ドラゴンディセンダント

ドクターわたる

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戦闘は否応なしに開始される―――初めての全国大会―――①

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―――1-Aの教室は今日もにぎやかだ、と言っても騒音の元は授業が終わったとたんに颯爽とやって来た緑川尊だが。

放課後、部活に行く前である。

秋元未来が珍しく風邪で休んでいる。沙羅もロミオもまだ来ていない。
そのため珍しく緑川と葵は2人で話している、と言っても緑川が8割がた喋っているのだが、今日から少し状況が変わるのだ。

「春季大会前っすから今日からしばらくランク戦は中止っすよ」相変わらず情報通だ。
「・・・よし!あの西園寺の桔梗の奴!決着つけてやるぜ!」
鏡の国で共闘して以来かなり意識しているようだ。


そう春季大会が始まるのだ。成績は大学への進学に直結する・・・まあ新入生にはそこまで関係はないのだが・・・。
公式戦は基本的に全員参加であり、降魔六学園の生徒8000人のほとんどが個人戦に出場・・・団体戦はレギュラーでなければ補欠としてだがサポート要員として参加することになる。


・・・1-Cの緑川尊がここにいることは1-Aの他の生徒にとって空気のような普遍のものになりつつある。

「あの、姐さん・・・春季大会では新入生は個人戦は新人戦しか出れないっすよ・・・“ドラゴンディセンダント”は新設なんで団体戦も10月のインターハイからしか出れないっす」
「んだと!」
こないだも緑川と権藤先生が説明していたのに聞いてなかったな。

「ああ、でも12月にも白鯨旗って公式戦があってこれは団体戦なんすけど5対5の勝ち抜き戦なんすよ、先鋒で5人抜いちゃうとかできるっす」
過酷なんで人気ないけどな。結局、桔梗が率いる“ホーリーライト・ザ・ファースト”が優勝するだけだが。そして厳密には公式戦ではない・・・まあいいけど。
「勝ち抜きはおもしろそうだな・・・いや12月って10月より先じゃねえか・・・」

「じゃあとっておきの極秘情報っす。来年5月からはひとつ公式戦が増えるらしいっす!これは個人戦だけの公式戦らしいっす」
どっから情報持ってきているんだ?

「来年ってもっと先じゃねえか」
賢いなあ葵・・・。

「先のことは大事っすよ姐さん・・・俺たちがこのまま強くなって3年生になったころ・・・今の“DD-stars”とか“ホーリーライト”くらい強くなりたいっすね」
それは確かにその通りだ。
葵を除けば、三守と緑川の能力とポテンシャルは竜族も相まって1年では最強クラスだろうしロミオも遠隔攻撃できるようになれば化けるだろう。
3年になって主要メンバーがTMPA3万越えれば春季大会やインハイで全国公式団体戦の優勝圏内になるだろう。
アスモはよく分からないが。

・・・全員気付いていないだろうが急速に成長しているのだ。葵が強すぎて霞んでいるだけで・・・例えば戦闘能力の各項目をSABCDEで表せば緑川は攻撃B、スピードA、防御Cといったところ。“念装疾風”を使えば時速80km以上で走れるだろう・・・つまり100メートル走すればタイムは加速を考えても5秒前後だろう、これは上級生を入れても結構早い。
まあ葵は最低時速250kmは出ているから100メートル走は2秒切るかもだが。

「まあそう言わずに姐さん。新人戦の予選と言っても六つの学園で新入生3000人もいるんすよ。3000人っす、手強い奴がいるっすよきっと」
だいぶ葵の扱いに慣れてきたな・・・。
「なるほど・・・まあそうかもな」
強引に説得できそうだ。
まあ感覚合一できていない新入生も結構いるから3000人は出ないけどな、魔装もできないものは出場しない生徒も多いし半分くらいだろう。


しかし鏡のダンジョンでだれも死ななかったのは奇跡に近い・・・そして確かに強くなってきている・・・新人戦・・・葵以外もいいとこまで勝ちあがるかもしれない。

「まあそれでも姐さんが優勝するとは思うんすけど・・・聞いてもいいっすか?姐さんの火竜って第二段階っすよね?レベルいくつっすか?」
そういえばどれくらいだ?

「はあ?レベルってなんだよ?」
まさか知らないのか・・・。

情報通の緑川はこうやって葵にかなり基礎的な情報を与えている・・・いいコンビだ。
まあ知っていないとどうかしているレベルの基礎事項なんだが・・・。

「まじっすか。一回は脱皮というか蛹というか・・・姿が変わってるはずっす。影獣化している竜の卵と感覚合一すると数日後に竜の幼生が生まれるっすよね?これが第一段階っす。ここまでいいっすか?」
「うーん。それで?」
基本的に授業は寝てるし・・・葵は知識に問題がありそうだ。

「それでっすね。竜だけに限らないっすけど早いと大抵10日ほどで勝手に影の中でさなぎになるっす・・・数日後その竜が出てくると第二段階っす・・・進化するわけっす」
「そうだったか?」
大丈夫か・・・?

「大丈夫すか?姐さん・・・それでMAXレベルを100とするとっすね・・・」
「まてまてレベル100って突然なんだよ」
理論を知っていなくても強いんだな・・・無茶苦茶だ・・・。

「・・・えっとそこからっすか。第二段階で潜在能力を出し切ってMAXまで成長したとすると、そこを便宜上100とするんす・・・だいたいっすね普通レベル80まで育てるのに8年くらいかかるっす。もちろん個体差はあるっす。木属性だと成長早いとかっす」
「うーん?」
腕組みしている葵・・・絶対分かってないな。

「レベル80から90にするのにだいたい8年かかるっす。成長にブレーキがかかるんす」
「ようはレベル100にすりゃいいんだろ?」

「違うっす・・・レベル80を超えると任意で蛹化できるようになるっす・・・しばらく時間がかかるっすけど・・・蛹から孵化するとっす、レベル1にもどって第三段階になるっす」
だんだん補習を受けているダメ生徒と教師みたいに見えてくる・・・。

「はあ?レベル1にしてどうすんだ?」
「ちっちっちっ・・・そこが違うんすよ」

「むかつくなぁ・・・おまえ」
全く中指を立てるな・・・一応女なんだから。

よくこんな生徒に真面目に教える気になるな。

「何言ってるんすか。愛する人に教えてるんすよ・・・第三段階のレベル1はそこまで弱くならないっす、そしてレベル40位までは凄いスピードでレベルが上がるっす。レベル40位になるともとの強さになるっす・・・つまり第二段階のレベル80位っすね」
「じゃあさっさとレベル80になったら・・・なんだサナギか何かにすりゃいいんだな?」
もっとわかりやすく教えないと・・・。

「それが例えばレベル90まで上げてから第三段階にステップアップしたほうが最終的には少し強くなるっす」

頬杖ほおづえついて葵は完全にイライラしている。
「わけわかんねえ、じゃあやっぱりレベル100にすりゃいいんだな?」
「第二段階レベル90から100にするのに180年かかるらしいっす、それに第二段階レベル100と第三段階のレベル60が多分同じくらいの強さになるっす。ちなみに第三段階もレベル80になると第四段階に任意に進めることになるっす・・・ただ第四段階は成長がものすごく遅くなるっす・・・だから普通はお勧めしないっす」
まあ説明としては60点位か。

とうとう葵はついてこれなくなったか・・・。
「もうわっけわかんねえ・・・」

それでも畳みかける緑川・・・。
「ただし段階が上がると・・・蛹になる度に属性が増えたり・・・全然別の竜に進化することがあるっす・・・そういう意味では第四段階もありっすね・・・ちなみに竜の眷属と呼ばれる魔獣に分類される化蛇とか火蜥蜴なんかは蛹になって孵化ふかするときに本物の竜に・・・ドラゴンになることが稀にあるっす」
うん70点位・・・。

「・・・・・・」
そして葵は机に頭をつけてパンクしている。

「わかったっす・・・今度姐さんの竜のレベルを測って・・・何が必要か俺が考えるっす」

うんそれがいい。時間の無駄だ・・・。
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