精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護049 ナイトによる送迎

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精霊の加護
Zu-Y

№49 ナイトによる送迎

 リシッチャ亭ではマルコさんとジューリアさんが出迎えてくれた。
「叔父さん、義叔母さん、今度は僕の仲間たちが世話になるけどいいかな?」
「おう、構わねぇよ。」
「「「「お世話になります。」」」」
「俺はしばらく北部へ行きますんで、よろしくお願いします。」
「おう。まかせときな。」
「ビーチェ、しばらくいるんならまた店を手伝ってくんな。」
「いやーそれがさー、僕だけとんぼ返りで実家に帰るんだよ。」

『ゲオルク、ビーチェはまた船で帰るの?』俺たちの話を聞いていたナイトから念話が飛んで来た。
「ああ、そうだよ。」
『また2日も閉じ込められるの?かわいそうー。僕なら2時間で島まで運んで上げられのに。』え?マジか?
 そりゃ、空を飛べるんだから南部湾を跨いで最短距離でラクシーサまで行けるわな。それに飛んだら、船より全然早いし。2時間で行くのかー。ってか、運んでくれるの?確認しよう。

「なぁ、ナイト。ビーチェさんを背に乗せられるのか?」
『僕も毎日成長してるからね。ビーチェなら全然平気だよ。』
「ビーチェさん、ナイトが送ろうかって言ってるけどどうする?」
「え?どこに送るのさ。」
「ラクシーサまで2時間くらいだって。」
「まさか、飛ぶの?」
「そうみたい。」

「僕が乗っても平気なのかな?」ナイトは、スノウと同じ1歳馬である。スノウよりは大きいが、馬体は十分と言えるほど育ってはいない。
「ビーチェは私と違って軽装だし、飛ぶだけなら脚に負担が掛からないから大丈夫だと思うぞ。」ベスさんのお墨付きも出たな。
「2時間かぁ。」
「ビーチェ、やめとけ。途中で落ちたら海の中だぞ。」マルコさんが心配して止めたのだが…。
『なんだとー、このおっさん、僕がラクシーサまで飛べないと言うのか?蹴り飛ばしてやる。』ナイトが文句を言ってる。笑
「まぁまぁ、ナイト、悪気はないんだ。マルコさんは心配性なんだよ。」

「ん?どうかしたのか?」ナイトの念話が分からないマルコさんは暢気なものだ。
「いや、ナイトが『ラクシーサまで飛べる。』と言ってるんですよ。」
「ねぇ、ナイト。毎日ラクシーサまで僕を送り迎えしてくれるの?」
『毎日?それならご褒美次第かな。』
 ナイトにはビーチェさんの言葉が通じているが、ナイトからの念話はビーチェさんにも届かない。そこで俺が間に入る。

「何がいいんだ?」
『四角いお砂糖がいい。』
「角砂糖か?何でそんなのを知ってるんだよ。」
『ビーチェんちで貰った。』
「誰に?」
『ロレンツォだよ。大きくなったら乗せてくれよって言ってた。』
 あの野郎、秘かにナイトを手懐けようとしてやがったのか!

「ジューリアさん、角砂糖ってありますか?」
「あるわよ。」ジューリアさんが角砂糖を持って来てくれた。
『それそれ!1個ちょーだい!』
「よし、ビーチェさんを送り迎えしてくれるなら、行きと帰りに5個ずつやろう。」
『そんなに!わーい。約束だよ。』

 取り敢えず、試験飛行をすることになった。落ちないように、鞍に鐙、それから頭絡と手綱も付けて、ナイトはビーチェさんを背に乗せた。
 すると目くらましの魔法で隠していた翼を出現させ、大きく羽ばたいて、ビーチェさんを乗せたナイトは、大空に舞い上がった。そのままひと回りしてリシッチャ亭前に無事着地した。
「僕、空飛んだよー。」
 大興奮のビーチェさんに対し、見ていただけのマルコさんは、顔を引きつらせていた。ひょっとするとマルコさんは、心配性なのではなくて、高所恐怖症なのかもしれない。笑

「ところで根本的なところだが、ペガサスが飛び回っても、南府やラクシーサの民は大丈夫なんだろうか?」俺は疑問を口にした。
「リシッチャ島ではたまにペガサスを見るから平気だね。南府ではどうかなー。でも毎日行き来してれば、そのうち見慣れるんじゃない?」
「そんな程度なの?」
「まぁ、騒ぎになったら、そんときゃそんときだよ。何とかなるって。」うーん、ビーチェさん、肝が据わってるなぁ。

 こんな訳で、ビーチェさんも皆と一緒にリシッチャ亭に泊まって、実家の道場には毎日ナイトで通うことになった。
 このことについては、後日ピエトロさんが「話が違う!」と言って騒いだそうだが、エンマさんに一喝されておとなしくなったそうだ。笑

 その夜、明日からしばらく別行動になると言うので、お姉様方とはぱふぱふを越える濃厚な夜を過ごした。妊娠リスクを避けるため、マイドラゴンは、お姉様方のお口の中でホワイトブレスを吐かされたのだが、ここで新発見。お口でも魔力の上限が100ほど上がるのだ。この晩、5人の魔力の上限を100ずつ上げたのだった。

 翌朝、ヘルメットにゴーグル、そしてマスクを装備したビーチェさんは、防寒着を着込んで、ナイトの背に乗り、ラクシーサに飛び立って行った。実家の刀術道場で、刀術スキルを磨くためだ。
 同様に、リーゼさんは南府魔法学院に攻撃魔法を、ジュヌさんは南府教会に回復魔法を、カルメンさんは南府教会にバフ系の支援魔法を、ベスさんはスノウを連れて南府騎士団へ盾スキルと槍スキルを学びに行った。なお、カルメンさんは、日替わりで南府魔法学院へデバフ系の支援魔法も学びに行く。

 俺は、南府ギルドに顔を出してから、南府近衛隊詰所へ行き、囚人4人の王都護送について打ち合わせをする予定だ。
 ギルドに行くと居合わせた冒険者たちから注目された。
 精霊たちをぞろぞろ連れているからな。手を繋いでいるのがクレとフィア、後ろから服の裾をつまんでいるのがツリ、両肩にチルとワラ、頭の上にウィン。まぁ、この出で立ちは目立つわな。笑
「ちくしょう、あいつが俺のビーチェを…。」
「おい、ふざけるな。俺のビーチェだ。」
 ひそひそ声が聞こえる。なるほど、俺はビーチェさんを掻っ攫ったせいで注目されてるのか。

 受付に行くと早速ギルマスルームに通された。精霊たちもぞろぞろとついて来る。
「ゲオルク、まぁ座れ。工作員を捕まえたそうだな。お手柄じゃないか。」
「え?もう知ってるのか?早耳だな。」
「昨夜、近衛隊から連絡が来てな。数日前のお前から王都への鳩便の内容はこれか?」
「ああ、そうだ。」
「ついさっき届いたのだがな、東部公爵様からお前宛の鳩便だ。」
 俺は早速、東部公爵様からの手紙を見た。内容は非常に簡潔で、
『南府近衛隊と協力し、囚人を速やかに王都に護送せよ。』
と言うものだった。俺は、東部公爵様からの指令書をギルマスに見せた。

「まぁ、そうなるだろうな。東部公爵様からの指令なら、スピリタスへの公的依頼として南府ギルドからクエストを出そう。」
「それがさぁ、仲間たちは今日からスキルアップを目指して修行中なんだよ。俺ひとりになるな。」
「そうなのか。まぁ近衛隊も同行するし、実質上、スピリタスの戦力のほとんどはお前だからな。」
「実際はそうでもないんだがな。精霊魔法は目立つからそう誤解されるんだよ。仲間たちですら、誤解しているんだ。」

「それで修行して、スキルアップをすることにした訳か?」
「まぁな。それに5人とも、魔力量が少なかったから、身に付けてるスキルはほとんどが初級スキルなんだよ。」
「そうなのか。確かにそれでは今後の活動に不都合が生じるな。スピリタスはそのうち頂点に行くだろうからな。」
「そう易々とは上がらないだろう。」
「いや、そんなことないぞ。今回の工作員の捕獲だけどな、クエスト認定されたから、ゲオルクはAランクにもう少しのところまで来た。それからリーゼとジュヌとカルメンはDランク昇格、ベスとビーチェはCランク昇格だ。よってスピリタスのパーティランクもCランクに昇格だな。」

「まじか?」
「それだけ上は、一連の事件を重く見ていると言うことだ。まだ確証は掴めてないが、帝国にしろ教国にしろ、関与が判明した時点で、王国に対する宣戦布告と見做して、強硬な手段に出るだろうよ。」
「軍事衝突か?」
「ああ。それも辞さないだろうな。ほら、水の精霊様を救出したときの報告で、ゲオルクは同席しなかったが、あのときの南部公爵様は、それはもうご立腹でな。」
「東府公爵様も同様だったな。ただ、東部公爵様はご立腹の上でさらに、どうケジメを付けさせるかに重きを置いていたように見えたがな。」
「それならまずは賠償請求だな。」
「ああ。東部公爵様は、帝国と教国以外にも、王国内の裏組織の武器商人が怪しいと睨んでいるようだ。」

「今回ゲオルクが捕らえた工作員は、帝国の魔術師と教国の精霊士と、護衛ふたりが王国の武器商人の配下だったな。帝国と教国が裏で手を結んで、そこに王国の武器商人が絡んでいたとなると一番厄介だな。」ギルマスは腕を組んで考え込む。しかしだ。
 厄介?それが一番いいんだよ。東部公爵様はそれをお望みだ。
 帝国と教国に譲歩させ、武器商人には徹底的にダメージを与える。そしておそらく裏組織自体を傘下に収めるおつもりだろうな。

「俺には詳しいことはよく分からんが、東部公爵様には後ろ盾になってもらってるから協力は惜しまぬつもりさ。」俺は深入りせずに、はぐらかした。
「そうだな。」
「じゃぁ、これから近衛隊詰所に行くよ。ギルマスも一緒に来るか?」
「ああ、厄介だが行くしかなさそうだ。」

 ギルマスとふたりで近衛隊詰所に行くと、すぐに隊長室に通された。近衛隊側は隊長と副長のふたりだ。
 俺はまず、東部公爵様からの指令書を隊長に見せた。
「なるほどな。私にも南部公爵様から指令書が来ている。」隊長は南部公爵様からの指令書を見せてくれた。
『東部公旗下のスピリタスと協力し、囚人を速やかに王都へ護送せよ。』か。

「同じ内容だな。ただし、同行するスピリタスは俺ひとりだ。」
「他のメンバーは?」
「所用で外せぬ。」
「無礼な。南部公爵様のご命令より、重い所要などあるはずがなかろう。」横から副長が口を挟んで来た。

「俺ひとりでは不服か?何だったら試してもいいぜ。俺ひとりで近衛隊を全滅させてやるよ。」
「なんだと!」副長がいきり立つ。
「待て、副長。」
「しかし隊長。あまりにも無礼な物言い。」

「おい、副長とやら。勘違いするなよ。俺のボスは東部公爵様で、南部公爵様ではない。南部公爵様の指令を受ける義務はないし、そもそも、南部公爵様は俺に指令を出していない。
 東部公爵様からの指令書にはスピリタスで動けとは書いていない。そして指令書は俺宛だ。俺ひとりでも問題ないと言うことだ。」
「おのれ、詭弁を!」

「ワラ。」
『はーい。』
 バッシャーン。隊長室の花瓶の水が副長をいきなり襲った。呆然とする副長。
「少し頭を冷やせ。」
「ゲオルク、やり過ぎだ。」ギルマスが耳元で囁いた。
「なんの。これでも自制したんだぜ。好き放題にやっていいなら、この部屋の壁に風穴を開けてるところだ。
 おい、副長。近衛隊を全滅させると言うのは、はったりでも何でもねぇぜ。精霊魔術師を舐めるなよ。」
 俺に反応して、精霊たちが一斉に怒気を発すると、副長はその場で失神した。

「なぁ、こんな奴が副長で、南府近衛隊は大丈夫なのか?」
 隊長に尋ねると、隊長は苦虫を噛み潰したような顔をして、ひと言「すまん。」と言った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/4/10

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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