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第一章
第八話
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「み、皆さんお強いんですね……、 あれだけのオークこんなにも簡単に……!」
「ええ、一応冒険者として活動してるからには」
目を見開かせながら驚くアリシアに苦笑交じりの返答をする。
と言っても、実際のところ冒険者としてというよりは貴族としての英才教育の賜物なのだが、身分を明かすつもりのないフリートはそう誤魔化した。
「それにヴァンさんが居ますから。これが大きいですよ」
変に感謝されすぎるのは困る。フリートは革命の聖女というメインヒロインには深く関わりたくないからだ。
そのためフリートはアリシアをサラッとあしらうと、村の方向に足を向けた。
ーー数日かかるかと思ったが、案外すぐ終わったな。これなら今日中に帝都に……、は無理か。日がそろそろ沈みそうだ。
この世界での夜は危険だ。理由としては単純。明かりが安定しないからだ。地球のように電気が発明されていないこの世界では照明器具と言えば松明であり、いくら移動距離が短いとはいえそれではあまり頼りない。
「もう暗くなってきましたね……。フリートさんたちは村に止まって行くんですよね?」
「ええ。依頼は終わりましたが、もう暗くなってきてしまいましたので。元々依頼としては泊まり込みのものでしたし、どこかにお邪魔できればなと思ってます。まあ、最悪の場合は村の中でごろ寝ですかね」
「そんなことはさせませんよ! オークを倒してくださった方を外に放っておくことは出来ません。そんなことになったら、私が外に出るので私の家を使ってください!」
想像以上の反応に思わずフリートは目を見開かせる。
だって。
唯の冗談で言ったことだ。そんな反応をされるとは思ってもみなかったが、次いで流石は聖女だな、と感嘆する。
ーーゲームでは確かに優しいキャラだったが、現実でもやっぱりそうなんだな。それに、聖女だからってキャラ付けしたものでもなかったみたいだ。
「冗談ですよ、冗談」
「アリシアさん、フリートの冗談ってわかりにくいよねー! だって偶に本気で突拍子もないこと言いだすからね。どれが本気で冗談なのか全然分かんないよ」
ラングの茶々にフリートは顔を顰めた。
まあ、仕方がないことである。ゲーム知識や地球の知識によってフリートの常識はこの世界のそれとかなり乖離してしまっている。例えば、今の会話だって少し認識のずれがある。フリートにとって村、町の隅で寝ることは積極的にしたい事ではないが他に手が無ければしょうがない、という認識である。日本の記憶があるフリートは街の中は安全であると信じ切っている。故に鍵のかかっていないところで寝ることも出来るのだ。
それに対し、ラングやアリシアたちの認識は違う。なにせこの世界の治安はお世辞にも良いとは言えない。そもそも時代が中世風という時点で気付いてもよさそうなものだが、フリートはこのことをすっかり失念していた。ゲームでは町に不審者がいなかったのもあるかもしれない。
ともかくラングたちにとって野外で寝るとは相当のリスクを負う事であり、オークの巣という自分たちでは対処不能な問題を解決してくれた相手への所業ではない。
まあ、それはそれとして。
「ともかく村長さんにどこか泊れる場所がないか聞こう。アリシアさん、村に宿屋とかはあるんですか?」
「すいません、宿屋はないです。なにせ特に観光地も何もない村ですので……」
「あー……」
ーーそうですよね。
とは言えない。その代わりに苦笑いを浮かべ、戻ったら村長に聞けばいいだろうと、日が落ちる前に村へと帰還した。
* * *
ーーで、どうしてこうなるんだ……!?
依頼達成を報告した後に大人数の寝床となる場所がないかを聞いたところ、やはり宿屋もないこの村にそのような場所は無かった。そこでメンバーを分けて村人の家を借りることになったのだが。
「フリートさん、夕ご飯が出来ましたよー! いやあ、こうして家で誰かと晩御飯を食べるなんていつ振りでしょう。なんかドキドキしてきますね……!」
「はは、そうですね……」
ーードキドキじゃねえよ! 主人公より先にこんなことしちゃっていいのか!? クソ、フランのメンバーは全員おっさんと一緒の家なのになぜ俺だけがこんな状況に?
流石にそういう年齢の男女が同じ家に二人っきりというのは不味くないのかと村長には聞いたのだが、返答ははぐらかすような笑いだけだった。
ふぉっふぉっふぉ、という笑い声がフリートの頭で思い起こされる。
ーークソ爺め、殺す! ……はぁ、まあいいか。別に何をするわけでもないしな。ゲームでは知れなかった『革命の聖女』アリシアの過去の一端を知れるいい機会だと思おう。
「ちょっと今日は豪勢にしてみました。帝都に住んでいるフリートさんには大したことないかもしれませんけど、どうぞ召し上がってください!」
「ありがとうございます。ではいただきます」
どうぞ、と言われフリートはまず野菜料理から口に運ぶ。
ちなみにだが、この世界でも「いただきます」という言葉は存在している。理由は『revolues』の制作会社が日本の企業だから。
ーーうん、メッチャ旨いな。一人暮らしらしいけど、生活力半端ないんだろうなあ。
この後ベッドで寝るか床で寝るかの紛争が起きるとも知らず、フリートはただただご飯をおいしく食べていた。
「ええ、一応冒険者として活動してるからには」
目を見開かせながら驚くアリシアに苦笑交じりの返答をする。
と言っても、実際のところ冒険者としてというよりは貴族としての英才教育の賜物なのだが、身分を明かすつもりのないフリートはそう誤魔化した。
「それにヴァンさんが居ますから。これが大きいですよ」
変に感謝されすぎるのは困る。フリートは革命の聖女というメインヒロインには深く関わりたくないからだ。
そのためフリートはアリシアをサラッとあしらうと、村の方向に足を向けた。
ーー数日かかるかと思ったが、案外すぐ終わったな。これなら今日中に帝都に……、は無理か。日がそろそろ沈みそうだ。
この世界での夜は危険だ。理由としては単純。明かりが安定しないからだ。地球のように電気が発明されていないこの世界では照明器具と言えば松明であり、いくら移動距離が短いとはいえそれではあまり頼りない。
「もう暗くなってきましたね……。フリートさんたちは村に止まって行くんですよね?」
「ええ。依頼は終わりましたが、もう暗くなってきてしまいましたので。元々依頼としては泊まり込みのものでしたし、どこかにお邪魔できればなと思ってます。まあ、最悪の場合は村の中でごろ寝ですかね」
「そんなことはさせませんよ! オークを倒してくださった方を外に放っておくことは出来ません。そんなことになったら、私が外に出るので私の家を使ってください!」
想像以上の反応に思わずフリートは目を見開かせる。
だって。
唯の冗談で言ったことだ。そんな反応をされるとは思ってもみなかったが、次いで流石は聖女だな、と感嘆する。
ーーゲームでは確かに優しいキャラだったが、現実でもやっぱりそうなんだな。それに、聖女だからってキャラ付けしたものでもなかったみたいだ。
「冗談ですよ、冗談」
「アリシアさん、フリートの冗談ってわかりにくいよねー! だって偶に本気で突拍子もないこと言いだすからね。どれが本気で冗談なのか全然分かんないよ」
ラングの茶々にフリートは顔を顰めた。
まあ、仕方がないことである。ゲーム知識や地球の知識によってフリートの常識はこの世界のそれとかなり乖離してしまっている。例えば、今の会話だって少し認識のずれがある。フリートにとって村、町の隅で寝ることは積極的にしたい事ではないが他に手が無ければしょうがない、という認識である。日本の記憶があるフリートは街の中は安全であると信じ切っている。故に鍵のかかっていないところで寝ることも出来るのだ。
それに対し、ラングやアリシアたちの認識は違う。なにせこの世界の治安はお世辞にも良いとは言えない。そもそも時代が中世風という時点で気付いてもよさそうなものだが、フリートはこのことをすっかり失念していた。ゲームでは町に不審者がいなかったのもあるかもしれない。
ともかくラングたちにとって野外で寝るとは相当のリスクを負う事であり、オークの巣という自分たちでは対処不能な問題を解決してくれた相手への所業ではない。
まあ、それはそれとして。
「ともかく村長さんにどこか泊れる場所がないか聞こう。アリシアさん、村に宿屋とかはあるんですか?」
「すいません、宿屋はないです。なにせ特に観光地も何もない村ですので……」
「あー……」
ーーそうですよね。
とは言えない。その代わりに苦笑いを浮かべ、戻ったら村長に聞けばいいだろうと、日が落ちる前に村へと帰還した。
* * *
ーーで、どうしてこうなるんだ……!?
依頼達成を報告した後に大人数の寝床となる場所がないかを聞いたところ、やはり宿屋もないこの村にそのような場所は無かった。そこでメンバーを分けて村人の家を借りることになったのだが。
「フリートさん、夕ご飯が出来ましたよー! いやあ、こうして家で誰かと晩御飯を食べるなんていつ振りでしょう。なんかドキドキしてきますね……!」
「はは、そうですね……」
ーードキドキじゃねえよ! 主人公より先にこんなことしちゃっていいのか!? クソ、フランのメンバーは全員おっさんと一緒の家なのになぜ俺だけがこんな状況に?
流石にそういう年齢の男女が同じ家に二人っきりというのは不味くないのかと村長には聞いたのだが、返答ははぐらかすような笑いだけだった。
ふぉっふぉっふぉ、という笑い声がフリートの頭で思い起こされる。
ーークソ爺め、殺す! ……はぁ、まあいいか。別に何をするわけでもないしな。ゲームでは知れなかった『革命の聖女』アリシアの過去の一端を知れるいい機会だと思おう。
「ちょっと今日は豪勢にしてみました。帝都に住んでいるフリートさんには大したことないかもしれませんけど、どうぞ召し上がってください!」
「ありがとうございます。ではいただきます」
どうぞ、と言われフリートはまず野菜料理から口に運ぶ。
ちなみにだが、この世界でも「いただきます」という言葉は存在している。理由は『revolues』の制作会社が日本の企業だから。
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