救国の魔女と滅国の皇子～プログラマーは魔法も作れる！？～

仲間

４９．弔い

背筋がゾクッとして、他の冒険者とは圧倒的な力の差を察した。

「クロード！！」

馬に乗って現れたのは、剣士の姿をした男性だった。

「テオ。」

「ああ。まさか、これをやったのは君なのか！？」

「名前は？」

「ツバキ・コノエ。魔術師です。ラクタナから来ました。ラクタナでのランクはＡです。」

「さっきの魔獣とは仲が良さそうだったけど、君は彼らをどうするつもりかな？」

「話を聞けそうな冒険者だけ術を解いて、人間に噛み付いた魔物とそうでない魔物を分けて、後者は術を解いて森へ追い返します。人間の味を覚えてしまった魔物は仕方ありませんから、なるべく痛くないように殺します。」

「一度麓まで下りてきた魔物を？」

「仕方なく下りてきたんです。原因が無くなれば戻ります。彼らだって危険の多い麓になんて来たくないんですから。」

「原因がわかるの？」

「目星は付いています。解決したら、街の水不足、井戸が枯れる問題、水から匂いがする問題も解決します。」

「へぇ。」

一瞬、強い目眩がした。きっと短時間で魔力と頭を使いすぎたんだ。

「君は学者なの？」

「いいえ。でも、多少の知識はあります。あなたは、魔物達をどうする気ですか。」

「流石にこの数を倒すと、森に影響が出るから、二次災害を起こしかねない。逃げる魔物は見逃そう。でも...」

珍しいものを見るかのように、クロードと呼ばれた男性は私を頭から爪先まで見た。

「なんですか。」

「君の案を採用しよう。折角全員が無効化されてるんだからね。」

クロードと呼ばれた男性は、本当に私の言った通りにしてくれた。

「ほとんどを殺さずに済んだね。もう冒険者の状態異常を解いていいよ。」

私が術を解くと、冒険者達は目を覚ました。

「しばらくは下りてこないだろうから、一旦ギルドに戻ろうか。」

「原因を確かめないと。」

一歩踏み出した瞬間に、強い目眩で体のコントロールを失った私は、クロードに抱き止められた。

「相当な魔力を使って無理をしたようだね。それでは調査は無理だよ。」

確かに、これでは無理だ。

「まだ、やることがあるんです。」

私は魔物達の遺体の前に膝を付いて手を合わせ、冒険者達の遺体にも同じように手を合わせた。

「弔いか？」

「はい。私の国の。」

「済んだのなら帰ろう。ギルドへ。」

クロードは私を抱き上げた。

「転移魔法を使うから動かないでね。」

次の瞬間には、私はギルドの前に居た。

転移魔法なんてあったんだ。ラクタナの本にはそんな記述は無かった。

「マスター！？」

今確かに、クロードはギルドの職員に、マスターと呼ばれた。ギルドマスターと。

「戦いは終わった。向こうの怪我人の手当と、死者と倒した魔物の回収をしてくれ。魔物はしばらく下りてこない。」

「承知しました！」

「下ろしてください。」

「また目眩を起こすよ。君はしばらく横になっていないと。」

次の瞬間、ギルドマスターの部屋らしき部屋に移動していて、私はふかふかのソファに寝かされた。

「怪我人の治癒をしないと！」

「おやすみ。」

ギルドマスターが私の目に手をかざすと、私は眠りに引きずり込まれた。