幻影のアリア

葉羽

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2章

過去の影

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夜明けが訪れ、屋敷内に柔らかな光が差し込む。神藤葉羽は、昨夜の出来事を思い出しながら、ベッドからゆっくりと体を起こした。

「おはようございます」

彩由美は、すでに起きており、窓の外を眺めていた。彼女の横顔は、朝の光に照らされて、いっそう輝いて見えた。

「おはよう。昨日は驚いたね」

葉羽は、ベッドから降りて彩由美の隣に座る。

「うん。あの屋敷、本当に何かあるみたい」

彩由美は、真剣な表情でそう言った。

「そうだね。まずは、この屋敷についてもっと詳しく調べてみよう」

葉羽は、そう決意し、朝食をとった後、屋敷の探索を再開した。

一階には、広々としたリビングルームや、豪華なダイニングルームがあった。これらの部屋は、埃をかぶっていたものの、かつては多くの人々が集まり、賑やかだった様子がうかがえた。

「この絵画、すごいね」

彩由美は、壁に掛けられていた肖像画を指さす。肖像画には、若い女性が描かれており、その瞳はどこか悲しげに見えた。

「この人は、誰なんだろうね」

葉羽は、肖像画をじっと見つめる。

「もしかして、この屋敷の過去の住人？」

彩由美の言葉に、葉羽は頷いた。

「そうだね。この屋敷には、きっとたくさんの物語が隠されているんだろう」

二人は、屋敷の二階へと続く階段を上り始めた。二階には、寝室や書斎、そして、一際目を引く書庫があった。

書庫の中は、天井まで届くほどの書棚がずらりと並んでいた。書棚には、古びた書物や、羊皮紙に書かれた文書などがぎっしりと詰め込まれていた。

「すごい数の本だね」

彩由美は、感嘆の声を上げる。

「そうだね。一体、どれだけの知識がここに隠されているんだろう」

葉羽は、書棚を一つ一つ丁寧に調べていく。そして、ある書棚から一冊の古ぼけた日記帳を見つけた。

日記帳の表紙には、金色の模様が刻まれており、どこか見覚えがある。

「あれ、この模様…」

葉羽は、昨日書斎で見つけた黒い革の書物と、この日記帳の模様が同じであることに気がついた。

「もしかして、この日記帳が何かヒントになるのかも」

葉羽は、日記帳を開いてみる。日記帳には、美しい女性の手書きの文字で、様々なことが綴られていた。

日記の内容は、この屋敷に代々住む一族の物語だった。一族は、代々、この屋敷を守り続けてきたが、その一方で、恐ろしい呪いに悩まされていたという。

日記によると、一族の女性たちは、ある年齢になると、必ず奇妙な病に冒され、苦しみながら死んでいったという。そして、その呪いを解くためには、特別な儀式を行う必要があると書かれていた。

「この呪い、もしかして、私たちにも関係があるのか？」

彩由美は、不安そうに葉羽を見上げる。

「まだわからない。でも、この日記帳には、きっと何か重要な手がかりが隠されているはずだ」

葉羽は、日記帳を読み進める。

その頃、屋敷の外では、不気味な音が響き始めていた。それは、まるで誰かが助けを求めているような、切ない叫び声だった。

「あれ、何の音？」

彩由美が、窓の外に顔を近づける。

「風じゃないよ。誰かの声だ」

葉羽は、直感的にそう感じた。

二人は、急いで屋敷の外に出て、音のする方へと向かった。

屋敷の裏庭には、大きな古井戸があった。井戸の中からは、先ほどの叫び声がさらに大きく聞こえてくる。

「誰かいるのか！？」

葉羽は、井戸の中に向かって声をかけた。

すると、井戸の中から、かすれた声が聞こえてきた。

「助けて…助けて…」

葉羽は、井戸の中にロープを下ろし、必死に助けを求める声を聞きながら、誰かがいることを確信した。

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