声の響く洋館

２章

謎の声

翌朝、神藤葉羽は目覚めると、昨夜の不気味な声が頭から離れなかった。夢か現実かさえ分からないまま、彼は自分の心に不安を抱えたまま学校に向かうことにした。いつも通りの朝食を済ませ、豪邸の大きな玄関ドアを開けると、冷たい風が彼の頬を撫でた。日差しは明るいが、心の中はどこか重苦しい。

学校に着くと、友人たちが集まっているグループの中に、幼馴染の望月彩由美を見つけた。彼女はいつものように明るい笑顔を浮かべていたが、どこか気がかりな表情も見え隠れする。「おはよう、葉羽くん！」

「おはよう、彩由美」と葉羽は返したが、心の中では昨夜の声が響いていた。「あの洋館のこと、まだ気にしてるの？」

「あのね、今朝も友達から聞いたんだけど、また別の人が行方不明になったって…」彩由美の声には不安が滲んでいた。

葉羽は思わず身を乗り出す。「本当に？それは…」

「うん、みんな洋館に行くのが怖くなってるみたい。私も、ちょっと気になるけど、行くのはやっぱり怖いよ…」

葉羽はその言葉を聞いて、心の中の好奇心が再び燃え上がる。「でも、俺たちが行ってみることで、何か真相がわかるかもしれない。行方不明になった人たちのことも、少しでも知りたいし。」

彩由美は少し考え込むようにしてから、ゆっくりと頷いた。「そうだね。でも、気をつけようね。」その言葉に、彼女の優しさが込められているのを感じた。

授業中も、葉羽の頭の中は洋館のことばかりだった。帰り道、彼は自宅に着くとすぐに、洋館に関する情報を集め始めた。インターネットで調べると、過去にこの洋館で起こった奇怪な事件や、住人たちの不幸な運命が次々と現れた。

「この洋館…ただの噂じゃないかもしれない」と葉羽はつぶやいた。彼は興奮を抑えきれず、さらに調査を続ける。すると、ある記事に目が留まった。

**「失踪事件の謎：洋館に潜む声」**

その記事には、洋館での不気味な現象や、過去に住んでいた人々が聞いたという「声」の記録が詳細に記されていた。声は、助けを求めるものや、悲しむもの、さらには怒りを表現するものまであった。葉羽はその内容に引き込まれ、ますます興味を抱く。

「明日、彩由美と一緒に行こう」と心に決めた葉羽は、夜が更けるまで調査を続けた。

その夜、葉羽はベッドに横になりながらも、興奮と不安が入り交じる感覚を味わっていた。目を閉じると、昨夜の声が再び耳元で響く。「助けて…」

目を開けると、部屋は静まり返っていた。心臓が高鳴り、恐怖が再び彼を襲った。彼は自分に言い聞かせる。「ただの夢だ。何も怖がることはない。」

その瞬間、再び声が聞こえた。「助けて…」

葉羽は飛び起き、周囲を見回す。誰もいない。彼は自分の耳を疑った。夢ではない。何かが現実に起こっている気がしてならなかった。

「これは、何かの前触れなのか？」葉羽は不安に駆られ、再びベッドに横たわる。心の中で、洋館に行くことへの恐れが膨らんでいく。しかし、同時にそれが彼を引き寄せる魅力でもあった。

翌朝、葉羽は早起きして、彩由美に会う準備をした。彼は決意を固め、洋館へ向かうことにした。彼の心の中には、何か大きな真実が待っているという予感があった。

学校で彩由美に会ったとき、彼女の表情は不安そうだった。「葉羽くん、本当に行くの？」

「行くよ、彩由美。一緒に行こう。何か手がかりが見つかるかもしれないし、怖いけど、行かないと気が済まないんだ。」

彩由美は少し緊張した面持ちで頷く。「じゃあ、行こうか…一緒に。」

二人は、洋館への道を歩き始めた。心の中の恐怖と好奇心が交錯する中、彼らは運命の扉を開ける準備をしていた。果たして、待ち受ける真実は何なのか、そしてその先に待つ恐怖とは一体何なのか。葉羽は胸の高鳴りを抑えきれなかった。