鏡の中の真実

葉羽

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2章

鏡の力

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葉羽は、あの不気味な映像が頭から離れなかった。鏡の前に立つたびに、彼の心の中に渦巻く不安が膨れ上がっていく。だが同時に、彼はこの鏡の力をもっと深く探求したいという好奇心に駆られていた。自分の目の前にあるこの不思議な道具が、他人の記憶を映し出すというのなら、彼はそれを利用して何かを見つけ出したいと思った。

翌日、学校が終わると、葉羽は再び彩由美を自宅に呼ぶことにした。彼女はいつも明るく、天然な性格で、葉羽を安心させる存在だった。彼女が来ることで、彼の心の不安が少しでも和らぐのではないかと期待していた。

「葉羽、呼んでくれてありがとう!」彩由美はいつも通りの明るい声で、彼の部屋に入ってきた。彼女の笑顔を見ると、葉羽はほっとした。

「いや、こちらこそ。ちょっと試してみたいことがあって…」

葉羽は鏡を指さしながら、彼女にその不思議な力について話した。彩由美は興味津々で、彼の話を聞いていた。

「他人の記憶が見えるなんて、すごい!でも、怖くない?」

葉羽は少し考えた。「確かに、怖い部分もあるけど、何か面白いことが起きるかもしれない。どうしても試してみたくて。」

彩由美は少し不安そうに見えたが、彼の目を見るとその決意を感じ取ったのか、頷いた。「じゃあ、一緒にやってみよう!」

二人は鏡の前に立った。葉羽は心を落ち着け、彩由美にもリラックスするように促した。彼は、自分の心の中にある不安を消し去り、彼女の目を見つめた。

「まずは、お前が思い出したいことを考えてみて。何が映し出されるか見てみよう。」

彩由美は少し考え込み、やがて目を閉じた。「うん、今から思い出すね。」

葉羽はその様子を見守りながら、自分も心を集中させる。そして、彼女の思い出が映し出されるのを待った。

静寂が続く中、鏡の表面が徐々に曇り始めた。すると、やがて鮮やかな映像が浮かび上がる。それは、彩由美が小さな頃、彼女の家の庭で遊んでいる姿だった。彼女は笑顔で、友達と一緒に遊んでいる様子が映し出されている。

「すごい!本当に映ってる!」彩由美は興奮した声を上げた。

しかし、映像は次第に変わっていく。彼女の笑顔が消え、庭の周りが暗くなり、まるで嵐が近づいてくるような不穏な雰囲気が漂い始めた。葉羽はその変化に心が締め付けられる思いだった。

「これ、どういうことだ…?」葉羽は不安が増してくる。

映像の中で、彩由美は突然、恐怖に満ちた表情に変わった。彼女の周りには、黒い影が現れ、彼女を取り囲んでいく。影はまるで彼女の心の中に潜む恐怖を象徴しているかのように見えた。

「やめて!やめて!」彩由美は鏡の中の光景に引き込まれ、恐れを感じているようだった。彼女の声は震えている。

葉羽は慌てて彼女の肩に手を置いた。「大丈夫だ、彩由美!これはただの映像だ、現実じゃない!」

しかし、彼女の目には恐れが浮かんでいた。葉羽は彼女を守りたい一心で、映像を打ち消そうと心の中で叫んだ。すると、鏡の中の映像が急に静まり返り、影は消え去った。彩由美は息を呑み、目を開けた。

「何だったの、あれ…?」彼女は震える声で呟いた。

「わからない。でも、あの影はお前の心の中にある何かなんじゃないかと思う。」葉羽は言った。彼は彼女の手を握り、安心させるように微笑んだ。「一緒にそれを解決しよう。」

彩由美は少し落ち着きを取り戻し、彼を見つめ返した。「でも、どうやって?」

葉羽は考え、少しずつ自分の心の中にあった思いを口にする。「お前の過去の記憶を映し出すことで、何かを見つけ出せるかもしれない。もしかしたら、あの影の正体を探ることで、お前の心の痛みを理解できるかもしれない。」

彼女は少し考え込み、やがて頷いた。「じゃあ、もう一度やってみよう。」

二人は再び鏡の前に立ち、今度は彩由美が過去の中で最も恐ろしい出来事を思い出そうとした。葉羽はその姿を見守りながら、自らの心の中でも何かが動き始めるのを感じていた。彼女の痛みを理解することで、彼自身の過去と向き合う準備が整いつつあった。

鏡の中に映し出されるのは、彼女だけではなく、葉羽自身の運命をも左右するかもしれないという予感が、彼の心を締め付けていた。果たして、彼らはこの不思議な鏡を通じて、どんな真実に辿り着くのか。葉羽の胸には、恐れと期待が入り混じっていた。 

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