焔星高校の密室鏡影の殺人～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

葉羽

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17章

真実の一端

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映写機が映し出した白黒映像。楽しそうに笑い合う佐伯蔵人と若い女性。そして、突然の暗転。葉羽の脳裏には、様々な情報が走馬灯のように駆け巡っていた。過去の事件、証言、そして隠し部屋で見つけた遺言書。断片的だったパズルのピースが、今、一つにつながろうとしていた。

「彩由美…俺は、全てを理解した」

葉羽は、静かに呟いた。彼の声は、かすかに震えていた。

彩由美は、心配そうに葉羽を見つめていた。彼の瞳には、深い悲しみと、強い決意が入り混じっていた。

「葉羽くん…一体、何が…？」

彩由美は、恐る恐る尋ねた。

葉羽は、深呼吸をして、ゆっくりと語り始めた。

「あの映像に映っていた女性は、佐伯久美子だ。そして、佐伯蔵人は、彼女を深く愛していた」

葉羽は、映写機の傍らに置かれた写真に目をやった。色あせた写真には、佐伯蔵人と久美子が仲睦まじく並んで写っていた。

「佐伯蔵人は、久美子を守るために、全財産を彼女に相続させることにした。しかし、その遺言書が、悲劇の始まりだった」

葉羽は、隠し部屋で見つけた遺言書のことを思い出した。

「佐伯蔵人の長男、勇人は、父親の遺産を狙っていた。彼は、遺言書の内容を知り、久美子を殺害しようと企んだ」

葉羽は、佐伯勇人の冷酷な表情を思い浮かべた. 彼は、目的のためには手段を選ばない男だった。

「しかし、久美子は、勇人の計画を察知し、身を隠した。そして、彼女は、鏡の精霊となり、復讐を誓った」

葉羽は、鏡の部屋で出会った久美子の言葉を思い出した.「私は、鏡の中に生きている」。彼女の言葉は、真実だった。

「勇人は、久美子を殺害できなかったことに焦り、佐伯蔵人を殺害した。そして、密室トリックを使って、アリバイを偽装した」

葉羽は、書斎の状況を思い出した. 確かに、密室トリックが使われていた.

「その後、勇人は、自分の犯行を隠蔽するために、佐伯景子を利用した。そして、最後は、彼女を殺害し、全ての罪を彼女に擦り付けようとした」

葉羽は、佐伯景子の遺体を思い出した. 彼女は、勇人に利用され、殺害されたのだ.

「そして、仮面の男。彼は…」

葉羽は、言葉を詰まらせた. 彼は、仮面の男の正体に気づいていた。しかし、それを口にすることができなかった。

「葉羽くん…？」

彩由美は、不安そうに葉羽を見つめた.

葉羽は、深呼吸をして、覚悟を決めた.

「仮面の男は…白鳥優希だ」

葉羽は、静かに言った.

彩由美は、驚愕した. 白鳥優希は、佐伯蔵人の主治医であり、温厚で誠実な人物だった。そんな彼が、仮面の男だとは、信じられなかった。

「しかし、なぜ白鳥先生が…？」

彩由美は、混乱した様子で尋ねた.

「白鳥先生は、佐伯蔵人を深く尊敬していた。彼は、佐伯蔵人の死を悲しみ、復讐を誓ったのだ. そして、彼は、佐伯家を崩壊させるために、この事件を企てた」

葉羽は、白鳥優希の歪んだ正義感を思い浮かべた. 彼は、復讐という名の闇に囚われていたのだ.

「では、K.S.の刻印が入った金属片は…？」

彩由美は、金属片のことを思い出した。

「それは、白鳥先生が仕組んだ罠だ. 彼は、佐伯景子に罪を擦り付けるために、金属片を彼女に渡したのだ」

葉羽は、白鳥先生の巧妙な策略を思い浮かべた。彼は、全てを計算し尽くしていたのだ。

「真実は、常に残酷なものだ」

仮面の男、白鳥優希の言葉が、葉羽の脳裏に響いた.

葉羽は、全てを理解した.

事件の真相、犯人の動機、そして仮面の男の正体。

しかし、真実に辿り着いたとしても、彼の心は晴れなかった。

むしろ、深い闇に覆われていくのを感じていた。

彼は、彩由美を抱きしめ、彼女の温もりを感じた。

彼は、彩由美を守らなければならない.

そして、この事件の真相を、世間に公表しなければならない.

それが、彼にできる唯一のことだった。

葉羽は、彩由美と共に、洋館を後にした。

空は、完全に暗くなっていた。

まるで、彼らの未来を暗示するかのように。

　　　　　　　　　　　　　　　　

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