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攫われて始まる新婚生活とは
第二話
しおりを挟む自分が想像してしまったものがとんでもない間違いだった事に気付き、琴は恥ずかしさで顔を真っ赤に染める。今さら違うと言っても勘のいい加瀬を誤魔化す事なんで出来ない、本当に穴があれば入りたい気分だった。
「残念ながらそういう事に関しては、俺は相手を優しく大事にしたいタイプなんだ。それで不満に感じさせない自信もある」
「き、聞いてませんよ! そんな事は!」
加瀬の発言に琴は耳を塞いでしまいたい衝動に駆られる。余計な一言で未知の世界を嫌でも生々しく想像させられ堪ったものではない。
自信があるのは結構だが、その話をする相手は選んでもらいたいと琴は思う。
「あんたが聞かなきゃ誰が聞くんだ? それともまさか結婚早々、俺に浮気でも勧める気じゃないだろうな?」
つまり、加瀬は自分の相手をするのは琴だから話しているのだと言っているらしい。浮気云々のとこから妙に彼の声が低くなったのは琴の気のせいではないはずだ。
「浮気は……してほしくありません。だけど、まだそういう話は……」
結婚したのだから覚悟を決めなければならないのだろうが、琴はまだそこまで気持ちがついて来ていない。加瀬に対して感謝はしているが、恋愛感情があるかと聞かれたらまだ答えが出ない。
「ふうん、浮気は嫌なんだ? まあ、あんたにしては素直に言えた方かな。それと……別に急かす気はないが、いつまでも我慢してやるつもりもないから少しは覚悟はしていたがいい」
そう言いながら加瀬は意外と満足気な笑みを浮かべる、琴の口から嫉妬のような言葉が出たのか嬉しいのか、彼はそんな琴の頭を優しく撫でる。
それでもしっかりとこれから先の事も計画してそうな彼の言葉に、琴は困ったように頷くしかない。まだ時間をくれるというだけでも有難いのだ、その間に加瀬の事を想えるようになれば……と琴は思う。
「さて、疲れただろ? 琴は先に風呂に入ってくればいい、俺は近くのスーパーで少し買い物をしたいしな」
「お買い物? 私も行きたいです!」
さっきの話題が終わりお風呂と言われてホッとしたが、その後の買い物と言う言葉に琴は大きく反応した。旅館の傍にあった小さなスーパーに行くことが多かった彼女は、この街にどんなお店があるのか興味深々だったようで……
「分かったから先に風呂に入ってこい、待っててやるから」
「絶対ですよ、待っててくれないと怒りますからね? 加瀬さん」
そう言って琴はバタバタと浴室に向かう琴の後ろ姿を見て、加瀬は大きなため息をついた。
「志翔って呼べって言ってるだろ、全く……」
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