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第一章
第七話
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オークとは所謂ファンタジーもののゲームやアニメに出てくる豚頭を想像してもらえばいいだろう。『revolues』のオークもそれらと同様の豚頭、人の1.5倍程ある巨体を持っており、知能は低いが怪力を誇る。
オーク二、三体をパーティで余裕をもって倒せるようになれば冒険者のDランクとして一人前と言われるが、現在オークの巣にいる個体数は目に見えるだけでも優に十体を超えている。通常Dランクパーティには荷が重い状況であるが、それを見てフリートは焦りもせずに頷いた。
「うん、探知魔法の通りだな。表に出ているのが十五体に巣の中の十七体。念の為偵察という体にはしてきたが、何とかなりそうだ」
その表情に驕りは無い。唯純然たる事実としてそう判断を下しているのだ。確かに、貴族としての英才教育の一環として武術を習った彼らは一般人よりはるかに強い。冒険者ギルドでF、Eランクを飛び級してDランクから始められたのも貴族は既にDランク相当の力があると判断されているためである。
それに加え、彼が判断を下した根拠は他にもある。フリートの存在? いいや。彼の知識による戦力強化は確かにあるが、流石に活動して一か月も経たずしてオークの集団相手に余裕を持てるほどではない。
根拠。あるいは自信と言い変えても良いが、それの源泉となっているのはある男の存在だ。
『revolues』攻略サイトにおいて付けられた二つ名は『剣聖』。
剣のみに生き、そして蔑まれ続けた男、ヴァン・ジルハート。それが彼の名前だ。
「大丈夫ですよね? ヴァンさん」
「ああ、問題ない。中にいるものは全て受け持とう。……それと、何度も行ったが俺のような男に敬語は不要だ。こんな剣にしか取り柄がないような男にはな」
「こっちも何度も言いますが、そう卑下するものじゃないと思いますよ。現にこうして頼らせてもらっているわけですし」
「……。そうか」
彼はフリートが真っ先に声をかけた人材だ。
現在どこにも所属してなく、またストーリーに極めて大きな影響を与える存在でもない。そうした条件下でしかも帝都の傭兵ギルドという近場にいたことがその理由の一つ。
そして理由の二つ目は、単純に彼の強さである。この世界において剣術とは、ただ単に剣を扱う技量だけではない。周囲の魔素を無意識化で操り、己の体や剣を極限まで強化する。それを含めてこの世界では剣術と呼ぶ。
『剣聖』というwiki称号が示す通りヴァンは凄腕の剣士である。だがにもかかわらず寂れた傭兵業をしていたのは全て彼に魔法的な才能が皆無だからに他ならない。剣術が冴えていようが、身体能力を強化できなければ地力で潰される。
かくして不遇な身であった彼だが、フリートはその強さをゲーム知識によって知っている。なに、原因が分かっているのなら対策は簡単な事。自分で強化できないのなら、他人に強化魔法を付与してもらえばいいのである。集団戦という制約は付くものの、たったそれだけでヴァンは強くなれる。幸いフリートは聖属性に少しだが適性がある。最低限の援護は可能だし、仲間にはもっと強い適性を持つものだっていた。
それすらも思いついてなかったのか? と少し不思議に思うフリートだが、ともかく強力な戦力がフリーであるのに逃す手はない。早速伯爵家当主である父上に願い出て、父上の前でヴァンに剣術を披露させることでフリート直属として雇うことを認めてもらえた。
ちなみに主従関係なのにヴァンだけが一方的に私語なのは、フリートが公的な場以外では敬語でなくてよいと命令したからだ。そのくせヴァンの敬語でなくていいという諫言は聞かないので、何か言うたびヴァンの胃が少し痛むのをフリートは知らない。
ともかく、彼を擁するフリート達はオークの巣討伐の為に行動を開始する。
「ヴァイルとミルトはヴァンさんと一緒に巣の中へ。奥まで入り込む必要はない。入口を固めてヴァンさんの援護に努めてくれ。他の俺を含めた四人は巣の入り口付近に陣取って外のオーク相手だ。……ケビン、土魔法で壁を」
「オケマル!」
ちなみに、オッケーはこの世界で通じる。英語が存在しないのに関わらず通じるのだ。疑問は抱いてはいけない。
ーーまあ元がゲームだしな、そんなもんだろう。……さて、これが終わればCランク。ここまではヴァンさんに頼る面もあったが、こっからは個々の力をもう1段階上げなきゃな。急いでBランク以上にする必要はないし、特訓か。
そう思いつつ、作戦開始の用意を整える。ケビンが巣の周りを大きく囲む土壁を作り、包囲の構えは完成した。
「ジャルク、ソザール、前衛は頼んだ」
巣外担当のうち、フリートは弓、ケビンは魔法士だ。故に護衛となる前衛が破られた場合、かなり辛い状況となることは必至。
「「任せな!」」
ーーまあ、大丈夫だろう。信じでるからな。
「おし、突入!」
土壁の入り口たる穴が、フリートたちを通した後塞がれる。内にいるはオークの群れ。
七人は巣たる洞穴の入り口となっている穴に向けて、一直線で突進した。
オーク二、三体をパーティで余裕をもって倒せるようになれば冒険者のDランクとして一人前と言われるが、現在オークの巣にいる個体数は目に見えるだけでも優に十体を超えている。通常Dランクパーティには荷が重い状況であるが、それを見てフリートは焦りもせずに頷いた。
「うん、探知魔法の通りだな。表に出ているのが十五体に巣の中の十七体。念の為偵察という体にはしてきたが、何とかなりそうだ」
その表情に驕りは無い。唯純然たる事実としてそう判断を下しているのだ。確かに、貴族としての英才教育の一環として武術を習った彼らは一般人よりはるかに強い。冒険者ギルドでF、Eランクを飛び級してDランクから始められたのも貴族は既にDランク相当の力があると判断されているためである。
それに加え、彼が判断を下した根拠は他にもある。フリートの存在? いいや。彼の知識による戦力強化は確かにあるが、流石に活動して一か月も経たずしてオークの集団相手に余裕を持てるほどではない。
根拠。あるいは自信と言い変えても良いが、それの源泉となっているのはある男の存在だ。
『revolues』攻略サイトにおいて付けられた二つ名は『剣聖』。
剣のみに生き、そして蔑まれ続けた男、ヴァン・ジルハート。それが彼の名前だ。
「大丈夫ですよね? ヴァンさん」
「ああ、問題ない。中にいるものは全て受け持とう。……それと、何度も行ったが俺のような男に敬語は不要だ。こんな剣にしか取り柄がないような男にはな」
「こっちも何度も言いますが、そう卑下するものじゃないと思いますよ。現にこうして頼らせてもらっているわけですし」
「……。そうか」
彼はフリートが真っ先に声をかけた人材だ。
現在どこにも所属してなく、またストーリーに極めて大きな影響を与える存在でもない。そうした条件下でしかも帝都の傭兵ギルドという近場にいたことがその理由の一つ。
そして理由の二つ目は、単純に彼の強さである。この世界において剣術とは、ただ単に剣を扱う技量だけではない。周囲の魔素を無意識化で操り、己の体や剣を極限まで強化する。それを含めてこの世界では剣術と呼ぶ。
『剣聖』というwiki称号が示す通りヴァンは凄腕の剣士である。だがにもかかわらず寂れた傭兵業をしていたのは全て彼に魔法的な才能が皆無だからに他ならない。剣術が冴えていようが、身体能力を強化できなければ地力で潰される。
かくして不遇な身であった彼だが、フリートはその強さをゲーム知識によって知っている。なに、原因が分かっているのなら対策は簡単な事。自分で強化できないのなら、他人に強化魔法を付与してもらえばいいのである。集団戦という制約は付くものの、たったそれだけでヴァンは強くなれる。幸いフリートは聖属性に少しだが適性がある。最低限の援護は可能だし、仲間にはもっと強い適性を持つものだっていた。
それすらも思いついてなかったのか? と少し不思議に思うフリートだが、ともかく強力な戦力がフリーであるのに逃す手はない。早速伯爵家当主である父上に願い出て、父上の前でヴァンに剣術を披露させることでフリート直属として雇うことを認めてもらえた。
ちなみに主従関係なのにヴァンだけが一方的に私語なのは、フリートが公的な場以外では敬語でなくてよいと命令したからだ。そのくせヴァンの敬語でなくていいという諫言は聞かないので、何か言うたびヴァンの胃が少し痛むのをフリートは知らない。
ともかく、彼を擁するフリート達はオークの巣討伐の為に行動を開始する。
「ヴァイルとミルトはヴァンさんと一緒に巣の中へ。奥まで入り込む必要はない。入口を固めてヴァンさんの援護に努めてくれ。他の俺を含めた四人は巣の入り口付近に陣取って外のオーク相手だ。……ケビン、土魔法で壁を」
「オケマル!」
ちなみに、オッケーはこの世界で通じる。英語が存在しないのに関わらず通じるのだ。疑問は抱いてはいけない。
ーーまあ元がゲームだしな、そんなもんだろう。……さて、これが終わればCランク。ここまではヴァンさんに頼る面もあったが、こっからは個々の力をもう1段階上げなきゃな。急いでBランク以上にする必要はないし、特訓か。
そう思いつつ、作戦開始の用意を整える。ケビンが巣の周りを大きく囲む土壁を作り、包囲の構えは完成した。
「ジャルク、ソザール、前衛は頼んだ」
巣外担当のうち、フリートは弓、ケビンは魔法士だ。故に護衛となる前衛が破られた場合、かなり辛い状況となることは必至。
「「任せな!」」
ーーまあ、大丈夫だろう。信じでるからな。
「おし、突入!」
土壁の入り口たる穴が、フリートたちを通した後塞がれる。内にいるはオークの群れ。
七人は巣たる洞穴の入り口となっている穴に向けて、一直線で突進した。
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