天才の孤独と推理の始まり

葉羽

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4章

隠された部屋

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第4章: 「隠された部屋」

翌日、神藤葉羽は朝から胸騒ぎが止まらなかった。山下という男に対する不安感が、夜を越えても消えることはなく、むしろ時間が経つごとに強くなっていく。彼の脳裏には常に、彩由美の持っていた「謎の鍵」が浮かんでいた。この鍵が何を意味するのか、そして、なぜ山下がその鍵に興味を示したのか。普通の人間ならば、そんな小さな鍵に注意を払うことはない。だが、山下の反応には確実に意図が感じられた。

放課後、葉羽は彩由美に声をかけた。「少し君の家を見て回ってもいいか？」

「え？」彩由美は驚いた表情を見せた。「どうしたの？家に来るなんて珍しいじゃない。」

「いや、ちょっと気になることがあってね。あの鍵のことだよ。もしかしたら、何か見落としていることがあるかもしれないと思って。」

彩由美は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに笑顔に戻った。「いいよ。そんなに大した家じゃないけど、どうぞ。」

こうして葉羽と彩由美は、彩由美の家へ向かった。彩由美の家は、古いながらも手入れの行き届いた一軒家で、彼女の両親は仕事で長期間留守にしているため、基本的に彩由美一人が住んでいた。葉羽は玄関に入ると、早速家の中を見渡し始めた。普段は気にしない細かい部分まで、今回は徹底的に探ろうとする意欲が彼の中で沸いていた。

「鍵を持ってきたか？」葉羽は彩由美に尋ねた。

「うん、ここにあるよ。」彩由美はポケットから例の鍵を取り出した。

葉羽はその鍵を手に取り、改めてじっくりと観察した。古びているが、意外と頑丈な作りだ。そして、何か特別なものに使われるようなデザインが施されているわけでもない。だが、彼の直感が告げていた。この鍵はただの古い鍵ではない。「何か」を隠している。

「家の中で、この鍵が使えそうな場所は心当たりないか？」葉羽は彩由美に尋ねながら、廊下を歩いていた。

「うーん……特にないと思うけど……」彩由美は考え込むように眉をひそめた。「私が知ってる限り、鍵を使う部屋はないはずだよ。いつも開いてるし。」

葉羽はその言葉に少し戸惑ったが、彼はすでに一つの仮説を立てていた。**この鍵が使える場所は、普通の部屋ではない可能性がある。**もし彩由美が気づいていない場所があるとすれば、それは「隠された場所」だ。葉羽はその仮説に従い、家の中を細かく探すことに決めた。

「どこか変わった場所はないか、二人で一緒に探してみよう。もしかしたら、気づかなかっただけで、何かが隠されているかもしれない。」葉羽はそう言いながら、家の壁や家具を注意深く調べ始めた。

彩由美は少し戸惑いながらも、葉羽の真剣な態度に引き込まれ、一緒に家の中を見回し始めた。二人はしばらく、特に何の変哲もない家具や壁を調べ続けたが、何も見つからなかった。

「やっぱり、普通の家だよね？」彩由美は少し疲れた声で言ったが、葉羽はその言葉を聞き流していた。

「いや……待て。」葉羽の目がある一点に留まった。それは、廊下の片隅にある古いタンスだった。普段は目立たない場所にあり、誰も気にしないような家具だが、葉羽の勘が働いた。

「このタンス……動かしてみよう。」葉羽はすぐに行動に移り、彩由美に手伝ってもらいながらタンスを動かした。すると、その後ろに驚くべきものが隠されていた。

「これ……壁に……小さな扉がある？」彩由美は目を見開いた。タンスの後ろに隠されていたのは、見逃してしまいそうなほど小さな扉だった。彩由美自身、この扉の存在を全く知らなかったようだ。

「やっぱりな。」葉羽は冷静に頷いた。「この扉に、例の鍵が使えるんじゃないか？」

「えっ？でも、こんなところに……」

彩由美が驚いている間にも、葉羽はすでに鍵を扉に差し込んでいた。鍵はぴったりとはまり、ゆっくりと回る音が響いた。扉が静かに開くと、その向こうには暗い空間が広がっていた。

「隠し部屋……？」彩由美は信じられないといった表情で呟いた。

葉羽は無言でその暗い部屋の中に足を踏み入れた。部屋の中は埃まみれで、長い間誰も立ち入っていないことが一目でわかった。しかし、それ以上に葉羽を引きつけたのは、部屋の中央に置かれていた一つの箱だった。その箱は、まるで葉羽たちが来るのを待っていたかのように鎮座していた。

「この部屋、一体何なんだろう……」彩由美は、半ば怖れを抱きながら葉羽の後ろに立っていた。

葉羽は慎重に箱に近づき、その蓋をゆっくりと開けた。中には古びた書類と、何かが書かれたノートが入っていた。葉羽はそれらを取り出し、ノートを開いてみた。その瞬間、彼の目は驚愕に見開かれた。

「これは……」

ノートに記されていたのは、彩由美の家族にまつわる衝撃的な事実だった。葉羽はページをめくるたびに、その内容に圧倒されていった。これは単なる古いノートではない。そこには、何か重要な秘密が隠されている。彩由美の家に隠された、この「部屋」と「鍵」の意味――それは単なる偶然ではなかった。

「彩由美……君の家、ただの家じゃないかもしれない。」

葉羽は息を呑んだ。謎はさらに深まっていく。そして、すべての糸が、徐々に繋がり始めていた。

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