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17.水無瀬京介の悲願
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総理官邸に呼ばれた水無瀬は、総理執務室のドアを開けた。
「失礼いたします。」
総理大臣の加々宮 隆一は、机の前に水無瀬を立たせた。
「巫女の身柄は京都の邸宅に移すことになりそうだ。」
政府としては大きな痛手であることを加々宮は淡々と言った。
「守り手の反発がかなり強くてね、党内でも政府がこのまま巫女を管理することに否定的な意見が強くなってきた。守り手の支持で成り立っている政治家も少なからずいるからね、これから増々反発は強くなるだろう。」
「今、最高の環境を整えているところです。完成した邸宅で納得させます。」
「そこまでの時間は無いと言っているんだ。」
「巫女に意思を表示させます。政府の保護下で暮らすと。」
「一度力を暴走させているということは、少なからず懐疑心は抱いているだろう。馬鹿ではないんだ。すんなりいくと思うのか?」
「ええ。頷かせます。」
「巫女が死ぬまで情報統制を完璧にできるとは思えん。ずっと私が総理だったらできるかもしれないが。」
加々宮は鼻で笑った。70を過ぎた白髪が少しばかり揺れた。
「世界情勢においての我が国の立場を覆すには、巫女を上手く操って働いてもらわねばならない。」
「重々承知しております。」
「なら何とかしたまえ。君が望む法案を通すにはそれしか無いのだから。」
「はい。」
水無瀬は一礼をして執務室を後にした。
謂わば厳重注意だった。このままでは室長の任を解かれかねない。
そうなれば、法案の成立はまた遠のいてしまう。
対策室へ戻るタクシーの中、水無瀬は懐から革のケースに入った写真を取り出した。
「絢子、京一…」
亡くした妻と子。写真を見る度、あの時の無念と胸を引き裂かれるような痛みが蘇った。
最愛の家族を殺した男は裁かれなかった。未成年で固有能力の持ち主だったという理由で。
法案を成立させれば裁くことができる。
最早水無瀬の生きる目的はそれだけだった。
「必ず…」
その為だけに、どんな手を使ってでも出世し、ここまで上り詰めた。
例え巫女が死んだとしても仕方ない犠牲だ。
そう自分に言い聞かせて、水無瀬は深く息を吐いた。
「失礼いたします。」
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