救国の魔女と滅国の皇子~プログラマーは魔法も作れる!?~

一条弥生

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激動

65.信じた力

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村人達の瞳は希望の色を取り戻した。

「みんな一緒に来てくれ!!!」

サンは男の村人を集め、ツバキが大半の時間を過ごしていた砂地に向かった。

「ここに埋めてあるって言ってたんだ!!」

しかし、砂地を掘り起こしても、何も見付からなかった。

「おい!何も無いぞ!!」

「ツバキは確かにいつもの場所に埋めたって言ったんだ!そんな、無いはずない!」

「あの女嘘を吐いたんだ!やっぱり俺達を騙してたんだ!」

ツバキを良く思っていなかった男達が怒りの声を上げた。

「サン。本当にここなのか?」

「ツバキはいつもの場所って言ったんだ!ここしかない!」

「あの慎重なツバキがこんなに直ぐ見付かる場所に埋めるか?」

サンは確かにそうだと、掘り起こされた砂地を見た。

ツバキならもっと見付かりにくい場所を選ぶことは、誰よりもサンがよく知っていた。

「いつもの場所・・・いつもの・・・」

サンの脳裏に、休憩するツバキの姿が浮かんだ。

「いつも休憩する場所だ・・・!!」

サンはいつもツバキが休憩の時に座っていた石に駆け寄った。

少し土を払うと、石を動かした跡が現れた。

「やっぱり・・・!この下だ!!」

「そんな石どかせられねえよ!」

「押してなんとかならないか!?」

「魔法がなきゃどうにもならねえ!」

「どうにかするしかないんだ!押すぞ!」

男達が集まって押しても、石はビクともしなかった。

「魔法無しで動かすのは無理だ。」

レックが一人村から走って来たのを見て、ラルは驚いた。

「父ちゃん!!」

「レック!?」

「石を動かすんでしょ?俺がやる!」

「やるって魔術カードも無いのにどうやって・・・」

「俺、浮遊の魔術式は全部覚えてるんだ。退いて。」

レックの目は泣き腫らして真っ赤になっていた。

レックは石に手を当てた。

誰もが子供のレックには無理だと思った。だが、レックは違った。

ツバキに言われた、魔力が強い、その一言で、自分はできると確信していた。

ありったけの力を込めてレックが呪文を唱えると、石は宙に浮いた。

「今だ!押せ!」

レックのおかげで石を退かすことができた村人達は、石の下だった土を掘り起こし、ツバキが埋めた箱は容易く見付かった。

「良かった・・・」

魔力切れで倒れたレックをラルは抱き締めた。

「良く頑張ったな。ありがとう。」

サンが箱を開けると、中にはツバキが作った物全てのスペアが入っていた。

サンはそれを漁って、雨を降らせる魔術カードを掴み取った。

村の中心まで走ったサンは、ツバキに貰ったミサンガに手を重ねた。

魔法が使いやすくなるミサンガ。サンはそれを信じて、魔力を全て込めて雨を降らせる魔法を使った。

村には全ての火を消すほど土砂降りの雨が降った。

「ツバキ・・・こうなると思ったから、あんな苦しそうな顔してたのか・・・」

雨が止むと村人の一人が、サンに手紙を渡した。

「箱の一番下に入ってた。ツバキからお前宛だ。」

「俺に・・・?」

封筒には確かに、サンくんへ、とツバキの字で記されていた。
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