影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -

葉羽

文字の大きさ
6 / 8
6章

影との対峙 - 迫り来る恐怖 -

しおりを挟む
時間の牢獄から脱出した葉羽と彩由美は、改めて虚塔の異様さに戦慄していた。綺羅星の言葉が脳裏をよぎり、この塔が単なる廃墟ではなく、古代文明の遺産であり、そして恐るべき実験の場であったことを改めて認識する。

「…葉羽君、これからどうする…?」

彩由美は不安げな表情で尋ねた。時間操作装置の部屋から出た後も、視界の歪みは完全には消えておらず、時折、風景が波打つように揺らいで見える。

「…真犯人を探さなければならない。この事件は、事故なんかじゃない。誰かが意図的に仕組んだことだ。」

葉羽は冷静に分析し、手帳に書かれた犠牲者たちの断片的な記録、写真に残された歪み、そして綺羅星の言葉…それら全てが一つの線で繋がっている確信があった。しかし、肝心の犯人の手がかりは掴めていない。

「でも…一体誰が…?」

彩由美の疑問に、葉羽はすぐには答えられなかった。犯人の目的、そして事件の真相、全てが深い霧に包まれているようだった。

その時、二人は再びあの黒い影を目撃する。廊下を曲がった先に、それが一瞬だけ現れ、すぐに闇の中へと消えていった。

「…見たか、彩由美!?」

葉羽の声に、彩由美は恐怖に震えながら頷いた。影は以前より大きく、そしてより不気味な形をしていた。まるで、彼らの恐怖を吸い取るように蠢いているかのようだった。

「…あれは、ただの幻覚なんかじゃない…実体がある…」

葉羽は呟いた。そして、一つの恐ろしい仮説が彼の脳裏をよぎった。

「…もしかしたら、あの影こそが…犯人なのか…?」

葉羽の言葉に、彩由美はさらに恐怖を募らせた。もし、あの得体の知れない影が犯人だとしたら…彼らは一体どうやって対抗すればいいのだろうか?

「…いや、待てよ…綺羅星さんの話では、この塔の装置は人間の認識を歪ませる効果がある…。つまり、あの影は、装置によって生み出された幻覚の産物…そう考えるべきだ。」

葉羽は冷静に推理を組み立て直そうとした。しかし、彼の心にも、影に対する恐怖が芽生え始めていた。

「…でも、もしあの影が実体を持つ存在だとしたら…装置を破壊すれば、消滅するはずだ!」

葉羽は決意を固めた。装置を破壊することが、事件を解決し、そして彩由美を守る唯一の方法だと考えたのだ。

二人は装置の場所へと急いだ。途中、何度も影を目撃する。影はまるで、彼らを挑発するかのように、姿を現しては消えていく。その度に、彩由美は恐怖のあまり悲鳴を上げそうになったが、葉羽は彼女の背中を優しくさすり、勇気づけた。

装置の部屋に到着すると、葉羽はすぐに装置の破壊に取り掛かった。装置は複雑な構造をしており、容易には破壊できなかった。その時、葉羽は装置の側面に小さなボタンがあることに気づいた。

「…これだ!」

葉羽はボタンを押した。すると、装置から警告音が鳴り響き、部屋全体が赤い光に包まれた。

「…葉羽君!危ない!」

彩由美は叫んだ。しかし、葉羽は装置から目を離さなかった。彼は、このボタンが装置を停止させる鍵だと確信していた。

その時、部屋の奥から、綺羅星が現れた。

「…何を…している…?」

綺羅星は怒りに満ちた声で尋ねた。彼の顔は歪み、まるで鬼のような形相をしていた。

「…あなたこそ、一体何を企んでいるんです!?」

葉羽は綺羅星を睨みつけた。彼は、綺羅星が何かを隠していると感じていた。

「…この装置は…わしらの祖先が作り出したもの…それを破壊することは許さん…!」

綺羅星は叫んだ。そして、彼は葉羽に襲いかかってきた。

「…葉羽君、気を付けて!」

彩由美は叫んだ。葉羽は綺羅星をかわし、装置のボタンを再び押した。

すると、装置からさらに大きな警告音が鳴り響き、部屋全体が白い光に包まれた。そして、葉羽と彩由美は、再び意識を失った。

次に葉羽が目を開けた時、彼は装置の部屋に倒れていた。彩由美の姿は見当たらなかった。

「…彩由美!?」

葉羽は叫んだ。しかし、返事はなかった。部屋の中には、葉羽と、そして装置だけだった。

その時、葉羽は背後から気配を感じ、振り返った。そこに立っていたのは、巨大な黒い影だった。影は、以前よりもさらに大きく、そして恐ろしい形をしていた。

影はゆっくりと葉羽に近づいてきた。葉羽は恐怖に震えながらも、逃げなかった。彼は、この影こそが事件の真相を握る鍵だと確信していた。

「…お前は…一体…何なんだ…?」

葉羽は震える声で尋ねた。影は答える代わりに、葉羽に襲いかかってきた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

その愛は

芙月みひろ
恋愛
ニセモノの愛だってかまわない

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...