幻影のアリア

葉羽

文字の大きさ
3 / 5
3章

時解の地下

しおりを挟む
井戸から聞こえてくる助けを求める声に、神藤葉羽と望月彩由美は焦りを感じていた。ロープを必死に下ろし、井戸の中を覗き込む。薄暗い井戸の中には、見慣れない模様が刻まれた石板と、その上に横たわる一人の男の姿が見えた。

「誰かいますか!?」

葉羽の声は、空洞の井戸の中で響き渡る。男は、かすれた声で応えた。

「助けてくれ…この場所から出してください…」

男の言葉に、葉羽はロープをさらに下ろす。彩由美は、必死に男を励ましながら、葉羽の手伝いをしていた。

ようやく男を井戸から引き上げると、彼は全身が泥まみれで、意識もうろうとしていた。葉羽は、男を屋敷の中に運び、暖炉のそばに寝かせた。

男は、若く、切れ長の目をしていた。彼は、ゆっくりと目を覚ますと、葉羽と彩由美を見つめた。

「ここは…どこだ?」

男は、嗄れた声で尋ねる。

「あなたは誰ですか?」

葉羽は、男に尋ねた。

「私は…レオン。この屋敷の地下で働いていた」

レオンは、ゆっくりと話し始めた。

「この屋敷の地下には、秘密がある。恐ろしい秘密が…」

レオンの言葉に、葉羽と彩由美は、興味津々になった。

「どんな秘密ですか?」

葉羽は、レオンに詳しく説明するように促した。

レオンは、深呼吸をして、話し始めた。

「この屋敷の地下には、古代遺跡がある。その遺跡には、時を操る力を持つと言われる神器が隠されている。しかし、その神器を手に入れようとする者たちが、この屋敷に忍び込んでくる。私は、その遺跡を守るために雇われたのだ」

レオンの話は、ますます興味深くなっていった。

「時を操る力…そんなものが本当にあるんですか?」

彩由美は、半信半疑の表情で尋ねる。

「本当だ。私は、その神器を見たことがある。それは、美しいクリスタルで作られており、見る者の心を奪ってしまう。しかし、その力は恐ろしいものでもある。時を操る力を持つ者は、永遠の命を手にすることができるが、その代償として、永遠の孤独を味わうことになる」

レオンの言葉に、葉羽は背筋を凍らせた。

「その神器を手に入れようとする者たちは、一体誰ですか?」

葉羽は、レオンに尋ねる。

「それは、秘密結社だ。彼らは、世界を支配するために、その神器を手に入れようとしている」

レオンは、険しい表情でそう言った。

「秘密結社…そんなものが本当に存在するんですか?」

彩由美は、信じられないという様子で尋ねる。

「本当だ。私は、彼らの陰謀を目撃してしまった。そのため、彼らは私を殺そうとしたのだ」

レオンは、再び恐怖に顔をゆがませた。

葉羽は、レオンの話を信じることにした。レオンの言葉は、あまりにも生々しかった。

「私たちは、あなたを助けなければなりません」

葉羽は、レオンにそう告げた。

「ありがとう。でも、もう遅い。彼らは、すでに屋敷の地下に侵入しているはずだ」

レオンは、絶望的な表情でそう言った。

葉羽と彩由美は、レオンの言葉を信じて、屋敷の地下へと向かうことにした。

地下への入り口は、書庫の奥深くに隠されていた。古い本棚を動かすと、石造りの階段が現れた。

階段を下りていくと、そこは広大な地下空間だった。地下空間には、無数の石柱が林立し、壁には奇妙な模様が刻まれていた。

「ここが、古代遺跡か…」

葉羽は、息をのんで見回す。

そのとき、突然、地下空間が揺れ始めた。

「地震!?」

彩由美が、驚きの声を上げる。

揺れは次第に激しくなり、石柱が次々と倒れてくる。

「早く逃げないと!」

葉羽は、彩由美の手を引き、地下空間から飛び出した。

地上に戻ると、屋敷はすでに荒れ果てていた。

「どうなってしまったんだ…」

葉羽は、呆然と屋敷を見つめる。

レオンの言葉は、現実のものとなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...