精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護045 双子山のペガサス

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精霊の加護
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№45 双子山のペガサス

 ポリーナを出て、風の谷に入った。長い年月を掛けて山を削り、風の谷を作った谷底の川に沿って川岸を登って行く。
 道がないので当然、俺たちの移動は徒歩だ。こう言うときカルメンさんの支援魔法は非常にありがたい。

 精霊たち5人と聖獣ユニコーンのスノウは、その特性を生かして浮遊しながら移動している。

 スノウはその名の通り純白で、ユニコーンであることを隠すため、ユニコーンの特徴である角を、幻惑の術で隠している。ベスさんの愛馬の生まれ変わりで、まだ1歳馬のため、重騎士で重装備のベスさんを乗せるにはまだ早い。もう少し馬体がしっかりしてからだ。

 風の谷と、谷を構成する両横の双子山、東山と西山は樹海である。南部のさらに南の島であるため、樹海を構成する樹々は高く生い茂っている。俺たちが遡上して行く川の周囲の川岸部だけ、辛うじて樹海が途切れている。

 俺たちは昼休憩を取って、昼餉を摂った。来た道を振り返ると、ポリーナの村がそれなりに小さくなっており、そこそこ登って来たことを実感する。

 今は昼で、外洋からの海風が吹いてるのだが、この海風は進行方向に対して、そこそこ勢いのある向かい風だ。
 向かい風の山登りはきつい。カルメンさんの支援魔法のバフの術で身体能力が上昇してなければ、もうへばっていたと思う。もちろん休憩時のジュヌさんの回復魔法も同じくらいありがたい。

 途中、何度か野生の獣や魔物に出会った。もちろん、リーゼさんの攻撃魔法、ベスさんの盾による防御と槍の攻撃、ビーチェさんの華麗な刀術剣舞、そして俺の精霊魔法であっさり撃退した。
 討伐した獲物はすべて、東部公爵様から下賜された異空間収納袋にしまい込んだ。ポリーナに戻ったら売るのだ。

 風の特大精霊にすぐ会えなければ、何日かは風の谷を奥へ奥へと進むことになる。そうなると、普通は野営をすることになって交代での見張りになる。
 しかし、夜行性の獣は凶暴なのが多いのと、暗くて見張りには適さない。さらに、夜は本土からの陸風になって追い風になるから、夜に休むのではなくて、昼に休んで、夜に探索した方がいいような気がして来た。思い切って皆に提案してみるか。

「あのさ、探索だけど、夜にしない?」
「「「「え?」」」」
「昼は向かい風だけど夜は追い風だよね。それと、夜行性の獣は凶暴なのが多いから、夜は寝るよりも活動した方がいいんじゃないかな?」
「ふむ。確かに一理あるな。」
「じゃぁ午後はお休みしますの?」
「でもまだ眠くはないわね。」
「順に見張りをして仮眠を取ろうよ。精霊たちがいるから大丈夫だとは思うけど、念のため見張りはいた方がいいと思うんだ。」

 結局、俺の提案が通って、午後はそのまま休息して仮眠、夜に探索と言うことになった。お姉様方が眠くないと言うので、言い出しっぺの俺が、精霊たちと一緒に先に休むことになった。

 ツリの精霊魔法で草を大量に生産し、クレの精霊魔法で土を盛り上げて草を囲い、外からフィアの精霊魔法で熱を送ると、いい塩梅で干し草ができた。
 昼過ぎなので、まだ眠くはなかったが、たっぷりの干し草の簡易ベッドに体を潜り込ませて、眼を瞑るとうつらうつらして来た。精霊たちも干し草に潜り込んで来た。

 15時になって起こされ、お姉様方と見張りを交代した。精霊たちの索敵能力は非常に高いので、俺ひとりでも見張りは務まる。結局そのまま何もなく、時間は過ぎて行った。冬だから17時を回るとだんだん暗くなって来る。

 そろそろ皆を起こして出発しようかと言うとき、スノウが落ち着かな気に前脚を掻き出した。珍しくイライラしてるようだ。
 起きて来たベスさんがすかさずスノウを宥めるが、なかなか落ち着かない。これも珍しい。ってか、今まで、こんなことなかった。
「ゲオルクどの、スノウが警戒しろと言っている。」
 ベスさんはスノウと強い絆で結ばれているので、意思疎通ができるのだ。

 実は、スノウの正体は、聖獣のユニコーンであるため、俺もスノウと念話で意思疎通ができる。俺はスノウに話し掛けた。
「スノウ、どうしたんだ。」
『ゲオルク、何者かに、見張られている。』
「魔物か?」
『違う。聖獣かもしれないが、ユニコーンではない。』
「敵か?」
『敵意は感じないが、友好的でもない。こちらを警戒している。』

 俺は精霊たちに声を掛けた。
「この辺りに風の特大精霊はいるかな?」
『『『『『いない。』』』』』
「じゃあ、聖獣はいる?」
『『『『『いる。』』』』』
「どこに?」
『『『『『山。』』』』』え?双子山か?

「東山と西山のどっち?」
『『『『『両方。』』』』』
「何体くらいか分かる?」
『『『『『たくさん。』』』』』
「聖獣の正体は分かる?」
『『『『『ペガサス。』』』』』
「え?ペガサスって翼の生えた馬?」
『『『『『そう。』』』』』

 うーん、警戒してはいるようだが敵意はないと言うし、このまま無視して進むかな?それともコンタクトを試みるか?いや、待てよ。ここがペガサスの縄張りなら風の特大精霊と共存してるってことになるな。それなら風の特大精霊の居場所を知ってる可能性もあるぞ。
 よし、コンタクトを取ろう。俺は念話を送ることにした。

『俺はゲオルク、ペガサスさんだよね?』
『『『『『…。』』』』』返事がない。
『脅かしてたらごめん。ここは君たちの縄張りなのかな?』
『『『『『…。』』』』』やはり返事がない。
『君たちに危害を加えるつもりはないよ。返事をして。』
『『『『『…。』』』』』うーん、ダメか。
『俺たちは風の特大精霊に会いに来たんだ。』
『『『『『…。』』』』』『!』お、反応した奴が1頭いるな。
『返事がないけど、ダメとも言われてないから通るよ。』
『『『『『…。』』』』』

「警戒はされてるけど、敵意はないみたいだし進もう。」俺は仲間たちにそう告げた。

 俺たち一行はそのまま、川岸を風の谷の奥に向かって進んだ。夜になって、本土からの陸風が吹いて来るので、背中を押される感じで登りが楽だ。もちろんカルメンさんの支援魔法のバフの術が効果的だ。

 精霊たちが交代でまわりを警戒している。何度か、敵意ある魔物に出くわしたが、精霊からの的確な索敵情報と精霊魔法で排除した。

 深夜になった。日が暮れてから出発して今は3回目の休憩中である。休憩の度にペガサスへの交信を試みているが返事はない。でも、他の奴らが『…。』の中で、たまに『!』と反応する奴が1頭だけいる。
 よし、精霊たちにコンタクトをさせてみよう。

「ペガサスと話したいんだけど、さっぱり答えてくれない。ペガサスの所に行って話して来てくれない?」
『『『『『うん。』』』』』
「じゃぁ、ツリとチルは東山、クレとワラは西山、フィアはお留守番でまわりの警戒。いい。」
『『『『はーい。』』』』『えー。』フィアだけぶー垂れた。行きたいらしい。笑
「コンタクト取れたら念話で連絡して。」
『『『『OKー。』』』』『フィアだけお留守番。つまんなーい。』
「ごめんなー、こっちの警戒も大切だからさー。」

 すぐに東山と西山が慌ただしくなった。決してドタバタ騒がしい訳ではないのだが、気配が右往左往しているのだ。そして精霊たちの念話が響いて来る。
『待てー。』
『ゲオルクの所に来ーい。』
『逃がさないよー。』
『言うことを聞けー。』
 なんかやばい気がする。汗
「おーい、無理やり追っ掛けちゃだめだぞー。」

『話が違うじゃないか!』知らない気配の念話が飛んで来た。
『え?君は誰?』念話で応じる。
『僕はペガサスのミッドナイト。危害を加えない。通るだけだ。って言ってたのに!』僕ってことは女…じゃなくて牝馬?
『そのつもりだけど。』
『じゃぁ、なんで君の仲間の精霊たちが、群れの皆を追い掛け回すんだよ!』
 あちゃー、やっちまったか…。

 ミッドナイトによると、精霊たちに追い掛け回されたペガサスの群れが、パニックに陥って、東山と西山の間を飛び交ってるらしい。仕方ない。奥の手だ。
「フィア、頼む。」
『OKー。』
 ひゅーーーー…ドーン!夜空に赤い大輪が咲いた。フィアの打ち上げ花火だ。
 花火の光に照らされて、多くのペガサスのシルエットが夜空に浮かび上がった。結構な数がいるなぁ。

「ツリ、クレ、チル、ワラ、戻って来てー。」

 精霊たちが帰って来ると、夜空のパニックは収まり、ペガサスは落ち着きを取り戻して、先程、俺に話し掛けて来たペガサスのミッドナイトが空から舞い降りて来た。
 何と漆黒の仔馬だ。スノウと同じくらいだから1歳馬か?
 あれ?付いてる。僕って言ってたから、牝馬と思い込んでたが牡馬じゃん。リシッチャ島で僕って言うのは男も女もな訳ね。それとも、ペガサスは違うのか。

 精霊たちによると、返事をしないで逃げたので、ついつい追い掛けてしまったそうだ。
 ミッドナイトによると、ペガサスたちは、いきなり精霊が追い掛けて来たから取り敢えず逃げたら、さらに追い掛けて来たとのことだ。
 双方の言い分を聞くと、どちらも悪気はなく、誤解が重なっただけのような気がする。いつかカルメンさんから聞いた揉めてる原因の典型例だ。

「そう言う訳だからさ、うちの精霊たちも悪気はなかったんだよ。」
『でもさ、なんで僕たちと話したかったのさ?』
「君らの縄張りは風の特大精霊の縄張りと重なってるだろ?上手く共存してるってことは仲がいいんだろうなと思ってさ、風の精霊の居場所を知ってるか、聞こうと思ったんだよ。」

『風の精霊に何の用?』
「俺の仲間に誘うんだよ。一緒に旅をしないかって。」
『旅?』
「そう、大陸のあちこちをまわるんだよ。」
『へぇ、楽しそうだね。僕も行きたいな。ちょっと皆と話して来る。』ペガサスのミッドナイトは翼を広げ、空に向かって駈け昇って行った。

 しばらくするとミッドナイトが戻って来た。
『皆も君たちに悪意がないのは分かったって。だから僕が風の精霊の所に案内するよ。』
「おお、ありがとう。俺はゲオルク、よろしくね。」
『それから長が、僕も旅に付いて行っていいって。』
「え?俺たちと一緒に来るの?」
『うん。なんか面白そうだし、それにすごくきれいな仔もいるから一緒に行く。』スノウに眼を付けたか。おませさんだな。
「大歓迎だよ。じゃあ仲間を紹介するね。」

 俺はお姉様方と精霊たちとスノウにミッドナイトを紹介した。ミッドナイトは長いからナイトと呼ぶことになった。
 ナイトは早速スノウの所に行って、ふんふん、くんくんと互いに匂いを嗅ぎ合っている。馬同士の挨拶なのかな?

 一段落ついてから、俺はちゅー×5で、精霊たちに魔力を供給した。

「ゲオルク君、ナイトの姿はこのままじゃまずいわね。」
「そうだな、スノウが角を隠してるように、ナイトも翼を隠せないだろうか?」
「ナイト、人間の領域ではペガサスは伝説の聖獣でさ、翼の生えた馬は凄く目立つんだけど、スノウみたいに幻惑の術で翼を隠せないかな?」
『できるよ。』

 翼が消えて、ナイトは普通の漆黒の仔馬になった。

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設定を更新しました。R4/4/3

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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