救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

仲間

４８．無用な殺生

人の味を知った動物を殺めなければいけないのはこちらの世界でも同じだ。

原因を潰せば元の生息地に戻ってくれると分かっていてもだ。

早く止めないと、そのことで余計生態系が乱れてしまう。

私が着いた時には、既に冒険者に死人が出ていて、大型の魔物が何体か倒れていた。

その奥に、昨日の魔獣を見付けた。

「あの時の...！！」

餌が足りなかったの？こんな危険な所に出てくるなんて。

「応援か！！早く攻撃しろ！！」

様子を見てる魔物もいる。無闇に攻撃したら、死ななくていい命が死んでしまう。

「待って！！攻撃してきてない魔物を刺激したら」

冒険者達は聞く耳を持たなかった。

どうして止めるべきか、頭を巡らせていたら、魔法を纏った槍が、昨日の魔物の肩に刺さった。

様子を見ていただけだったのに、攻撃されて悲鳴を上げて倒れた。

「みんなトドメを刺せ！！」

「ダメ！！！」

昨日の魔獣以外を気絶させたらいいんだ。思い付いたものを魔術式に組み込んだ。広範囲の魔術

成功したことのない無詠唱を咄嗟にやった。

あちこちでバチバチと爆ぜるような音がして、昨日の魔獣以外、人も魔物も気絶した。

昨日の魔獣に駆け寄って、傷口を確認した。

「かなり深い。」

治癒の魔術を掛けようとすると、指先に電流が走って弾かれた。

「なんで！？」

魔術式を視る目で確認すると、刺さった矢には黒い魔術式が巻き付いていて、それが魔獣を包んでいた。

束縛の魔術だ。魔法を無効化するから、治癒魔法を使えないんだ。

「こんなもの！！」

私は矢を掴んだ。

「クラッキング！！」

自分で編み出した技で、魔術式を掴んで、掴んだ魔術を解除する。

その代わり反動がある。反動は術によりけりだ。

腕に衝撃が走ってビリビリと痛んだ。

「壊れて！」

ガラスが割れるような音がして、魔術式は消えた。

急いで矢を抜いて、魔獣に治癒を掛けた。けれど、なかなか血は止まらない。

「子供がいるんでしょう！？死んじゃダメ！子供達まで死んじゃう！！」

血溜まりの中で、私は何度も治癒魔術を掛けた。

「原因はわかってるの！なんとかするから、生きて！」

魔獣が目を開いて、ゆっくりと起き上がった。魔獣は体の向きを変えて、私に頬擦りをしてくれた。

「治ったの...？良かった...」

みんなが目覚める前に返さないと。

「あなたは人間を噛んでないでしょ？今のうちに子供のところに戻って。またこんな事が起こらないようになんとかするから、お願い。」

魔獣は私を見据えて、もう一度頬擦りしてから、森へ引き返した。

「これは全て、君がやったの？」

真後ろから声がして振り返った。

コバルトブルーの髪に碧眼をの男性が立っていた。魔術師の服装に近いけど剣士のような装備だった。

「君は、何者？」