気付いたら、ゲーム世界の顔グラも無いモブだった

玄月白兎

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第一章

第九話

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「あ、そういえばフリートさん、探知魔法ってこんな感じであってますか?」

 食事が終わり、不毛などこで寝るのか戦争も終結。両者ともに床で寝転んでいるところ、アリシアが唐突に尋ねてきた。なお、フリートとアリシアの距離は十分に開いているとだけ言っておこう。

「あー、うん。あってますね。あとはそこに工夫をーー」

ーーあん?

 眠気で満ちる頭が急速に覚醒していく。
 アリシアとしては唯オークの巣までの道中で話していたことの続きなのだが、内容がぶっ飛んでいることに本人は気付いていない。
 確かにフリートは魔力感知の応用が探知魔法だとは言った。それは事実なのだが、実際のところそう単純でないことも事実だ。
 そも探知魔法と魔力感知の決定的な違いは、魔力の関わらないものの感知にある。前者がこれを出来るのに対し、後者は出来ない。それをどう認知できるようにしていくかがこの魔法の肝心なところなわけであるが、まあ普通自力でその方法を思いつくことなどできない。勿論、魔法の体系に関して深い知識があれば別かもしれないだろう。だがアリシアは唯の村娘だ。今まで魔法とは無縁の生活をしてきているはずなのだ。
 魔法はこの世界に存在するものだが、多くは貴族によって用いられている。冒険者ギルドによって冒険者には伝わっておりそこから民衆に多少の技術は伝わっているが、半ば孤立しているかのような世界である村落にギルドは無く、よって魔法技術もほとんど伝わることは無い。魔法というものがあるらしい、という認識を持っているのが関の山だ。

ーーいや、マジかよ。天才過ぎるにもほどがあるだろ……。まあ流石に工夫の仕方までは思いつかなかったらしいけどな。ったく、俺の家庭教師は遊び心が過ぎたんじゃないか? こんなの普通思いつかんだろうに。

 勘違いである。だがその勘違いを是正するものはここにはいない。というか、疑問に思いながらも誰もフリートに指摘しないのでおそらく当分の間はこのままなのだろう。
 しかし、ここに問題が一つ。アリシアの存在だ。フリートが特異的な技術を持っていても、彼は生き残ればいいという考えを持っているため今後の展開に大きく関わるつもりは今のところない。よってさした影響はなかったのだが、アリシアは異なる。彼女は確実に今後の動乱の中心人物になることが決まっている。そういう運命シナリオなのだ。故に影響が出る可能性が高い。例えば彼女のストーリーでは敵に奇襲を受けるシーンが存在している。それによって革命勢力が一時衰えたりもするのだが、この技術はその被害を十分に軽減させ得るものである。
 だが勿論、フリートはそんなことに気付かない。勘違い過ぎるにもほどがある、というものである。

「えーと、ですね。探知魔法の原型としてはそれでいいんですが、実は有効範囲を格段に広げる技術があるんですよ」

 確実にシナリオが曲がり始めているのだが、誰も気づくものはいない。


   * * *


「ふう、これで一段落かな……」
「いやシグルド、何言ってんだお前。まだ1ページしか終わってねえじゃねえか」

 学園内の図書館。中世風世界らしくこの世界では本というものは貴重品だ。理由は印刷技術がないことなどが挙げられるが、ともかく平民には生涯に数度しか触れることのない者もいる程度には貴重品である。故に本来は厳重に管理するのが普通なのだが、このリーク帝国第一学園では学生全員に対し自由に利用することが認められていた。
 多くの学生はこれを利用しているのだが、もう一つ図書館には設備が存在する。所謂自習スペースだ。学生の本分たる勉学に励む場であり、定期試験の前には生徒で溢れかえることになる場でもある。
 そんな場にシグルド、『revolues』の本来の主人公はいた。

「いや、でもこれ大分難しいんだけど。俺平民上がりだよ? 難しすぎるって」

 平民上がりという割には話相手の貴族に砕けた態度で話している。勿論それ相応の関係だからではあるのだが、入学して1か月も経たずしてそれに慣れているのはなんとも図太い。

「それは分かるけどよお、お前あの入試をパスしてきてるんだろ? あとはやる気を出すだけだろ」

 なるほどシグルドの口調がこうなる理由というのが大体見て取れる。
 貴族にあるまじき口調でシグルドに返答するのはガラック・シンダル。伯爵の爵位を持つシンダル家の次男だ。長男ではないから口調の矯正は諦められたのか、それとも彼がただ端にそういう性格だったのか。どちらかは分からないがともかく、彼からは貴族というよりは冒険者に近い雰囲気が出ている。
 ガラックは、平民出身ということもあり若干浮いていたシグルドに最初に声をかけた人物であり、今現在最も仲のいい級友だ。

「いやそうなんだけどさ……。はあ……、ねえ、冒険者ギルド行かない?」
「てめえが課題終わらせねえからいけないんだろうが! 俺だって行きたいのはやまやまだがお前が行けねえからこうして課題を手伝ってやってんだ。いいからとっとと終わらせろ!」

 思わず怒鳴るガラック。言い分は全て正論である。唯それとは関係なく、ある一つの欠点を除いてだが。

「お二方、図書室ではお静かに」

 近くの読書スペースで読書をする上級生の女子生徒だ。

「あ、はい……」
「そうだよ、ガラック」
「お前は黙って手を動かしてろ」
「……」


 動乱の兆しはまだ見えていない。
 彼らは平和な一日をまだ享受するのであった。半年後を契機に起こる内乱の、そのときまで。
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