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2話
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フリンダ・ロイゼフ。
その名は、グロリア王国の社交界において、一種の畏怖と共に語られる。
ある者は言う。
彼女が夜会で纏うドレスは、奈落の闇をそのまま切り取って仕立てたものではないか、と。
ある者は囁く。
かつて王国に潜入した隣国の暗殺者ギルドが、一夜にして忽然と姿を消したのは、フリンダ夫人が「庭の掃除をした」からだ、と。
また、ある者は震えながら証言する。
彼女が素手で城壁を砕き、その瓦礫を淡々と片付けている姿を目撃した、と。
まことしやかに囁かれる伝説は数知れない。
晩餐会で出されたスープに毒が盛られていた際、彼女は眉一つ動かさず、それを飲み干した挙句
「これはこれで、なかなか香ばしい」
と料理長に感想を述べたとか。
反乱を企てた辺境伯の城に単身で乗り込み、一晩で城を無力化し、翌朝には何事もなかったかのように王宮の茶会に参加していたとか。
『王家の番犬』
『歩く破壊兵器』
『悪役夫人』
数々の物騒な異名を持つ彼女の本質は、王家の依頼を受け、その絶対的な個の武力をもって、国の平穏を脅かすあらゆる障害を秘密裏に排除する『掃除屋』。
国王陛下直属の、治外法権的な権能を与えられた、王国の影の守護者である。
故に、誰もが彼女を恐れる。
その人を寄せ付けぬ氷のような美貌と、全てを見透かすような鋭い眼差しに、正面から逆らえる者など、この国には存在しない。
……ただ一人、その実の娘を除いては。
***
「はぁ……」
自室の窓辺で、フウカ・ロイゼフは静かにため息をついた。
手には、刺しかけの刺繍。白いリネンの上で、可憐な勿忘草(わすれなぐさ)が生まれようとしている。
しかし、今は針を進める気にはなれなかった。
(お母様、今頃ディルト子爵家に謝罪に行かれているけれど……大丈夫かしら)
昨日の今日で、父であるロイゼフ公爵が血相を変えてディルト子爵家に飛んでいき、なんとか穏便に事を収めてくれた。
もっとも、婚約破棄という事実は覆らなかったが。
フリスク元婚約者の怯えようが尋常ではなく、二度とロイゼフ家に関わりたくないの一点張りだったらしい。
(……まあ、あの婚約がなくなったこと自体に、不満はないのだけれど)
フリスクの下卑た視線には、正直なところ辟易していた。
けれど、やり方というものがある。
母の行動は、あまりにも破天荒が過ぎた。
(本当に、どうしてあんなに不器用なのかしら……)
フウカはもう一度、今度は呆れと親しみの入り混じったため息をついた。
その時だった。
くんくん。
どこからか、微かに何かが焦げる匂いが漂ってくる。
それと同時に、ガコンッ、だの、ゴッ、だの、穏やかではない物音が断続的に聞こえてきた。
「……何の音?」
侍女たちは皆、今日は午後から休暇を与えているはずだ。
父は公務で城へ行っている。母も謝罪に出かけている。
この屋敷には、自分一人しかいないはずなのに。
胸騒ぎを覚え、フウカはそっと刺繍を置くと、音のする方へと向かった。
匂いと音の発生源は、すぐに知れた。
厨房だ。
扉の前に立つと、隙間から黒い煙がうっすらと漏れ出している。
焦げ臭い匂いも、先程よりずっと濃くなっていた。
(まさか、火事!?)
フウカは慌てて扉に手をかけた。
「誰かいるのですか!?」
勢いよく扉を開けたフウカの目に飛び込んできた光景に、彼女は思わず絶句した。
そこは、もはや厨房ではなかった。
古代の戦場跡、あるいは錬金術師の失敗した実験室とでも言うべき、混沌とした空間が広がっていた。
濛々と立ち込める黒煙。壁のあちこちには、正体不明の黒い液体が飛び散った跡。
調理台の上には、かつて野菜や肉だったと思われる物体が、見るも無残な炭と化して鎮座している。
そして、その地獄のような光景の中心に、その人はいた。
「あら、フウカ。いいところに」
純白のエプロンを煤で汚し、顔にも黒い汚れをつけた母、フリンダが、ひしゃげたフライパンを片手に、にこりともせずに言った。
その姿は、まるで激戦を終えた戦士のようだった。
「お母様……? 謝罪に行かれたのでは……」
「ああ、先方が『顔も見たくない』と言うものだから、早々に追い返されてな。それで、時間ができたから、お前のために昼食を作ってやろうと思ったのだ」
「昼食……」
フウカの視線が、フライパンの上へと吸い寄せられる。
そこには、オムレツともスクランブルエッグともつかない、どす黒い塊が横たわっていた。時折、パチパチと不気味な音を立てている。
「愛情たっぷりのオムレツだ。さあ、食べろ」
フリンダはそう言うと、皿に移すことすらせず、フライパンごとフウカの前に差し出した。
その瞳は、期待に満ちている。
自分の娘が、自分の手料理を喜んでくれると信じて疑っていない、純粋な光に満ちていた。
フウカは、こめかみが引き攣るのを感じた。
怒りではない。呆れでもない。なんとも言えない、愛おしさとやるせなさが入り混じった感情が、胸に込み上げてくる。
(……知っている)
この人が、本当は誰よりも優しいことを。
この人が、自分のことを世界で一番大切に想ってくれていることを。
ただ、その愛情表現の方法が、致命的に、絶望的に、破壊的な方向へ向かってしまうだけなのだ。
「お母様。その……お気持ちは、本当に、嬉しいのです」
フウカは、なるべく穏やかな声で言った。
ここで下手に刺激してはいけない。過去に一度、母の料理を断った結果、悲しみのあまり母が裏庭の大岩を素手で粉砕してしまったことがある。
「そうか。ならば、早く食べろ。冷めてしまう」
「ええと……これは、その……卵、で合っていますか?」
「ああ。鶏小屋から、今朝産まれたばかりの新鮮なものを取ってきた」
(ああ…なんて可哀想な卵……)
フウカは心の中で名もなき卵の冥福を祈った。
「仕上げに、これをかけるといい」
フリンダはそう言うと、どこからかケチャップの瓶を取り出した。
そして、蓋を開けようと、そのガラス瓶をきゅっと握る。
パリンッ!!
次の瞬間、フリンダの手の中で、ケチャップの瓶が木っ端微塵に砕け散った。
赤い液体が、フリンダと、周囲の壁、そしてフウカにまで景気よく飛び散る。
「……あっ」
さすがのフリンダも、予想外の事態に間の抜けた声を上げた。
そして、焦ったように身じろぎした拍子に、調理台の端に積まれていた鍋の山に肘が当たった。
ガッシャーン!!!
凄まじい音を立てて、鍋やフライパンが雪崩を起こし、床に散らばった。
厨房の惨状は、ここに極まった。
もはや、これまでだった。
フウカは深呼吸を一つすると、母の元へ静かに歩み寄った。
そして、まだ何かをしようと次の調理器具に手を伸ばしかけていた母の手を、そっと、両手で優しく包み込むように取った。
「お母様」
「む……フウカ?」
「お気持ちは、本当に、天にも昇るほど嬉しいのです。わたくしのために、ありがとうございます」
「……そうか」
「ですが」
フウカは、にっこりと、聖母のような笑みを浮かべた。
「お食事は、わたくしが作りますので。お母様は、そちらの椅子で、ゆっくりとお茶でも飲んでいてくださいませんか?」
有無を言わさぬ、しかし棘のない、完璧な提案。
フリンダは一瞬、何か言いたそうに口を開きかけたが、娘の穏やかな笑顔に見つめられ、やがて諦めたようにこくりと頷いた。
「……わかった」
少しだけ、しょんぼりとしたように見える最強の母を、フウカは壊れ物を扱うようにテーブルの椅子までエスコートする。
その不器用で大きすぎる愛情に、フウカは呆れながらも、どうしようもなく満たされている自分を感じるのだった。
その名は、グロリア王国の社交界において、一種の畏怖と共に語られる。
ある者は言う。
彼女が夜会で纏うドレスは、奈落の闇をそのまま切り取って仕立てたものではないか、と。
ある者は囁く。
かつて王国に潜入した隣国の暗殺者ギルドが、一夜にして忽然と姿を消したのは、フリンダ夫人が「庭の掃除をした」からだ、と。
また、ある者は震えながら証言する。
彼女が素手で城壁を砕き、その瓦礫を淡々と片付けている姿を目撃した、と。
まことしやかに囁かれる伝説は数知れない。
晩餐会で出されたスープに毒が盛られていた際、彼女は眉一つ動かさず、それを飲み干した挙句
「これはこれで、なかなか香ばしい」
と料理長に感想を述べたとか。
反乱を企てた辺境伯の城に単身で乗り込み、一晩で城を無力化し、翌朝には何事もなかったかのように王宮の茶会に参加していたとか。
『王家の番犬』
『歩く破壊兵器』
『悪役夫人』
数々の物騒な異名を持つ彼女の本質は、王家の依頼を受け、その絶対的な個の武力をもって、国の平穏を脅かすあらゆる障害を秘密裏に排除する『掃除屋』。
国王陛下直属の、治外法権的な権能を与えられた、王国の影の守護者である。
故に、誰もが彼女を恐れる。
その人を寄せ付けぬ氷のような美貌と、全てを見透かすような鋭い眼差しに、正面から逆らえる者など、この国には存在しない。
……ただ一人、その実の娘を除いては。
***
「はぁ……」
自室の窓辺で、フウカ・ロイゼフは静かにため息をついた。
手には、刺しかけの刺繍。白いリネンの上で、可憐な勿忘草(わすれなぐさ)が生まれようとしている。
しかし、今は針を進める気にはなれなかった。
(お母様、今頃ディルト子爵家に謝罪に行かれているけれど……大丈夫かしら)
昨日の今日で、父であるロイゼフ公爵が血相を変えてディルト子爵家に飛んでいき、なんとか穏便に事を収めてくれた。
もっとも、婚約破棄という事実は覆らなかったが。
フリスク元婚約者の怯えようが尋常ではなく、二度とロイゼフ家に関わりたくないの一点張りだったらしい。
(……まあ、あの婚約がなくなったこと自体に、不満はないのだけれど)
フリスクの下卑た視線には、正直なところ辟易していた。
けれど、やり方というものがある。
母の行動は、あまりにも破天荒が過ぎた。
(本当に、どうしてあんなに不器用なのかしら……)
フウカはもう一度、今度は呆れと親しみの入り混じったため息をついた。
その時だった。
くんくん。
どこからか、微かに何かが焦げる匂いが漂ってくる。
それと同時に、ガコンッ、だの、ゴッ、だの、穏やかではない物音が断続的に聞こえてきた。
「……何の音?」
侍女たちは皆、今日は午後から休暇を与えているはずだ。
父は公務で城へ行っている。母も謝罪に出かけている。
この屋敷には、自分一人しかいないはずなのに。
胸騒ぎを覚え、フウカはそっと刺繍を置くと、音のする方へと向かった。
匂いと音の発生源は、すぐに知れた。
厨房だ。
扉の前に立つと、隙間から黒い煙がうっすらと漏れ出している。
焦げ臭い匂いも、先程よりずっと濃くなっていた。
(まさか、火事!?)
フウカは慌てて扉に手をかけた。
「誰かいるのですか!?」
勢いよく扉を開けたフウカの目に飛び込んできた光景に、彼女は思わず絶句した。
そこは、もはや厨房ではなかった。
古代の戦場跡、あるいは錬金術師の失敗した実験室とでも言うべき、混沌とした空間が広がっていた。
濛々と立ち込める黒煙。壁のあちこちには、正体不明の黒い液体が飛び散った跡。
調理台の上には、かつて野菜や肉だったと思われる物体が、見るも無残な炭と化して鎮座している。
そして、その地獄のような光景の中心に、その人はいた。
「あら、フウカ。いいところに」
純白のエプロンを煤で汚し、顔にも黒い汚れをつけた母、フリンダが、ひしゃげたフライパンを片手に、にこりともせずに言った。
その姿は、まるで激戦を終えた戦士のようだった。
「お母様……? 謝罪に行かれたのでは……」
「ああ、先方が『顔も見たくない』と言うものだから、早々に追い返されてな。それで、時間ができたから、お前のために昼食を作ってやろうと思ったのだ」
「昼食……」
フウカの視線が、フライパンの上へと吸い寄せられる。
そこには、オムレツともスクランブルエッグともつかない、どす黒い塊が横たわっていた。時折、パチパチと不気味な音を立てている。
「愛情たっぷりのオムレツだ。さあ、食べろ」
フリンダはそう言うと、皿に移すことすらせず、フライパンごとフウカの前に差し出した。
その瞳は、期待に満ちている。
自分の娘が、自分の手料理を喜んでくれると信じて疑っていない、純粋な光に満ちていた。
フウカは、こめかみが引き攣るのを感じた。
怒りではない。呆れでもない。なんとも言えない、愛おしさとやるせなさが入り混じった感情が、胸に込み上げてくる。
(……知っている)
この人が、本当は誰よりも優しいことを。
この人が、自分のことを世界で一番大切に想ってくれていることを。
ただ、その愛情表現の方法が、致命的に、絶望的に、破壊的な方向へ向かってしまうだけなのだ。
「お母様。その……お気持ちは、本当に、嬉しいのです」
フウカは、なるべく穏やかな声で言った。
ここで下手に刺激してはいけない。過去に一度、母の料理を断った結果、悲しみのあまり母が裏庭の大岩を素手で粉砕してしまったことがある。
「そうか。ならば、早く食べろ。冷めてしまう」
「ええと……これは、その……卵、で合っていますか?」
「ああ。鶏小屋から、今朝産まれたばかりの新鮮なものを取ってきた」
(ああ…なんて可哀想な卵……)
フウカは心の中で名もなき卵の冥福を祈った。
「仕上げに、これをかけるといい」
フリンダはそう言うと、どこからかケチャップの瓶を取り出した。
そして、蓋を開けようと、そのガラス瓶をきゅっと握る。
パリンッ!!
次の瞬間、フリンダの手の中で、ケチャップの瓶が木っ端微塵に砕け散った。
赤い液体が、フリンダと、周囲の壁、そしてフウカにまで景気よく飛び散る。
「……あっ」
さすがのフリンダも、予想外の事態に間の抜けた声を上げた。
そして、焦ったように身じろぎした拍子に、調理台の端に積まれていた鍋の山に肘が当たった。
ガッシャーン!!!
凄まじい音を立てて、鍋やフライパンが雪崩を起こし、床に散らばった。
厨房の惨状は、ここに極まった。
もはや、これまでだった。
フウカは深呼吸を一つすると、母の元へ静かに歩み寄った。
そして、まだ何かをしようと次の調理器具に手を伸ばしかけていた母の手を、そっと、両手で優しく包み込むように取った。
「お母様」
「む……フウカ?」
「お気持ちは、本当に、天にも昇るほど嬉しいのです。わたくしのために、ありがとうございます」
「……そうか」
「ですが」
フウカは、にっこりと、聖母のような笑みを浮かべた。
「お食事は、わたくしが作りますので。お母様は、そちらの椅子で、ゆっくりとお茶でも飲んでいてくださいませんか?」
有無を言わさぬ、しかし棘のない、完璧な提案。
フリンダは一瞬、何か言いたそうに口を開きかけたが、娘の穏やかな笑顔に見つめられ、やがて諦めたようにこくりと頷いた。
「……わかった」
少しだけ、しょんぼりとしたように見える最強の母を、フウカは壊れ物を扱うようにテーブルの椅子までエスコートする。
その不器用で大きすぎる愛情に、フウカは呆れながらも、どうしようもなく満たされている自分を感じるのだった。
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