10 / 19
第一章
第九話
しおりを挟む
「あ、そういえばフリートさん、探知魔法ってこんな感じであってますか?」
食事が終わり、不毛などこで寝るのか戦争も終結。両者ともに床で寝転んでいるところ、アリシアが唐突に尋ねてきた。なお、フリートとアリシアの距離は十分に開いているとだけ言っておこう。
「あー、うん。あってますね。あとはそこに工夫をーー」
ーーあん?
眠気で満ちる頭が急速に覚醒していく。
アリシアとしては唯オークの巣までの道中で話していたことの続きなのだが、内容がぶっ飛んでいることに本人は気付いていない。
確かにフリートは魔力感知の応用が探知魔法だとは言った。それは事実なのだが、実際のところそう単純でないことも事実だ。
そも探知魔法と魔力感知の決定的な違いは、魔力の関わらないものの感知にある。前者がこれを出来るのに対し、後者は出来ない。それをどう認知できるようにしていくかがこの魔法の肝心なところなわけであるが、まあ普通自力でその方法を思いつくことなどできない。勿論、魔法の体系に関して深い知識があれば別かもしれないだろう。だがアリシアは唯の村娘だ。今まで魔法とは無縁の生活をしてきているはずなのだ。
魔法はこの世界に存在するものだが、多くは貴族によって用いられている。冒険者ギルドによって冒険者には伝わっておりそこから民衆に多少の技術は伝わっているが、半ば孤立しているかのような世界である村落にギルドは無く、よって魔法技術もほとんど伝わることは無い。魔法というものがあるらしい、という認識を持っているのが関の山だ。
ーーいや、マジかよ。天才過ぎるにもほどがあるだろ……。まあ流石に工夫の仕方までは思いつかなかったらしいけどな。ったく、俺の家庭教師は遊び心が過ぎたんじゃないか? こんなの普通思いつかんだろうに。
勘違いである。だがその勘違いを是正するものはここにはいない。というか、疑問に思いながらも誰もフリートに指摘しないのでおそらく当分の間はこのままなのだろう。
しかし、ここに問題が一つ。アリシアの存在だ。フリートが特異的な技術を持っていても、彼は生き残ればいいという考えを持っているため今後の展開に大きく関わるつもりは今のところない。よってさした影響はなかったのだが、アリシアは異なる。彼女は確実に今後の動乱の中心人物になることが決まっている。そういう運命なのだ。故に影響が出る可能性が高い。例えば彼女のストーリーでは敵に奇襲を受けるシーンが存在している。それによって革命勢力が一時衰えたりもするのだが、この技術はその被害を十分に軽減させ得るものである。
だが勿論、フリートはそんなことに気付かない。勘違い過ぎるにもほどがある、というものである。
「えーと、ですね。探知魔法の原型としてはそれでいいんですが、実は有効範囲を格段に広げる技術があるんですよ」
確実にシナリオが曲がり始めているのだが、誰も気づくものはいない。
* * *
「ふう、これで一段落かな……」
「いやシグルド、何言ってんだお前。まだ1ページしか終わってねえじゃねえか」
学園内の図書館。中世風世界らしくこの世界では本というものは貴重品だ。理由は印刷技術がないことなどが挙げられるが、ともかく平民には生涯に数度しか触れることのない者もいる程度には貴重品である。故に本来は厳重に管理するのが普通なのだが、このリーク帝国第一学園では学生全員に対し自由に利用することが認められていた。
多くの学生はこれを利用しているのだが、もう一つ図書館には設備が存在する。所謂自習スペースだ。学生の本分たる勉学に励む場であり、定期試験の前には生徒で溢れかえることになる場でもある。
そんな場にシグルド、『revolues』の本来の主人公はいた。
「いや、でもこれ大分難しいんだけど。俺平民上がりだよ? 難しすぎるって」
平民上がりという割には話相手の貴族に砕けた態度で話している。勿論それ相応の関係だからではあるのだが、入学して1か月も経たずしてそれに慣れているのはなんとも図太い。
「それは分かるけどよお、お前あの入試をパスしてきてるんだろ? あとはやる気を出すだけだろ」
なるほどシグルドの口調がこうなる理由というのが大体見て取れる。
貴族にあるまじき口調でシグルドに返答するのはガラック・シンダル。伯爵の爵位を持つシンダル家の次男だ。長男ではないから口調の矯正は諦められたのか、それとも彼がただ端にそういう性格だったのか。どちらかは分からないがともかく、彼からは貴族というよりは冒険者に近い雰囲気が出ている。
ガラックは、平民出身ということもあり若干浮いていたシグルドに最初に声をかけた人物であり、今現在最も仲のいい級友だ。
「いやそうなんだけどさ……。はあ……、ねえ、冒険者ギルド行かない?」
「てめえが課題終わらせねえからいけないんだろうが! 俺だって行きたいのはやまやまだがお前が行けねえからこうして課題を手伝ってやってんだ。いいからとっとと終わらせろ!」
思わず怒鳴るガラック。言い分は全て正論である。唯それとは関係なく、ある一つの欠点を除いてだが。
「お二方、図書室ではお静かに」
近くの読書スペースで読書をする上級生の女子生徒だ。
「あ、はい……」
「そうだよ、ガラック」
「お前は黙って手を動かしてろ」
「……」
動乱の兆しはまだ見えていない。
彼らは平和な一日をまだ享受するのであった。半年後を契機に起こる内乱の、そのときまで。
食事が終わり、不毛などこで寝るのか戦争も終結。両者ともに床で寝転んでいるところ、アリシアが唐突に尋ねてきた。なお、フリートとアリシアの距離は十分に開いているとだけ言っておこう。
「あー、うん。あってますね。あとはそこに工夫をーー」
ーーあん?
眠気で満ちる頭が急速に覚醒していく。
アリシアとしては唯オークの巣までの道中で話していたことの続きなのだが、内容がぶっ飛んでいることに本人は気付いていない。
確かにフリートは魔力感知の応用が探知魔法だとは言った。それは事実なのだが、実際のところそう単純でないことも事実だ。
そも探知魔法と魔力感知の決定的な違いは、魔力の関わらないものの感知にある。前者がこれを出来るのに対し、後者は出来ない。それをどう認知できるようにしていくかがこの魔法の肝心なところなわけであるが、まあ普通自力でその方法を思いつくことなどできない。勿論、魔法の体系に関して深い知識があれば別かもしれないだろう。だがアリシアは唯の村娘だ。今まで魔法とは無縁の生活をしてきているはずなのだ。
魔法はこの世界に存在するものだが、多くは貴族によって用いられている。冒険者ギルドによって冒険者には伝わっておりそこから民衆に多少の技術は伝わっているが、半ば孤立しているかのような世界である村落にギルドは無く、よって魔法技術もほとんど伝わることは無い。魔法というものがあるらしい、という認識を持っているのが関の山だ。
ーーいや、マジかよ。天才過ぎるにもほどがあるだろ……。まあ流石に工夫の仕方までは思いつかなかったらしいけどな。ったく、俺の家庭教師は遊び心が過ぎたんじゃないか? こんなの普通思いつかんだろうに。
勘違いである。だがその勘違いを是正するものはここにはいない。というか、疑問に思いながらも誰もフリートに指摘しないのでおそらく当分の間はこのままなのだろう。
しかし、ここに問題が一つ。アリシアの存在だ。フリートが特異的な技術を持っていても、彼は生き残ればいいという考えを持っているため今後の展開に大きく関わるつもりは今のところない。よってさした影響はなかったのだが、アリシアは異なる。彼女は確実に今後の動乱の中心人物になることが決まっている。そういう運命なのだ。故に影響が出る可能性が高い。例えば彼女のストーリーでは敵に奇襲を受けるシーンが存在している。それによって革命勢力が一時衰えたりもするのだが、この技術はその被害を十分に軽減させ得るものである。
だが勿論、フリートはそんなことに気付かない。勘違い過ぎるにもほどがある、というものである。
「えーと、ですね。探知魔法の原型としてはそれでいいんですが、実は有効範囲を格段に広げる技術があるんですよ」
確実にシナリオが曲がり始めているのだが、誰も気づくものはいない。
* * *
「ふう、これで一段落かな……」
「いやシグルド、何言ってんだお前。まだ1ページしか終わってねえじゃねえか」
学園内の図書館。中世風世界らしくこの世界では本というものは貴重品だ。理由は印刷技術がないことなどが挙げられるが、ともかく平民には生涯に数度しか触れることのない者もいる程度には貴重品である。故に本来は厳重に管理するのが普通なのだが、このリーク帝国第一学園では学生全員に対し自由に利用することが認められていた。
多くの学生はこれを利用しているのだが、もう一つ図書館には設備が存在する。所謂自習スペースだ。学生の本分たる勉学に励む場であり、定期試験の前には生徒で溢れかえることになる場でもある。
そんな場にシグルド、『revolues』の本来の主人公はいた。
「いや、でもこれ大分難しいんだけど。俺平民上がりだよ? 難しすぎるって」
平民上がりという割には話相手の貴族に砕けた態度で話している。勿論それ相応の関係だからではあるのだが、入学して1か月も経たずしてそれに慣れているのはなんとも図太い。
「それは分かるけどよお、お前あの入試をパスしてきてるんだろ? あとはやる気を出すだけだろ」
なるほどシグルドの口調がこうなる理由というのが大体見て取れる。
貴族にあるまじき口調でシグルドに返答するのはガラック・シンダル。伯爵の爵位を持つシンダル家の次男だ。長男ではないから口調の矯正は諦められたのか、それとも彼がただ端にそういう性格だったのか。どちらかは分からないがともかく、彼からは貴族というよりは冒険者に近い雰囲気が出ている。
ガラックは、平民出身ということもあり若干浮いていたシグルドに最初に声をかけた人物であり、今現在最も仲のいい級友だ。
「いやそうなんだけどさ……。はあ……、ねえ、冒険者ギルド行かない?」
「てめえが課題終わらせねえからいけないんだろうが! 俺だって行きたいのはやまやまだがお前が行けねえからこうして課題を手伝ってやってんだ。いいからとっとと終わらせろ!」
思わず怒鳴るガラック。言い分は全て正論である。唯それとは関係なく、ある一つの欠点を除いてだが。
「お二方、図書室ではお静かに」
近くの読書スペースで読書をする上級生の女子生徒だ。
「あ、はい……」
「そうだよ、ガラック」
「お前は黙って手を動かしてろ」
「……」
動乱の兆しはまだ見えていない。
彼らは平和な一日をまだ享受するのであった。半年後を契機に起こる内乱の、そのときまで。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる