影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -

葉羽

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6章

影との対峙 - 迫り来る恐怖 -

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時間の牢獄から脱出した葉羽と彩由美は、改めて虚塔の異様さに戦慄していた。綺羅星の言葉が脳裏をよぎり、この塔が単なる廃墟ではなく、古代文明の遺産であり、そして恐るべき実験の場であったことを改めて認識する。

「…葉羽君、これからどうする…?」

彩由美は不安げな表情で尋ねた。時間操作装置の部屋から出た後も、視界の歪みは完全には消えておらず、時折、風景が波打つように揺らいで見える。

「…真犯人を探さなければならない。この事件は、事故なんかじゃない。誰かが意図的に仕組んだことだ。」

葉羽は冷静に分析し、手帳に書かれた犠牲者たちの断片的な記録、写真に残された歪み、そして綺羅星の言葉…それら全てが一つの線で繋がっている確信があった。しかし、肝心の犯人の手がかりは掴めていない。

「でも…一体誰が…?」

彩由美の疑問に、葉羽はすぐには答えられなかった。犯人の目的、そして事件の真相、全てが深い霧に包まれているようだった。

その時、二人は再びあの黒い影を目撃する。廊下を曲がった先に、それが一瞬だけ現れ、すぐに闇の中へと消えていった。

「…見たか、彩由美!?」

葉羽の声に、彩由美は恐怖に震えながら頷いた。影は以前より大きく、そしてより不気味な形をしていた。まるで、彼らの恐怖を吸い取るように蠢いているかのようだった。

「…あれは、ただの幻覚なんかじゃない…実体がある…」

葉羽は呟いた。そして、一つの恐ろしい仮説が彼の脳裏をよぎった。

「…もしかしたら、あの影こそが…犯人なのか…?」

葉羽の言葉に、彩由美はさらに恐怖を募らせた。もし、あの得体の知れない影が犯人だとしたら…彼らは一体どうやって対抗すればいいのだろうか?

「…いや、待てよ…綺羅星さんの話では、この塔の装置は人間の認識を歪ませる効果がある…。つまり、あの影は、装置によって生み出された幻覚の産物…そう考えるべきだ。」

葉羽は冷静に推理を組み立て直そうとした。しかし、彼の心にも、影に対する恐怖が芽生え始めていた。

「…でも、もしあの影が実体を持つ存在だとしたら…装置を破壊すれば、消滅するはずだ!」

葉羽は決意を固めた。装置を破壊することが、事件を解決し、そして彩由美を守る唯一の方法だと考えたのだ。

二人は装置の場所へと急いだ。途中、何度も影を目撃する。影はまるで、彼らを挑発するかのように、姿を現しては消えていく。その度に、彩由美は恐怖のあまり悲鳴を上げそうになったが、葉羽は彼女の背中を優しくさすり、勇気づけた。

装置の部屋に到着すると、葉羽はすぐに装置の破壊に取り掛かった。装置は複雑な構造をしており、容易には破壊できなかった。その時、葉羽は装置の側面に小さなボタンがあることに気づいた。

「…これだ!」

葉羽はボタンを押した。すると、装置から警告音が鳴り響き、部屋全体が赤い光に包まれた。

「…葉羽君!危ない!」

彩由美は叫んだ。しかし、葉羽は装置から目を離さなかった。彼は、このボタンが装置を停止させる鍵だと確信していた。

その時、部屋の奥から、綺羅星が現れた。

「…何を…している…?」

綺羅星は怒りに満ちた声で尋ねた。彼の顔は歪み、まるで鬼のような形相をしていた。

「…あなたこそ、一体何を企んでいるんです!?」

葉羽は綺羅星を睨みつけた。彼は、綺羅星が何かを隠していると感じていた。

「…この装置は…わしらの祖先が作り出したもの…それを破壊することは許さん…!」

綺羅星は叫んだ。そして、彼は葉羽に襲いかかってきた。

「…葉羽君、気を付けて!」

彩由美は叫んだ。葉羽は綺羅星をかわし、装置のボタンを再び押した。

すると、装置からさらに大きな警告音が鳴り響き、部屋全体が白い光に包まれた。そして、葉羽と彩由美は、再び意識を失った。

次に葉羽が目を開けた時、彼は装置の部屋に倒れていた。彩由美の姿は見当たらなかった。

「…彩由美!?」

葉羽は叫んだ。しかし、返事はなかった。部屋の中には、葉羽と、そして装置だけだった。

その時、葉羽は背後から気配を感じ、振り返った。そこに立っていたのは、巨大な黒い影だった。影は、以前よりもさらに大きく、そして恐ろしい形をしていた。

影はゆっくりと葉羽に近づいてきた。葉羽は恐怖に震えながらも、逃げなかった。彼は、この影こそが事件の真相を握る鍵だと確信していた。

「…お前は…一体…何なんだ…?」

葉羽は震える声で尋ねた。影は答える代わりに、葉羽に襲いかかってきた。

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