焔星高校の密室 鏡影の殺人 ~天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿~【本格推理×ホラー×どんでん返し】

葉羽

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14章

かすかなヒント

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目を閉じて、心の中を見つめる葉羽。静寂の中で、思考が研ぎ澄まされていく。過去の記憶、事件の断片、そして登場人物たちの言葉。それらが、まるでパズルのピースのように、彼の脳裏に浮かび上がってくる。

祖父が犯人だという久美子の言葉。本当にそうなのだろうか?葉羽は、幼い頃の記憶を辿ってみた。祖父は、温厚で優しい人物だった。家族を愛し、誰からも慕われていた。そんな彼が、一家を惨殺するような残忍な犯行に及ぶとは、どうしても信じられなかった。

しかし、久美子の言葉にも、真実が含まれているような気がした。「この洋館全体が証拠だ。そして、あなたの血も証拠だ」。この言葉の意味は何なのだろうか。

葉羽は、再び目を開けた。鏡の部屋は、静寂に包まれている。久美子は、静かに葉羽を見つめていた。彼女の黒い瞳は、底知れぬ闇を湛え、葉羽の心を試しているようだった。

「何か分かりましたか?」

久美子は、静かに尋ねた。

葉羽は、首を横に振った。

「まだ、分かりません。しかし、必ず真実に辿り着きます」

彼は、強い決意を込めて言った。

「時間は限られていますよ」

久美子は、冷たい声で言った。

葉羽は、再び思考を巡らせた。

彼は、もう一度、隠し部屋で見つけた遺言書について考えてみた。佐伯蔵人は、なぜ全財産を久美子に相続させることにしたのか。それは、久美子を守るためだったのだろうか。それとも、何か別の理由があったのだろうか。

その時、葉羽は、遺言書に書かれた日付に気づいた。遺言書は、一家惨殺事件の直前に書かれていたのだ。

「これは…」

葉羽は、息を呑んだ。もし、佐伯蔵人が、一家惨殺事件が起こることを事前に知っていたとしたら…

彼は、事件の真相に近づいていると感じた。

しかし、まだピースが足りない。決定的な証拠が必要だ.

葉羽は、彩由美と共に、再び洋館の捜索を開始した。彼らは、書斎、寝室、客間、食堂、そして地下室。あらゆる場所をくまなく調べた。

壁の装飾、家具の配置、床板の音。彼らは、五感を研ぎ澄ませ、どんな小さな手がかりも見逃さないように注意深く観察した。

その時、葉羽は、書斎の床に落ちている小さな金属片を発見した。金属片は、複雑な形状をしており、何かの部品のようだった。

彼は、金属片を拾い上げ、よく見てみた。

金属片には、「K.S.」というイニシャルが刻印されていた.

「K.S.?」

葉羽は、そのイニシャルに見覚えがあった。それは、佐伯景子のイニシャルだった。佐伯景子は、佐伯蔵人の姪であり、遺産相続をめぐって対立していた人物だ。

葉羽は、この金属片が、事件の重要な手がかりになるかもしれないと感じた.

彼は、金属片をポケットにしまい、彩由美と共に、洋館を後にした。

自宅に戻ると、葉羽は、金属片を机の上に置き、考え込んだ。

「K.S. … 佐伯景子…」

彼は、佐伯景子について思い出せる限りの情報を整理してみた。

佐伯景子は、冷酷で計算高い性格で、目的のためには手段を選ばない女性だった。彼女は、佐伯蔵人の遺産を狙っており、彼を殺害する動機は十分にあった.

しかし、彼女が犯人だとしたら、なぜ金属片を現場に残したのか。それは、わざとなのか。それとも、単なるミスなのか。

葉羽は、考えを巡らせていた.

その時、彼のスマートフォンが鳴った.

見知らぬ番号からの着信だった。

「もしもし」

「神藤葉羽君、手がかりは見つかったかな?」

低い声が、受話器から聞こえてきた. それは、仮面の男の声だった。

「お前は、一体何がしたいんだ!」

葉羽は、怒りを込めて叫んだ.

「私は、ただゲームを楽しんでいるだけだ。君の推理、君の苦悩、そして君の絶望。それら全てが、私にとっての最高の娯楽だ」

男は、不気味な笑みを浮かべながら言った。

「ふざけるな!人殺し!」

「人殺し?それは違う。私は、ただ真実を明らかにしているだけだ。そして、真実は、常に残酷なものだ」

男は、意味深な言葉を残して、電話を切った.

葉羽は、苛立ちを隠せないでいた。男の言葉は、まるで挑発のようだった. しかし、同時に、男の言葉の中に、かすかなヒントが隠されているようにも感じられた.

真実は、常に残酷なものだ。

それは、一体どういう意味なのだろうか。

葉羽は、再び金属片に目を向けた.

K.S.

佐伯景子。

彼は、佐伯景子について、もう一度詳しく調べる必要があると感じた。

そして、仮面の男の正体も、突き止めなければならない。

葉羽は、彩由美に連絡を取り、明日、一緒に佐伯景子の自宅を訪れることを伝えた。

彩由美は、不安そうだったが、葉羽の決意の強さを感じ、承諾した。

二人は、明日の調査に備え、それぞれの部屋に戻っていった。

葉羽は、ベッドに横たわり、天井を見つめた。

かすかなヒント。それは、闇を切り裂く、一筋の光となるのだろうか。

それとも、彼を更なる深淵へと誘い込む、罠となるのだろうか。

葉羽は、不安と期待が入り混じった気持ちで、眠りに落ちていった。

                
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