平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

にゃ-さん

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第29話 世界の頂に立つ男

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風は高く、空はかつてないほど澄み渡っていた。  
神々の会議が終焉を迎え、天の裂け目が閉じたあと、地上には一時の静寂が訪れていた。  
だがその静けさは、次なる運命への予兆にすぎなかった。  

丘の上、レオンは静かに立っていた。  
辺りではリリアとフィオナ、アメリアがそれぞれ体を休め、村の復興を手伝う人々を見守っている。  
世界樹の葉は風に揺れ、微かな生命の歌声を奏でていた。  

「……やっぱり、何もかもが変わったな」  
レオンはその景色を見つめながら呟いた。  
空気さえ違って感じる。  
この世界は確かに再生したのだ。  

「変わったのは世界だけじゃないわ」  
リリアが近づいてきて、彼の隣に立った。  
「何か顔つきが大人びたもの。神でも攻略できそうな顔」  
「そんなの要らないよ」  
レオンは笑った。  
「ただ、誰も泣かないようにしたいだけだよ」  

その時、アメリアが駆け寄ってきた。  
「レオン、これを……」  
彼女の手の中には光の欠片があった。  
淡い青に輝き、羽根のように揺れている。  
「神界から落ちてきた“理の片鱗”。おそらく、アルケイオスが残した記録の核」  
フィオナが神妙な表情を浮かべる。  
「主。これには膨大な情報が詰まっているはずです。この世界の成り立ち、神々の系譜、そして……あなたの正体」  

レオンはしばらく黙って光を見つめ、やがてその手を握った。  
「それを知ったら、もう人ではいられない気がする」  
「本当のことを知っても変わらないで」リリアが低い声で言った。  
「少なくともあたしにとっては、レオンはただの馬鹿な善人よ」  
アメリアが笑う。  
「そうね。神になるより、傍で笑ってる方が似合ってる」  
フィオナも小さく頷いた。  
「あなたが歩んだのは、創造と破壊の狭間です。ですが、選ぶのはいつだって――あなた自身」  

レオンは一歩、丘の端まで進み、手の中の光を放った。  
青の輝きが空へ昇り、太陽に溶けていく。  

「俺には、知るより信じる方が大事だから」  
そう言って笑う顔に、三人が何も言えなくなる。  

しかし、その静寂を切り裂くように、地の底から震動が走った。  
細かい粒子が舞い上がり、草原の奥から黒い霧が滲み出る。  
フィオナが鋭く目を細めた。  
「主……この気配は……!」  
「……来たか」  
レオンは振り返らずに答えた。  

黒霧の中から、無数の影が姿を現す。  
それは神でも魔でもない、もっと曖昧で不完全な存在。  
かつて滅びた“理の神”の欠片の集合――〈裏創神〉。  
彼らは形を持たず、ただ人の恐怖や絶望を餌に増殖していく。  

「やっぱり残ってたのね。神々の影が」リリアが剣を構える。  
アメリアは祈りの印を切り、震える声で言った。  
「これが“反理”の神性……神々が自ら切り離した負の意志」  
「創世の光が強すぎたせいで、闇が形になったんだ」  
レオンは静かに前へ出る。  
「まるで、俺たちの中の罪みたいだね」  

闇の波が押し寄せる。  
叫び声も、息の音もない。  
ただ、空間を呑み込む圧迫感だけがあった。  

リリアが斬り込み、フィオナが光を放つ。  
しかし幾度も倒しても、影は霧のように形を変えて蘇る。  
「霊体に近い……物理攻撃じゃ埒が明かない!」リリアが息を荒くする。  
「主! この闇は消すしかありません!」  

レオンは頷いた。  
「でも、消すんじゃない。“還す”んだ」  

彼は両手を広げた。  
光が集まり、彼の背に再び世界樹の紋が浮かび上がる。  
緑と白、そして金の光が混ざり合い、嵐のように広がっていく。  
「もう一度、命を循環させる!」  

大地が光を放ち、黒い霧が風に揺らぐように溶けていく。  
空に舞う粒子は消えず、代わりに小さな光の蝶に変わっていった。  
それは夜空を埋め尽くしながら、消えゆく魂たちを天へ導く。  

「うそ……こんなに優しい光があるなんて……」アメリアの声は震えていた。  
リリアが剣を構えたまま、力を抜く。  
「まったく。何度見てもずるいわ、その力」  
フィオナが微笑む。  
「彼こそが、創世の均衡。命の始まりも終わりも、彼の“願い”によって形を変える」  

闇は完全に消え、空が再び青みを取り戻す。  
その中で、レオンは小さく息を吐いた。  
「……これで、世界はちゃんと“流れ”を取り戻した」  

丘の上に立つ彼の姿を見て、リリアがぽつりと口にした。  
「ねえ、気づいてる? 今のあんた、まるで世界の中心に立ってるみたい」  
「中心に立つつもりなんてないよ。ただ、みんなが前に進めば、それでいい」  
「そう言って、あんたが一番遠くを見てるのよ」  

レオンは少しだけ照れくさそうに笑った。  
風が吹き、丘の花々が一斉に揺れる。  
その先、彼の視線の向こうには、人々が未来の街を築いているのが見えた。  

アメリアがその横顔を見上げて言う。  
「あなたがいなければ、きっと誰も信じることを思い出せなかった」  
「俺は何もしてないよ。みんなが、信じようとしてくれたからだよ」  
「それでも、あなたがいなければこの希望はなかった」  

レオンは足元の草を踏み締めて前を向く。  
「なら、もう俺の番は終わりだ。これからは、人の時代だよ」  
「その割に、また次の厄介ごとが来そうじゃない?」リリアが溜息をつく。  
「たぶんね。でも、もう大丈夫。どんな神でも魔でも、人でも――ちゃんと話せる気がする」  

そう言って微笑んだ瞬間、空に一筋の流星が走った。  
それは夜明け前の暗闇を裂き、まるで新しい頁を開くようだった。  

フィオナが囁く。  
「主、あなたはいずれ“頂”と呼ばれるでしょう」  
「頂なんていらないよ」  
「それでも、世界はあなたを中心に回り始めています」  

レオンは冗談めかして笑った。  
「なら、せめてみんなで回っていこう。俺一人じゃ目が回るから」  

三人が笑う。  
風が穏やかになり、丘の上に朝の光が差し込む。  
レオンは空を見上げ、心の中で静かに願った。  
もう二度と、誰も絶望を忘れない世界を――そして、その中で人が自分で歩ける未来を。  

彼の背中に、金色の光が集まり、わずかに揺らめく。  
それはまるで、世界そのものが彼に感謝の意を示しているようだった。  

「ほらね」リリアが微笑んだ。  
「やっぱり、あんたは世界の頂に立ってるわよ」  
レオンは小さく首を振った。  
「違うよ。俺は世界の中に立ってるだけさ」  

風が吹き抜ける。  
どこまでも、果てしなく。  
それはまるで、次の物語を迎えに行く旅支度の風のようだった。  

そして、光の中でレオンはゆっくりと歩き出す。  
その背の向こうで、夜明けがまた世界を包み込もうとしていた。  

続く
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