没入劇場の悪夢：天才高校生が挑む最恐の密室殺人トリック

エピローグ

真実の舞台は、まだ幕を開けたばかりだった…

秋風が冷たく頬を撫でる夕暮れ時。神藤葉羽は、窓辺に立ち、街の灯りが一つ一つ灯っていく様子を眺めていた。事件から数ヶ月が経ち、街には以前と変わらぬ平穏が戻っていた。しかし、葉羽の心には、拭い去れない影が落ちていた。

烏丸蔵人の死、灰崎硝子の狂気、そして、劇場に仕掛けられた謎の装置。それらは、まるで悪夢の残滓のように、葉羽の心にこびりついていた。事件は解決したはずなのに、何かが腑に落ちない。まるで、重要なピースが欠けているような、そんな感覚が葉羽を苛んでいた。

特に、劇場で目撃された「黒い影」の正体は、未だに謎のままだった。灰崎硝子は、単独で犯行を行ったと主張していたが、葉羽は、彼女が全てを語っていないことを感じていた。あの黒い影は、一体誰だったのか？ そして、何の目的で劇場に現れたのか？

葉羽は、事件の真相を追い求めることを諦めていなかった。彼は、探偵事務所を開設し、様々な事件を解決しながら、密かに烏丸蔵人事件の再調査を続けていた。

彼は、事件関係者への聞き込みを続け、新たな情報を探していた。そして、ついに、ある人物から興味深い話を聞くことができた。

それは、劇場の元スタッフの証言だった。彼は、烏丸蔵人が生前、ある秘密結社と関わっていたというのだ。その結社は、「深淵を覗く者たち」と呼ばれ、人間の心理を操る技術を研究していたという。

葉羽は、その証言に衝撃を受けた。烏丸蔵人と秘密結社。そして、「深淵を覗く者たち」という言葉。それは、まるで、事件の真相を示唆しているかのようだった。

葉羽は、秘密結社について詳しく調べることにした。彼は、図書館やインターネットで情報を収集し、結社の正体を探ろうとした。

しかし、結社に関する情報は、驚くほど少なかった。まるで、意図的に隠蔽されているかのようだった。

葉羽は、諦めずに調査を続けた。そして、ついに、結社のシンボルマークが刻まれた古い資料を発見した。資料には、結社の目的や活動内容が記されていた。

結社は、人間の心理を操る技術を研究し、世界を支配することを目的としていた。彼らは、催眠術や暗示、そして、洗脳といった技術を駆使し、人々の心を操っていたのだ。

葉羽は、烏丸蔵人が、この結社と深く関わっていたことを確信した。そして、劇場に仕掛けられた謎の装置も、結社が開発したものだったのではないかと考えた。

葉羽は、さらに調査を進める必要性を感じた。彼は、結社のメンバーを探し出し、彼らの目的を阻止しなければならない。

その時、葉羽は、窓の外に人影が動くのを見た。人影は、黒いコートを着て、帽子を深く被っていた。

それは、劇場で目撃された「黒い影」と同じ姿だった。

葉羽は、心臓が高鳴るのを感じた。彼は、窓を開け、人影に呼びかけた。

しかし、人影は、何も言わずに、闇の中へと消えていった。

葉羽は、直感的に、新たな事件の予兆を感じた。

烏丸蔵人事件は、まだ終わっていなかった。真実は、深い闇の中に隠されたままで、葉羽を待ち続けていた。

真実の舞台は、まだ幕を開けたばかりだった…。


終