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契約と新妻の自覚

契約と新妻の自覚3

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 聖壱さんの唇が私の首筋をなぞる、私の反応を確かめるようにゆっくりと。彼の吐息が耳朶をかすめて背中がゾワゾワするの、こんなの絶対気持ちいいことなんかじゃない。
 これから彼に触れられると思うと、緊張で身体が固まってしまう。

「香津美、そんなに俺を怖がるな。少し香津美の身体に触れるだけだから。」

 聖壱さんの言葉に、私はブンブンと首を振る。聖壱さんのことは怖くないけれど、身体をに触れられるのは怖い。まだ知らない自分を貴方に暴かれてしまいいそうな気がするの。

「や……っ、待って……お願い……」

 今まで誰かにこんな事を頼んだことなんてないかもしれない。私はお嬢様育ちというこのプライドの高さ以外、何も持ってなかったから。

「香津美のそんな顔、凄くそそられる……」

 私のお願いは聞いてもらえず、聖壱さんは私のシャツのボタンを外してしまう。はらりと左右に開かれたシャツ、私の白い肌を聖壱さんにじっぐりと見られていて……

「そんなに、見ないで……」

 両腕で隠したいのに、隠すことは許されない。緊張で荒くなる呼吸も、震える胸も全部聖壱さんにはバレているはず。

「香津美は顔だけじゃなく身体まで美しいんだな。本当に夫になる男が俺で良かった……」

 恥ずかしくて、顔が紅潮していくのが自分でもわかる。そりゃあ、私だって夫となった人が聖壱さんで良かったとは思うけれど。




「どうせ性格は美しくないですからね、外見だけの女で悪かったわね!」

 ほら、私の口からはこんな可愛くない言葉しか出てこないのよ。せっかく聖壱さんが容姿だけでも褒めてくれているのに。

「香津美の性格は美しいというより、可愛らしい……だな。お前のそういう拗ねた様子も、俺を喜ばせるだけだぞ?」

 私の生意気な言葉に腹を立てるどころか喜ぶなんて、やっぱり聖壱さんってどこか変よ。今まで私に近付いてきた男性は、皆怒って去っていったというのに……

「貴方、おかしいわ。絶対に……あっ……!」

 胸の谷間にそっと口付けられて、驚き戸惑ってしまう。彼が顔を上げると白い肌にくっきりと赤い痕が付けられていて。
 これってもしかして、何度か聞いた事のあるアレ?

「俺がおかしくなるのは香津美のせいだろ?まあ、ちゃんとお前に責任取ってもらうつもりだけどな。」

 ちょっと待ってよ、私は何もしてないじゃない!「責任取って」って、聖壱さんはいったい私に何をさせる気なのよ?

「こ、キスマークこんなモノを付けておいて、まだ私に何かしろっていうの?胸だってどこの男にも見せたこと無かったのに……!」

 どれだけ私が恥ずかしい思いをしてると思ってるの?

「へえ、どこの男にもね……」

 だけど私は文句を言えばいうほど、なぜか聖壱さんを喜ばせてしまうだけで……彼はもっと私の胸に自分の痕を残そうとしてくるの。




 私は聖壱さんから逃れようと必死で身を捩る。すると彼の指先が私の下着に引っ掛かって……気付いたら白い膨らみが露わになってしまっていたの。

「きゃあ!見ちゃダメ!」

 そう叫んだ時にはもう遅くて、聖壱さんは胸を隠そうとする私の両手首を掴んでしまう。信じられないわ、私も悪かったと思うけれどいくら何でもやりすぎよ!
 誰にも見せたことのない場所をジッと見られるなんて、堪らなく恥ずかしい。私が聖壱さんから目を逸らすと、聖壱さんは大きく息を吐いてから自分の上着を脱ぎ始めた。

 待ってよ、私はまだそんな心の準備が……!

 そう思って目を瞑ると、私の身体の上にパサリと何かがかけられて……ゆっくりと目を開くとそれは聖壱さんが脱いだはずのスーツの上着。

「やりすぎて香津美に嫌われたら困る。でも今度同じような危険な事をしたら、次は手加減してやらないからな?」

 私の頭をクシャッと撫でて、彼は一人でバスルームへと行ってしまった。嫌われたら困るのに、次は手加減してくれないだなんて矛盾してるんじゃないの?
 そこまでして守りたい存在だっていうの、こんな性悪女の私が?

「本当に、変な人だわ……でも、やっぱり嫌いにはなれないかも。」

 聖壱さんが私を追い詰める時は、だいたい私のためであって……それでも私が怖がる前にちゃんと止めてくれる。彼が本当はそんな優しい夫だと分かってきたから。


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