ドラゴンディセンダント

ドクターわたる

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夜明け前にはつかまえて①

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―――2つの影が高速で移動していく。

AM4:15・・・。

深夜どころか朝方だ。場所は降魔六学園の外やや南西・・・市街地があるのだ。と言っても人口は多くない。
2万人ほどの街だ。
降魔の地は小さめだがデパートもあるし大抵のものはそろうが休日は遊びに、ショッピングや食事に降魔六学園の生徒たちが良く訪れる場所である。

・・・ついでに最近行方不明者が増えている街でもあるわけだが。

この街のやや外れを2つの物体が高速で移動していく。よく見れば2つの物体は2人でシルエットからはどちらも女性だということがわかる。

かなりの俊敏さだ。とても常人にはだせないスピードだ。

先頭の女性は遮蔽物の影を音も無く逃げて、後ろの女性はそれを追いかける。

逃げる女性は身長160㎝ほどだ。暗い色調の服をきている。
後ろの女性はこれまた黒い色の魔装鎧をまとっている。

後ろの女性は身長175㎝・・・魔力を押えているが西園寺桔梗だ。
高速で気配も少なく逃げて逃げて逃げまくる女性を追いかけている。
対して急いでいるように見えないが住居の上を飛ぶように進んでいる。

さらにその上空にも一人いる。
こちらも魔装している・・・総生徒会執行部の書記長、更科麗良だ。
こちらは空中から観察しているようだ。

さらに後ろから距離をつめてくるものも数人いる。

まあ逃げる女性を西園寺桔梗をリーダーとするチーム“ホーリーライト”が追っていることになる。



―――町の外れまで来たところで逃げていた女性はふと立ち止まる。
そして追いついてきた西園寺桔梗と対峙する。

逃げていた女性は魔装していない、私服のままである。

街灯があるが周囲はやや暗めだ。口火を切ったのは西園寺桔梗。
「鬼ごっこはおわりか。第4高校、生徒会長。蜂野菫子はちのすみれこ
「さすがですね。逃げきれると思いましたが・引き離せないとは・・・」

「久しぶりではないか。総生徒会にはもう出席する気はなさそうだな?」
特に返事はせず西園寺桔梗は言いたいことを言っている。

「ふふ。何をいまさら。あんなところあなたの独壇場でしょう、なんの民主制もない。あなたの独裁体制下であなたのただスピーチを聞くだけの会議・・・ああいうのは会議とはいいません。うんざりですね・・・自由意志を尊重しないものとはコラボできません」
「ふっ。自分の足で立てないもの共に自由など不要だ・・ただ導いてやればよいのだ・・。貴様も人を導くべき竜の召喚士であろうが・・・」
桔梗の語気は強めだ・・・いつも通り威圧的だ。

「この世界は新しいものを生み出しにくい、弱いものは認められにくく、変化は拒否される。世界に影響を与える発見は握りつぶされる・・・この世は新たな秩序を必要としています」
「それが来年の聖魔大戦だとでも言う気か?蜂野菫子?」
「コントロールできるはずです。西園寺桔梗」

眼を閉じた桔梗はひとつため息をつく。

「・・・貴様がコントロールできるのか。そのていたらくで。誰に騙されているのだ?」
「誰にも騙されていません。これがわたしの自由な選択です」

「それが新しい且つ自由な選択肢か。どこが新しいのだ?かつて蜂野菫子だったモノよ・・・。悪魔崇拝者にそそのかされ吸血鬼となりはて夜な夜な学外で人を襲う獣が何を言うか」

「・・・人の可能性です。乗り越えなければ先が見えない。トライしなければコントロールできるか分からない。人類の新たな選択肢の一つです。吸血衝動さえ抑えられれば」

「吸血鬼は危険度A、魔族に準じ、すべからく駆除対象である。噛まれたものも吸血鬼化して増えるからな・・・実際コントロールできておらんから、そんなにいるのであろう。吸血鬼の巣に誘い込んだつもりであろうがな・・・ふくろの鼠だ」
そう周囲には人ならざる気配がある、1つや2つではない。

「否定はしません。あなたを説得するのは甚だ困難ですので。あなたはここで我々のすべきことの支障になる、それに高校生が何の権限で生命あるものを駆除すると?」

「おまえを吸血鬼化したのはゲヘナであろう?」

「答える義務はありません、相変わらずあなたとは平行線ですね」
2人の間の殺気は膨れ上がる・・・吸血鬼を1匹と数えるのではなく1人と数えるなら・・・。

ズッッシャ――!!

戦闘開始と言わんばかりに蜂野菫子は右手を振り、斬撃を飛ばした。
右手の爪は80㎝ほどに伸びて5本の爪は先端で癒合し剣のようになっている。

もともと蜂野菫子は水属性の竜族でTMPA3万ほどだったはずだが吸血鬼化することでかなり戦闘力が上がっているようだ。

本来魔族を退治するのが召喚士の仕事だが、魔族の一種に数えられる吸血鬼に堕している。
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