、優しくて、純粋な兄さんは、僕にとって憧れだった。兄さんも僕のことを一番に愛してくれた。幼い頃の僕は、この先も互いだけを愛して生きていけると思っていたんだ」
確かに僕は、リオンのことを愛していた。だけどそれは兄としてだ。双子の僕らが互いだけを愛して生きていくなんて、どう考えてもおかしい。
「だけどある時、知ってしまったんだ。マクミラン家の嫡男である兄さんは、いずれ誰かと結婚しなければならないって。そして次男である僕は屋敷を出て行かなければならない。僕はそのことが、悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ」
貴族の嫡男は、家を存続させるために結婚して跡取りを作るのが習わしだ。兄を愛するリオンは、そのことが受け入れられなかったのだろう。
リオンは僕の髪に、そっと指を絡ませる。
「だから、兄さんが闇属性だと分かった時、安心したんだ」
「あん、しん?」
「うん。だってそうでしょ? 忌み嫌われる闇属性の子に、家を継がせるはずがない。結婚相手だってそうそう見つからない。誰からも愛されない兄さんを、僕だけが愛していられる」
力が抜けてしまう。そんな話は聞きたくなかった。僕が闇属性であることを、リオンは密かに喜んでいたなんて……。
興奮したように語っていたリオンだったが、ふっと火が消えたように表情を消す。
「だけど学園に入学してから、不測の事態が起きた。ダミアン寮長が兄さんに首輪を付けて、闇属性だと判別できなくしたんだ。そのせいで、兄さんはクラスメイトにも好かれるようになって……」
リオンは、僕がクラスメイトと親しくしているのを好ましく思っていないようだったけど、それが嫉妬心からくるものだとは思わなかった。リオンの思惑を知ると、先日の図書室での出来事が過る。
「もしかして、図書室で魔封じの指輪を外したのは……」
否定してくれと願っていたが、リオンはあっさりと頷いた。
「そうだよ。僕が外した。みんなに本当のことを知ってもらうために」
やはりあれは、事故ではなかったんだ。リオンが故意に外したと知って、憤りが湧きあがった。
「……ふざけるな」
堪えきれずに悪態を吐く。だけどリオンは、怯える様子はなく、涼し気な笑みを浮かべていた。
「僕が憎い? 当然か。僕は昔から、兄さんに歪んだ愛を向けていたんだから」
なんで開き直っているんだよ。身を捩じらせながらリオンと距離を取り、鋭く睨みつける。
「僕は、リオンの気持ちには応えられない」
はっきりと拒絶をすると、リオンの顔から笑みが消える。青い瞳は、次第に淀んでいった。
押し黙るリオン。荷馬車が揺れる音だけが響く空間で、次の出方を待った。しばらくすると、リオンは重い口を開く。
「それは……ダミアン寮長が好きだから?」
思いがけずダミアンの名前が挙がったことで、心臓が跳ね上がる。ここで頷いたら、ダミアンまで巻き込んでしまうかもしれない。
言葉を詰まらせていると、リオンはこちらに手を伸ばす。
「ねえ、兄さん。寮長には、ここ、触られた?」
リオンは、さわさわと僕の尻を撫でる。反射的に身を固くすると、リオンは恍惚とした笑みを浮かべた。
「その反応、まだみたいだね」
そう確信すると、執拗に尻を撫で繰り回す。
「やめろ。そんなとこ、触るな」
「逃げないで。兄さんの初めては僕がもらう。大丈夫だよ。やり方は教えてもらった。僕がリードしてあげるよ」
身を捩じらせて抵抗したものの、拘束されているせいで逃げられない。
リオンは、ねっとりと尻を撫でながら、僕をきつく抱き寄せた。
膝を曲げて距離を取ろうとすると、ズボンの上からでも分かるほど張り詰めたものが押し当てられていた。
思わず、息を呑む。信じられないけど、リオンは僕に欲情しているんだ。
リオンは僕を抱こうとしているのか? 嘘だろう? リオンはBLゲームの主人公で、受けだったのに……。
戸惑っているうちにも、リオンは布地の上からぐりぐりと窄みに指を押し付ける。
「う、あ……そこはだめ……」
その一線だけは超えてはならない。兄弟なら尚更だ。
緊急事態だと判断して、魔封じの指輪を外そうとする。それを目敏く察したリオンは、静かに笑った。
「闇魔法で洗脳しようとしても無駄だよ。兄さんだって知っているでしょ? 光属性の魔導士には、闇魔法は効かないって」
そうだった……。たとえ、闇魔法を使えるようになったとしても、リオンのことは操れない。
「諦めて僕のものになってよ」
僕は、どこまでも無力だ……。放心していると、リオンは僕のズボンに手をかける。
ああ、もう、本当に嫌だ。誰か、助けてくれ。
「寮長……助けて……」
零れるように発した助けの声で、リオンの手が止まる。興奮を滲ませた顔は、一瞬のうちに絶望に変わった。
「こんな時まで、寮長のことを思い出すんだね……」
淡々とした口調で漏らした直後、異変が起きた。
荷馬車の外から、甲高い竜の鳴き声が聞こえる。木々がざわめき、鳥が一斉に飛び立つ羽音が響いた。
何か起こったのか? 警戒していると、「うわあっ」と男の悲鳴が聞こえる。荷馬車を走らせていた御者の声だろう。
馬の鳴き声と共に、馬車が急停止する。僕らは衝撃に耐えきれず、転がって壁に身体を打ち付けた。
「いててて……」
ジンジンとした痛みに悶えていると、またしても御者の叫び声が響く。
「火が……火がぁ!」
非常事態が起こっているのは明らかだ。リオンは、青ざめた顔で荷馬車の扉を開けた。
むわっと熱気が立ち込める。馬車は森の中を走行していたようだが、辺りは一面火の海になっていた。
「なんだ、これは……」
これにはリオンも想定外だったようで、唖然としている。横たわりながら燃え盛る炎を見つめていると、炎の中から人影が見えた。
ブロンドの長い髪を揺らめかせながら、こちらに歩いてくる男。赤い瞳が覗く鋭い眼差しには、周囲を震え上がらせるような威圧感があった。
間違いない。あれはダミアンだ。
ダミアンは僕の姿を見つけると、驚いたように目を瞠る。その直後、転移魔法で荷馬車の中まで入ってきた。
「やっと見つけた」
手足を縛られた状態のまま、僕はダミアンに抱き寄せられる。その温もりに、泣きそうになった。
来てくれたのか……。学園の外に出てしまったら、もう助けには来てくれないと思っていた。
ダミアンを抱きしめたいけど、両手を縛られているせいで叶わない。代わりに、ダミアンの胸板に額を押し当てた。
伝えたいことはたくさんあるのに、何ひとつ言葉にならない。泣き出しそうなのをどうにか堪えていると、ダミアンはより強く僕を抱きしめた。
「安心しろ。貴様は俺のものだ。誰にも傷つけさせない」
その言葉で、堪えていた涙が溢れ出した。
ここは、どこだ? 板張りの床は固く、冷えきっている。起き上がろうとしたところで、両手と両足が縛られていることに気付いた。
「なんで……」
そういえば僕は、ロランに寮から連れ出され、気絶させられたんだ。床から伝わってくる振動から、ここが荷馬車の中だと察した。
拉致されて、どこかに運ばれているようだ。とんでもない事態になっていると知り、ぼんやりしていた頭が一気に覚醒した。
横たわりながら周囲を見渡すと、人影を見つける。
「兄さん、起きたんだね」
目を凝らしてみると、それが弟のリオンだと気付いた。身を捩じらせながら寝返りを打ち、リオンのもとに近付く。
リオンは、膝を抱えて蹲っている。その光景を見て、ピンときた。
原作でも似たような展開があった。悪役令息のアレン・マクミランがモブを操って、リオンを拉致するんだ。
原作通りなら、向かう先は闇オークション。愛玩目的で美しい青年を囲おうとする高位貴族に売り払わられるんだ。
僕もこの場にいるということは、双子まとめて売り払うつもりなのか? 一体、誰がそんなことを……。
状況を把握しようとしていると、リオンが冷たい手で、僕の額に触れる。
「まだ頭が痛い? ひどいよね。魔法で気絶させるなんて。傷つけないでってお願いしたのに……」
触れられたことで、リオンは手足を拘束されていないことに気付く。闇属性の僕だけが警戒されていたのか?
理由は分からないが、この場にリオンがいるのは救いだ。リオンに拘束を解いてもらって、二人でこの場から逃げ出そう。
「リオン、今すぐ逃げよう。二人で力を合わせれば、学園に戻れるはずだ」
希望が見えたものの、リオンはふっと可笑しそうに笑う。
「逃げる? そんなの許さないよ」
「は……?」
どういうことだ? 逃げ出さなければ、僕らはどこかに連れて行かれるんだぞ?
わけが分からずに固まっていると、リオンは冷たい手で僕の頬を包み込んだ。
「僕らはこれから、新しい地で二人きりで生きていくんだ。ロラン先輩にそういう場所を用意してもらったから」
……なにを、言っているんだ? 思考が追い付かずにいると、リオンは僕に寄り添うように床に横たわった。
「流石にもう気付いているよね? 僕が、兄さんのことをどんな風に想っているのか」
至近距離で瞳を覗き込まれて、ゾクッと鳥肌が立つ。目の前にいるのは弟のはずなのに、まるで知らない男を前にしているような気分だ。
リオンは静かに微笑みながら話を続ける。
「僕は、ずっと兄さんが好きだった。兄弟としてではないよ。もっと深くどろどろとした感情で、兄さんのことを見ていた」
リオンが、僕のことを好き。キスを迫られた時もその可能性は過ったけど、気づかないふりをしていた。そんなのは、あってはならないことだから。
リオンは僕との距離を縮めると、こつんと額を押し当てる。幼い頃に、じゃれ合っていたように。
「明るくて、優しくて、純粋な兄さんは、僕にとって憧れだった。兄さんも僕のことを一番に愛してくれた。幼い頃の僕は、この先も互いだけを愛して生きていけると思っていたんだ」
確かに僕は、リオンのことを愛していた。だけどそれは兄としてだ。双子の僕らが互いだけを愛して生きていくなんて、どう考えてもおかしい。
「だけどある時、知ってしまったんだ。マクミラン家の嫡男である兄さんは、いずれ誰かと結婚しなければならないって。そして次男である僕は屋敷を出て行かなければならない。僕はそのことが、悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ」
貴族の嫡男は、家を存続させるために結婚して跡取りを作るのが習わしだ。兄を愛するリオンは、そのことが受け入れられなかったのだろう。
リオンは僕の髪に、そっと指を絡ませる。
「だから、兄さんが闇属性だと分かった時、安心したんだ」
「あん、しん?」
「うん。だってそうでしょ? 忌み嫌われる闇属性の子に、家を継がせるはずがない。結婚相手だってそうそう見つからない。誰からも愛されない兄さんを、僕だけが愛していられる」
力が抜けてしまう。そんな話は聞きたくなかった。僕が闇属性であることを、リオンは密かに喜んでいたなんて……。
興奮したように語っていたリオンだったが、ふっと火が消えたように表情を消す。
「だけど学園に入学してから、不測の事態が起きた。ダミアン寮長が兄さんに首輪を付けて、闇属性だと判別できなくしたんだ。そのせいで、兄さんはクラスメイトにも好かれるようになって……」
リオンは、僕がクラスメイトと親しくしているのを好ましく思っていないようだったけど、それが嫉妬心からくるものだとは思わなかった。リオンの思惑を知ると、先日の図書室での出来事が過る。
「もしかして、図書室で魔封じの指輪を外したのは……」
否定してくれと願っていたが、リオンはあっさりと頷いた。
「そうだよ。僕が外した。みんなに本当のことを知ってもらうために」
やはりあれは、事故ではなかったんだ。リオンが故意に外したと知って、憤りが湧きあがった。
「……ふざけるな」
堪えきれずに悪態を吐く。だけどリオンは、怯える様子はなく、涼し気な笑みを浮かべていた。
「僕が憎い? 当然か。僕は昔から、兄さんに歪んだ愛を向けていたんだから」
なんで開き直っているんだよ。身を捩じらせながらリオンと距離を取り、鋭く睨みつける。
「僕は、リオンの気持ちには応えられない」
はっきりと拒絶をすると、リオンの顔から笑みが消える。青い瞳は、次第に淀んでいった。
押し黙るリオン。荷馬車が揺れる音だけが響く空間で、次の出方を待った。しばらくすると、リオンは重い口を開く。
「それは……ダミアン寮長が好きだから?」
思いがけずダミアンの名前が挙がったことで、心臓が跳ね上がる。ここで頷いたら、ダミアンまで巻き込んでしまうかもしれない。
言葉を詰まらせていると、リオンはこちらに手を伸ばす。
「ねえ、兄さん。寮長には、ここ、触られた?」
リオンは、さわさわと僕の尻を撫でる。反射的に身を固くすると、リオンは恍惚とした笑みを浮かべた。
「その反応、まだみたいだね」
そう確信すると、執拗に尻を撫で繰り回す。
「やめろ。そんなとこ、触るな」
「逃げないで。兄さんの初めては僕がもらう。大丈夫だよ。やり方は教えてもらった。僕がリードしてあげるよ」
身を捩じらせて抵抗したものの、拘束されているせいで逃げられない。
リオンは、ねっとりと尻を撫でながら、僕をきつく抱き寄せた。
膝を曲げて距離を取ろうとすると、ズボンの上からでも分かるほど張り詰めたものが押し当てられていた。
思わず、息を呑む。信じられないけど、リオンは僕に欲情しているんだ。
リオンは僕を抱こうとしているのか? 嘘だろう? リオンはBLゲームの主人公で、受けだったのに……。
戸惑っているうちにも、リオンは布地の上からぐりぐりと窄みに指を押し付ける。
「う、あ……そこはだめ……」
その一線だけは超えてはならない。兄弟なら尚更だ。
緊急事態だと判断して、魔封じの指輪を外そうとする。それを目敏く察したリオンは、静かに笑った。
「闇魔法で洗脳しようとしても無駄だよ。兄さんだって知っているでしょ? 光属性の魔導士には、闇魔法は効かないって」
そうだった……。たとえ、闇魔法を使えるようになったとしても、リオンのことは操れない。
「諦めて僕のものになってよ」
僕は、どこまでも無力だ……。放心していると、リオンは僕のズボンに手をかける。
ああ、もう、本当に嫌だ。誰か、助けてくれ。
「寮長……助けて……」
零れるように発した助けの声で、リオンの手が止まる。興奮を滲ませた顔は、一瞬のうちに絶望に変わった。
「こんな時まで、寮長のことを思い出すんだね……」
淡々とした口調で漏らした直後、異変が起きた。
荷馬車の外から、甲高い竜の鳴き声が聞こえる。木々がざわめき、鳥が一斉に飛び立つ羽音が響いた。
何か起こったのか? 警戒していると、「うわあっ」と男の悲鳴が聞こえる。荷馬車を走らせていた御者の声だろう。
馬の鳴き声と共に、馬車が急停止する。僕らは衝撃に耐えきれず、転がって壁に身体を打ち付けた。
「いててて……」
ジンジンとした痛みに悶えていると、またしても御者の叫び声が響く。
「火が……火がぁ!」
非常事態が起こっているのは明らかだ。リオンは、青ざめた顔で荷馬車の扉を開けた。
むわっと熱気が立ち込める。馬車は森の中を走行していたようだが、辺りは一面火の海になっていた。
「なんだ、これは……」
これにはリオンも想定外だったようで、唖然としている。横たわりながら燃え盛る炎を見つめていると、炎の中から人影が見えた。
ブロンドの長い髪を揺らめかせながら、こちらに歩いてくる男。赤い瞳が覗く鋭い眼差しには、周囲を震え上がらせるような威圧感があった。
間違いない。あれはダミアンだ。
ダミアンは僕の姿を見つけると、驚いたように目を瞠る。その直後、転移魔法で荷馬車の中まで入ってきた。
「やっと見つけた」
手足を縛られた状態のまま、僕はダミアンに抱き寄せられる。その温もりに、泣きそうになった。
来てくれたのか……。学園の外に出てしまったら、もう助けには来てくれないと思っていた。
ダミアンを抱きしめたいけど、両手を縛られているせいで叶わない。代わりに、ダミアンの胸板に額を押し当てた。
伝えたいことはたくさんあるのに、何ひとつ言葉にならない。泣き出しそうなのをどうにか堪えていると、ダミアンはより強く僕を抱きしめた。
「安心しろ。貴様は俺のものだ。誰にも傷つけさせない」
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