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turning point
話をしよう? ①
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「それで?」
ショーティはそう問いかけた。
お茶を飲んでいたアーネストはため息を一つつくと、
「仕事だよ」
そう答える。
「それはわかってる」
あんなキスを仕掛けておいて、女性とのスキャンダルだのなんだのと騒ぐつもりはない。
「たださぁ。なんで言ってくれないのかなって」
嫌味を含んでいるのは否めない。
「……君が傍にいたら、僕は甘えてしまうよ…。それに…これは僕が一人でしなければならなかったし……。君だって仕事の内容は僕に話さないだろう?」
「僕は出掛けることと行き先は言ってる。それに今は僕じゃなくてアーネストのことだよ。
………だいたい仕事ならなんでもありってこと?じゃあ同じようなこと僕がしたってアーネストは何も思わない?…それとも僕は傷つかないって……僕だから平気だとでも思った?」
「違う!そんなことは思っていない…。今回のことは君が帰ってくるくらいに成功したか否かわかるから…それをふまえて君に報告する…」
「成功するに決まってるじゃないか!あのサリレヴァントの社長が顔だけで務まるなんて誰も思っちゃいないよ。皆アーネストのそんな確立も踏んでんだよ!そんなこと知らないの、アーネストくらいだよ!!」
「ショーティ…………」
「今回のこと!」
名を呼びかけたアーネストとほとんど同時に口を開いたショーティは、自分を落ち着かせるように前髪をかきあげ、きつい視線で目の前の愛しい青年をみつめた。
「仕事だって言ったよね? はじめっから計画してた?……僕が火星に行く前から?」
強く、激しい視線のまま尋ねると、
「…Yes」
短く頷くアーネストのその響きの綺麗さに、思わず、かーっと頭に血が昇る。
『何か企んでない?』
火星に行く前に、送り出される前にそう尋ねたのはショーティ自身であった。あの時、アーネストは何と答えたか!
「じゃあ!ちゃんと話してよ!スキャンダルが出るかもしれないくらい予測ついたよね!?……それ込みで半年ってことだよね!?」
あんな誰とも知れない奴の書いた記事に翻弄されるくらいなら、ちゃんとアーネストの口から先に聞きたかった。全てを話せなどと言わない。話さないこともあると十分理解しているつもりだ。
「だいたい!大好きな人に早く会いたいと思ったらいけないかな。僕は必死だったのに!
そもそもアーネストがちゃんと話をしてくれていれば、あと1ヶ月くらいおとなしく火星にいたよ!ちゃんと話してよ。仕事だってなんだって。僕はアーネストの一番の理解者でいたいんだよ。迷惑かけたくないし、足手まといになんて絶対になりたくない……」
言いながら、不意に口ごもるのは二人が一緒に住みだしたきっかけにもなった事件だ。ああ、あれも拉致だったなぁと思わず勢いを削がれてしまい、
「…つもりではいる」とどうにも覇気のない言い方になってしまう。けれど、ここでひるんだら今までの繰り返しだ。言いたいことを言わないと先に進めない。
「ショーティ」
「アーネストの笑顔も香りも喜怒哀楽だって!全て、ぜーんぶ!僕のものなの!!髪の毛一本だって譲るつもりはないよ!!わかってる!?…なのに、あんな写真見せられて僕がどんな思いで……って、アーネスト!?」
怒りのあまり叫ぶだけ叫んだショーティは、小さく口元を押さえているアーネストの様子にようやく気付き、怪訝にその名を呼んだ。
大切な話をしているのに、もしかしてアーネスト、笑ってる?
疑惑は確定に変り、ショーティは椅子を鳴らすように立ち上がった。
話しをしてもわかってくれないなら、あとの手段は部屋に引き篭もるのみだ。
確かに5ヶ月前、そう言った。言い放った。宣言した。
それを実行するためにそう決心をしたように、ショーティはアーネストにくるりと背中を向けた。
ショーティはそう問いかけた。
お茶を飲んでいたアーネストはため息を一つつくと、
「仕事だよ」
そう答える。
「それはわかってる」
あんなキスを仕掛けておいて、女性とのスキャンダルだのなんだのと騒ぐつもりはない。
「たださぁ。なんで言ってくれないのかなって」
嫌味を含んでいるのは否めない。
「……君が傍にいたら、僕は甘えてしまうよ…。それに…これは僕が一人でしなければならなかったし……。君だって仕事の内容は僕に話さないだろう?」
「僕は出掛けることと行き先は言ってる。それに今は僕じゃなくてアーネストのことだよ。
………だいたい仕事ならなんでもありってこと?じゃあ同じようなこと僕がしたってアーネストは何も思わない?…それとも僕は傷つかないって……僕だから平気だとでも思った?」
「違う!そんなことは思っていない…。今回のことは君が帰ってくるくらいに成功したか否かわかるから…それをふまえて君に報告する…」
「成功するに決まってるじゃないか!あのサリレヴァントの社長が顔だけで務まるなんて誰も思っちゃいないよ。皆アーネストのそんな確立も踏んでんだよ!そんなこと知らないの、アーネストくらいだよ!!」
「ショーティ…………」
「今回のこと!」
名を呼びかけたアーネストとほとんど同時に口を開いたショーティは、自分を落ち着かせるように前髪をかきあげ、きつい視線で目の前の愛しい青年をみつめた。
「仕事だって言ったよね? はじめっから計画してた?……僕が火星に行く前から?」
強く、激しい視線のまま尋ねると、
「…Yes」
短く頷くアーネストのその響きの綺麗さに、思わず、かーっと頭に血が昇る。
『何か企んでない?』
火星に行く前に、送り出される前にそう尋ねたのはショーティ自身であった。あの時、アーネストは何と答えたか!
「じゃあ!ちゃんと話してよ!スキャンダルが出るかもしれないくらい予測ついたよね!?……それ込みで半年ってことだよね!?」
あんな誰とも知れない奴の書いた記事に翻弄されるくらいなら、ちゃんとアーネストの口から先に聞きたかった。全てを話せなどと言わない。話さないこともあると十分理解しているつもりだ。
「だいたい!大好きな人に早く会いたいと思ったらいけないかな。僕は必死だったのに!
そもそもアーネストがちゃんと話をしてくれていれば、あと1ヶ月くらいおとなしく火星にいたよ!ちゃんと話してよ。仕事だってなんだって。僕はアーネストの一番の理解者でいたいんだよ。迷惑かけたくないし、足手まといになんて絶対になりたくない……」
言いながら、不意に口ごもるのは二人が一緒に住みだしたきっかけにもなった事件だ。ああ、あれも拉致だったなぁと思わず勢いを削がれてしまい、
「…つもりではいる」とどうにも覇気のない言い方になってしまう。けれど、ここでひるんだら今までの繰り返しだ。言いたいことを言わないと先に進めない。
「ショーティ」
「アーネストの笑顔も香りも喜怒哀楽だって!全て、ぜーんぶ!僕のものなの!!髪の毛一本だって譲るつもりはないよ!!わかってる!?…なのに、あんな写真見せられて僕がどんな思いで……って、アーネスト!?」
怒りのあまり叫ぶだけ叫んだショーティは、小さく口元を押さえているアーネストの様子にようやく気付き、怪訝にその名を呼んだ。
大切な話をしているのに、もしかしてアーネスト、笑ってる?
疑惑は確定に変り、ショーティは椅子を鳴らすように立ち上がった。
話しをしてもわかってくれないなら、あとの手段は部屋に引き篭もるのみだ。
確かに5ヶ月前、そう言った。言い放った。宣言した。
それを実行するためにそう決心をしたように、ショーティはアーネストにくるりと背中を向けた。
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