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契約と仕事の始まり

契約と仕事の始まり4

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 聖壱さんが私の事を心配して言ってくれてるのは分かる。だからって、そんなに過保護にならなくても……

「貴方が私の事を気にしてくれるのは嬉しいわ。だけど、私だって大人の女なのよ?自分の事は自分で何とか出来るつもりよ。」

「分かってる、香津美は強い女性だ。それでも……お前の事は俺が守りたい。」

 守りたい?気が強くて性悪女だとばかり言われるような、こんな私を?聖壱さんの瞳を見つめ返すけれど、まっすぐな彼の眼は嘘をついているとは思えない。

「私は、守ってもらうほど弱くは……」

 何度か周りの人に言われたことがあるわ。「香津美さんは強いから一人で大丈夫だね。」と。強い私は守ってもらう訳にはいかないの。

「そうじゃない、俺にとって香津美が強いか弱いかは関係ない。お前の事が好きだから守りたい、それだけだ。」

 聖壱さんは今まで私が言われてきたことと反対の事ばかり言ってくるの。嫌われてばかりの私を気に入り、危険な事はするなと怒る。そして今度は、今まで守る必要はないと言われてきた私を守りたいなんて……

「そんな事言われても……困るわ。」

 こういう時、私は素直に「嬉しい」とか「ありがとう」が言えないの。私は今まで強がって「一人で大丈夫」だと言い続けてきたから。

「夫が愛する妻を守りたい、これは当たり前のことだ。ゴチャゴチャ言わずに香津美も少しくらいは俺に守られてろ。」

 私の大嫌いな命令形なのに、胸がキュウってなるのはどうして?私も本当はこうやって誰かに守られたかったの?




「え、偉そうに言わないでっていつも言ってるでしょ?私は別に貴方に守られなくったって……きゃっ!」

 こんなに言ってくれてる聖壱さん相手でも、やっぱり素直になれない。
 だけどいつものように可愛くない返事をしていた途中、聖壱さんがいきなり私のスーツのジャケットの中に手を入れてきたの!

「やはり俺にキチンと教えられないと言う事を聞く気が無いって事でいいんだな、香津美?」

 聖壱さんの射貫くような瞳に見つめられ、さすがの私も体が震えた。この人……本気で私を躾ける気だわ。
 腰のラインをゆっくりとなぞって少しずつ上へと進んでいく聖壱さんの両手。身体を他人に触られることがほとんどなかった私は、その感覚に戸惑い泣きたくなってしまう。

「聖壱さ…んっ!こんな事は……」

「俺に守られるって言え、香津美。言うまで、終わらないぞ?」

 シャツの上から大きな手が少しずつ胸のふくらみに近付いて来る。どうすればいい?何といえば聖壱さんを止められる?
 とうとう彼の指が私のシャツのボタンを外しにかかった、その時――――

【コンコン、カチャリ……】

 社長室のドアがノックされ、こちらの返事を待たずにそのまま開かれた。

「……何をしてるんですか、聖壱。僕はここをお前の仕事場だと記憶していましたが?」


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