おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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72.雪野智久は不器用

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雪野さんと私の間には長い沈黙が流れていた。

瑠璃川先生に手伝ってもらって、アフタヌーンティーを用意したものの、いただきますから言葉が続かなかったからだ。お互い一口紅茶を飲んでから、膝に手を置いたままだ。

気まずい。凄く気まずい。それは雪野さんも同じらしい。目が合っては何も言えず逸らしてしまう。

小野さんの計らいで設けられた機会を、私達は空振りし続けている。

雪野さんの話を聞いてと言われても、取っ掛りが無いし、雪野さんのこと知らなさ過ぎて、どこからどう聞いていいかすらわからない。

「そもそも論なのですが・・・」

「はっ、はいっ!!」

私が落としかけたフォークを雪野さんがキャッチしてくれた。キャッチしようと伸ばした手は雪野さんの手を掴んでしまって、至近距離で目が合った。

こんなベタな事で私の心臓は跳ねて、慌てて手を離した。

落ち着け。顔に出すな。バレたらお互いやり辛くなる。平静を装って謝った。

雪野さんは当然なんのリアクションも無く、フォークを元の位置に戻した。

「そもそも論なのですが・・・」

「はい。」

「楓様が私の事に興味があるとは思えません。」

直球勝負で来た雪野さんに、私も直球で答えた。

「あります。」

「な・・・何故、ですか・・・?」

雪野さんは言葉に出る程動揺した。こんな事は初めてだ。

「何故って、普通に・・・」

「普通に・・・?」

「えっ・・・?身近な人ですから・・・」

「あっ・・・そうですよね・・・」

雪野さんにとってはただの警護対象だから、普通も何も無いか・・・。わかっていても寂しく思う自分が居た。

「私は1979年に神奈川県横浜市に生まれました。家族構成は両親と弟が四人居ます。幼稚園から高校まで壬生岸みぶぎし大学付属校に・・・」

凄く真面目だからまるで面接をしている気分だった。話題として間違ってないけどそこじゃないとはつっこめなかった。プロフィールも知らなかったし。

「楓様・・・?」

「あっ・・・凄いプロフィールだと思って・・・!!続けてください!」

「はい。」

つっこめないまま私は雪野さんの細かい経歴を聞ききった。

「私は1993年に」

「あっ、プロフィールは存じております。」

「あっ、そうでしたね・・・」

どうしたらいいんだろう。私がコミュ障なばかりに気を遣わせてるし、申し訳なくなって来た。

「あの・・・」

「はい。」

苦し紛れに私は言葉を捻り出した。

「ご趣味はっ・・・!!」

熱くなる顔を隠したくて俯いた。この時代の何処に、ご趣味はから会話に入る人が居るの。これじゃベタなお見合いだ。

でも取っ掛りにはなるはず。

「ありません。」

無いか・・・。それは本当に無いのか、触れられたくないからそう言ってるのか。この無表情、きっと後者なんだ。

「私は当主となって家を守る為に生きてきたので・・・」

「そうなんですか・・・」

「・・・家から出た今、何もする事が無く、困っています。」

「当主を降りたと言ってましたよね。」

「はい。当主は次男に任せて家とは絶縁しました。」

「絶縁・・・」

「はい。雪野家は代々警察官です。警察からの信頼を取り戻すためには、裏切り者は排除しなければなりません。・・・楓様のせいではありません。私は水無瀬さんにせめてもの恩返しがしたかったんです。それに、警察官として許せなかった。」

「何をですか?」

「国民を守る為の警察が、守れなかった事実を守れなかった人のせいにする事がです。ですから、何れにせよ辞めていましたし、そんな組織に順応する雪野家を許せず家を抜けていました。」

「雪野さん・・・」

「そんな顔をしないでください。正直、肩の荷が下りて楽になったんです。楓様に感謝しています。」

「そんな、感謝なんて・・・」

「こうしてまた人を護る仕事にも就けました。」

雪野さんは微笑んだ。雪野さんの人柄をやっと垣間見れた気がした。

「あっ・・・趣味の話でしたね・・・」

「そうでしたね・・・」
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