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激動
64.最後のお願い
しおりを挟む「わかった、言う。全部言うから、これ以上村人に手を出さないでくれ。」
「最初からそうしていればいいものを。やはり農民は馬鹿ばかりだな。」
馬に乗ったまま眺めていた男が吐き捨てる様に言った。
「何が目的かは知らない。本当に聞いてない。でも、行先は知ってる。」
「何処に向かってる。」
「王都だ。王都に向かってるって言ってた。」
「容姿は!」
「黒くて腰まである長い髪だった。瞳の色も黒で、外国人だった。」
「何処から来た!」
「森に倒れてたんだ。本人も何処から何故来たのかわからないって言ってた。」
「嘘を吐くな!!」
「本当だ。国が分かる物も持ってなかったから、どこから来たのか本当にわからない。」
未だ馬に乗った男は、追及しようとした職員を止めた。
「国が分かったところでどうしようもできまい。小僧、まだ何処かに隠しているだろう?破滅の魔女の残した物を。」
「っ…!」
「言わぬのなら…おい、村の女子供を連れてこい。」
「や、やめろ!言う!言うから!」
男は軽蔑の眼差しでサンを見下した。サンは掌から血が出る程、拳を強く握った。
「ラルさんの家のキッチン下に収納がある。そこにツバキが作ってくれた物のオリジナルを全部保管してある。」
職員達はラルの家を捜索した。その間、村人達は燃える我が家を見ているしかなかった。
「統括官!ありました!」
職員達は大きな木箱を男の前に置いた。
男は箱の中を見て、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「全て回収する。馬に積み込め。」
「ツバキが…ツバキが俺達の為に必死に作ってくれた物が…」
職員の一人がラルの家にも火を着けた。
家が燃え行く姿を見てレックは泣き叫んだ。
「うるさいガキめ!!黙れ!!」
「やめろ!」
レックを庇ったラルが足蹴りをくらって倒れ、吐血した。
「父ちゃん!!」
「用は済んだ。帰るぞ。」
「しかし、この者達は…」
「街からそう遠くない。煙を見て冒険者が来たら厄介だ。喜べゴミ共。本来なら全員磔刑だが、特別に許してやる。」
職員達は何もかもをそのままにして去っていった。
少しして村人達の束縛の魔法は解けた。
サンは直ぐに立ち上がり、失意のどん底で茫然自失の村人達に向けて叫んだ。
「ツバキが別の場所に全部隠してくれてる!!!」
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