声の響く洋館

葉羽

文字の大きさ
3 / 11
3章

消えた友人

しおりを挟む
神藤葉羽と望月彩由美は、洋館への道を歩きながら、緊張と興奮が入り混じった感情を抱えていた。周囲には静寂が広がり、時折吹く風が木々の葉を揺らす音だけが聞こえる。葉羽は、洋館が持つ不気味な雰囲気に心を奪われつつも、何か大きな真実が待っていると感じていた。

「この道、あの洋館に繋がってるんだよね?」彩由美が不安そうに訊ねる。

「うん、確かこの先にあるはずだ。噂では、あの洋館は昔から不気味なことが多かったって聞くけど…」葉羽は言葉を続ける。「でも、俺たちならきっと真相を解き明かせる。だから、心配しないで。」

彩由美は少しだけ安心したように微笑むが、その目には不安が色濃く残っていた。彼女の心の中には、失踪した友人たちのことや、今まさに向かっている場所への恐怖が渦巻いている。

やがて、二人は古びた洋館の前に立ち尽くした。その姿は、長い年月を経たせいか、朽ちかけており、周囲の木々が生い茂る中で不気味に佇んでいる。葉羽は深呼吸をし、心を落ち着ける。「ここが噂の洋館だ。行こう。」

ドアを開けると、ぎしぎしと音を立てて扉が開いた。中に入ると、薄暗い廊下が広がっていた。埃が積もった床、壁には古い絵画が掛かっており、まるで時間が止まったかのような静けさが漂っている。

「葉羽くん、ここ、本当に不気味だね…」彩由美が声をひそめた。彼女は周囲を警戒しながら、葉羽の後ろをついて回る。

「大丈夫、何も起こらないよ。ただの古い家さ」と葉羽は言いながらも、自身も不安を感じていた。彼は廊下を進み、次第に奥へと向かう。すると、ふと何かが視界の端をかすめた。

「ちょっと待って、何か見えた気がする…」葉羽は立ち止まり、目を凝らした。廊下の先に、かすかに動く影があった。心臓が高鳴り、思わず彩由美の手を掴む。「行こう、見に行こう。」

二人は慎重にその影を追った。影は洋館の奥へと消えていく。葉羽の心の中には、興奮と恐怖が同時に押し寄せていた。彼はその正体を突き止めたくてたまらなかった。

「葉羽くん、やっぱり怖いかも…」彩由美は震える声で言った。

「大丈夫、俺がいるから」と葉羽は自信を持って言ったが、内心では何か恐ろしいものが待ち受けているのではないかと感じていた。

影が消えた先には、広い部屋が広がっていた。部屋には古い家具が置かれ、窓からは薄い光が差し込んでいる。だが、その光の中には、何か異様な空気が漂っていた。ふと、部屋の隅に目をやると、何かが光を反射しているのに気づいた。

「これ、何だろう?」葉羽は近づいてみると、そこには古い日記が置かれていた。表紙は擦り切れており、埃が積もっている。彼はそれを手に取り、ページをめくった。

「過去の住人の日記だ」と葉羽はつぶやいた。「見てみよう。」

日記には、洋館に住んでいた人々の様々な出来事が記されていた。あるページには、失踪した友人の名前が書かれていた。彼はこの洋館で何か恐ろしいことに巻き込まれたのだ。日記の最後には、こう書かれていた。

**「声が聞こえる。助けてと言っている。もう逃げられない。」**

葉羽はその言葉を読み上げ、背筋が凍るような感覚に襲われた。「これが、あの友人の…」

「葉羽くん、どうしたの?」彩由美は彼の表情を見て不安そうに尋ねる。

「この日記、失踪した友人のものだ。彼も、声を聞いたって…」葉羽は言葉を詰まらせた。

その瞬間、部屋の中でかすかな声が響いた。「助けて…」

二人は驚いて顔を見合わせた。声は明確で、まるで目の前に誰かがいるかのようだった。葉羽は恐怖を感じながらも、声の正体を突き止めたいという衝動に駆られた。

「誰かいるの?」と葉羽は恐る恐る声をかける。

だが、返事はない。部屋は再び静まり返り、ただ二人の息遣いだけが響いていた。

「もう帰ろう、葉羽くん…」彩由美は不安げに言った。しかし、葉羽はその声に引き寄せられるように、さらに奥へ進む決意を固めた。

「もう少しだけ、調べてみよう。何かが隠されているはずだ。」

二人は部屋を出て、再び廊下を進む。周囲の静けさが、まるで彼らを包み込むように感じられた。葉羽の心の中には、怖れと期待が交錯していた。果たして、この洋館には何が待ち受けているのか。そして、失踪した友人の声の正体は一体何なのか。彼はその真相を探るために、一歩一歩進むのだった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...