時を喰らう館：天才高校生探偵、神藤葉羽の難解推理

17章

永遠の残像

事件後、天堂家洋館は取り壊され、跡形もなく消え去った。朽木蒼司は、すべての罪を認め、裁判にかけられた。彼に下された判決は、決して軽いものではなかったが、葉羽は、蒼司がいつか更生し、現実世界で真の幸福を見つけてくれることを願っていた。

葉羽と彩由美は、日常の生活へと戻った。事件の記憶は、まるで深い傷跡のように、二人の心に刻まれていた。しかし、彼らは前を向き、未来へと歩みを進めていく決意をしていた。

ある日、葉羽は、彩由美と共に、かつて天堂家洋館があった場所を訪れた。そこは、更地になり、何も残っていなかった。ただ、穏やかな風が吹き抜け、草木の香りが漂っているだけだった。

「何もかも、まるで夢だったみたいだね」

彩由美は、少し寂しそうに言った。

「ああ、でも、僕たちは、あの悪夢から多くのことを学んだ。人間の心の弱さ、そして真実の脆さ……」

葉羽は、静かに言った。彼は、事件を通して、人間の本性、そして世界の複雑さを改めて認識した。そして、これからも推理小説を読み続け、人間の謎を解き明かしていくことを決意した。

「葉羽さん、これからも一緒に推理小説を読もうね」

彩由美は、葉羽の手を握り、笑顔で言った。彼女の笑顔は、葉羽の心に温かい光を灯した。

「ああ、もちろん。そして、いつか、僕たちが体験した事件を、推理小説に書いてみようか」

葉羽は、彩由美に提案した。

「いいね！ 私たちだけの、特別な物語だね」

彩由美は、目を輝かせて言った。

二人は、手をつなぎ、夕焼けに染まる道を歩いていった。彼らの未来には、希望に満ちた光が灯っていた。

エピローグ

数年後、葉羽と彩由美は、相変わらず高校生として、穏やかな日々を送っていた。葉羽は、相変わらず推理小説を読み、彩由美は恋愛漫画に夢中だった。二人は、時折、あの事件のことを思い出すこともあったが、それはもはや遠い過去の出来事となっていた。まるで、記憶の残像のように、薄れていく思い出だった。

ある日、葉羽は、自室の書斎で、一冊の推理小説を読み終えた。それは、彼が彩由美と共に書き上げた、天堂家洋館の事件を題材にした小説だった。

「これで、本当に終わりだ」

葉羽は、静かに呟いた。彼は、過去の悪夢を乗り越え、未来へと歩みを進めていた。そして、彼の隣には、いつも彩由美がいた。二人は、これからも共に、人生の謎を解き明かしていくのだろう。まるで、永遠に続く物語のように。