精霊の加護

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精霊の加護160 マリーからの諫言

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精霊の加護
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№160 マリーからの諫言

 翌日は、王国の役人たちと教国の神官たちとの間で、殿下と教皇様の合意が文書化されることになっている。
 この作業に丸1日掛かるので、俺たちはガキンチョ5人組を連れて、ミュンヒェーの森に、討伐クエストに出ることにした。

 アクアビット号の見張台には、俺とドーラとトーラとガキンチョ5人組の女子3人。精霊たちは上空に飛んで索敵。御者台とその後ろの席には、リーゼ、ジュヌ、カルメンがいて、交代でアクアビット号を操っている。
 ベスはスノウ、ビーチェはナイトに騎乗してアクアビット号の両サイドに並走。ヘルムートとディエゴも、ハイジの領主館から借りた馬に騎乗し、ベスに従っている。ベスを隊長とした3人の重騎士の騎馬隊だ。なお、ビーチェは軽装備の騎馬で遊撃である。

『ゲオルク、森の茂みの中に獲物がいるー。』『11時の方向300mくらいー。』『ビッグボア5頭がいるー。』『こっちの様子を窺ってるー。』
 索敵に当たっていた精霊たちからの念話だ。

 俺は伝声管で御者席と、騎乗で並走しているベス騎馬隊と遊撃のビーチェに情報を伝えた。
「緊急停止。11時の方向300mの森の中にビッグボア5頭。こちらを警戒している模様。」
 その伝達の内容を横で聞いていた、マリー、エカチェリーナ、アイチャが、見る見る顔を強張らせた。
 一方、ドーラとトーラは、嬉しそうに眼の色を輝かせていた。獲物を前にした狩人の眼だ。トーラが、スキル全筋隆起を使ってブーストモードに変身すると、体躯が2倍になった。ドーラよりでかい。

 ドーラとトーラはわれ先にと、見張台から飛び降り、アクアビット号の前に仁王立ちで展開した。
 慌ててふたりの後を追うエカチェリーナ。
 ベス騎馬隊のベス、ヘルムート、ディエゴは下馬して密集隊形を作り、盾を構えて、鉄壁の迎撃態勢を敷いた。
 ビーチェが、エカチェリーナを誘って、騎馬隊の陰に潜んだ。騎馬隊が突進を受け止めたら、カウンターを狙って突出する戦法だ。

「カルメン、ソル。皆にバフだ。」
「任せな。」『はーい。』
 カルメンが皆にバフの術を掛けると、呼応してソルもバフの精霊魔法を掛けた。通常魔法と精霊魔法は系統が違うので重ね掛けが可能だ。

『来る!』『突進開始。』精霊たちから念話が来たので、
「来るぞ!」と皆に伝えた。
 ドドドドド、と突進の地響きがして、樹々の鳥たちが飛び立つ。

「カルメン、ダク。敵にデバフ。」
「あいよ。」「はーい。」
 カルメンとダクのデバフが、ビッグボアの群れの突進速度を落とした。

「リーゼ、マリー、迎撃。」
「「はい。」」
 リーゼとマリーがウインドカッターで応戦し、戦闘で突進して来るビッグボアの両前脚を切断。先頭がつんのめって転ぶと、後続も次々と躓いて転んだ。

 先頭以外の4頭はすぐさま立ち上がって再び突進を開始したが、うちの前衛部隊が押し出して、敵の突進が勢いを増す前にぶつかり合った。
 ドーラとトーラは尋常じゃない跳躍を見せ、敵のうち、2頭に襲い掛かった。ドーラは大上段から一刀両断、トーラは顔面のど真ん中をぶん殴って陥没させた。それぞれ一撃で屠ったのである。

 残り2頭の突進を下馬したベス騎馬隊が密集で受け止めると、ベス隊のすぐ後ろに控えていたビーチェとエカチェリーナが前面に出て、ビッグボア2頭の急所目掛けて、ビーチェが素早い斬撃を、エカチェリーナが力強い突きを入れた。
 致命傷を負った2頭に、ベスが、
「トドメ!」と命令すると、
「「はい。」」とハモったヘルムートとディエゴが、槍を突き入れて絶命させた。

 うむ、実に見事な連携である。

『ぶー、出番ー!』『『『『『『ぶーぶー。』』』』』』
 あはは、ツリを皮切りに、クレ、フィア、チル、ワラ、ウィン、メタがぶー垂れやがった。
「索敵で大活躍だったじゃないか?」
『え?大活躍?』『『『『『『大活躍?』』』』』』
「そうだよ。的確な索敵のお陰で勝てたんだぞ。」
『やったー、大活躍ー。』『やったー。』『活躍したー。』と喜んだが、
『でも次はツリたちがやる。』と、念を押されたのだった。

 屠ったビッグボアを解体し、魔石を取り出すとともに、ブロック肉をチルに凍結保存してもらった。ビッグボアの肉は、食材としての価値が高い。

 その後、ポイズンタランチュラが視認された場所へと移動した。
 ポイズンタランチュラは、巣と定めた場所一帯に毒を撒き散らす厄介な毒グモの魔蟲である。
 普通のクモはクモの巣を張って、巣に掛かった獲物を捕食するが、ポイズンタランチュラは、縄張り一帯に毒を撒いて、その毒にやられて動けなくなった得物を捕食するのだ。

 東部は森林のエリアなので、ミュンヒェーのまわりも大森林である。ミュンヒェーから北にしばらく行った森林に、ポイズンタランチュラ数体が、それぞれ縄張りを持ったエリアがある。一番大きな主とも呼べる個体は、牛ぐらいの大きさまで育っているそうだ。

 ハイジがその一帯に氷結魔法を放つと、ポイズンタランチュラはしばらく活動を休止するが、退治できた訳ではなく、氷結が融けると活動を再開するのだそうだ。
 なかなか姿を現さないから、クララの雷魔法は適さない。姿を現わせば雷魔法をピンポイントで打ち込めるが、姿を現わさなければ生息域一帯に雷魔法を撃ち込まなければならない。そうなると森の樹々のダメージが大き過ぎる。
 ハイジの氷結魔法は、木にとってみれば、急に冬が来たようなものだから、枯れずにやり過ごせるが、クララの雷魔法を受けると、落雷を受けた様に黒焦げになってしまうからだ。

 俺のポイズンタランチュラ殲滅作成はこうだ。
 チルの冷気で活動を止めた後、フィアの火とメタの雷でガンガンぶち込んで、ポイズンタランチュラを殲滅する。森林火災になるから、ウィンの風魔法で空気をじゃんじゃん送り込んで、大きな森林火災にして、ポイズンタランチュラの縄張りを徹底的に焼き尽くし、ポイズンタランチュラが撒いた毒を浄化するのだ。その後、ワラの水で完全に消火し、念のため、ソルの解毒魔法を縄張り一帯に掛ける。
 その後、ポイズンタランチュラの死骸から魔石を回収し、最後に、ツリに森林を再生してもらう。
 クレとダクが出番を寄越せとぶー垂れるだろうがそれは仕方ない。苦笑

 俺たちのポイズンタランチュラ殲滅は、おおよそ、俺の作戦通りに進んだ。
 ポイズンタランチュラの生息域と思われる一帯に、チルの冷気の精霊魔法を、広範囲に連発で打ち込んだ。これでポイズンタランチュラの行動を止めたはずだ。
 次にフィアの火の精霊魔法と、メタの雷の精霊魔法を、これも広範囲に連発で撃ち込んだ。
 一帯が森林火災を起こしたところで、ウィンの風の精霊魔法で広範囲に空気をじゃんじゃん送り込むと、森林火災は物凄い火勢で燃え上がった。
 十分に燃やし尽くしたところで、ワラの水の精霊魔法で広範囲に豪雨を降らせ、森林火災を鎮火させた。
 そして、ソルに回復の精霊魔法で、広範囲に毒の浄化を繰り返し行った。

 この間、精霊たちは繰り返し魔力補給に来た。当然俺は、魔力補給の効率を上げるために、水筒に入れて来たアードベクをひと口含んで精霊たちと濃厚なキスをしていた。
 そうなると、精霊たちはほろ酔いとなる。
『キャハハハハー!』と、ハイテンションになった精霊たちが、精霊魔法をバンバン打ち込むのを見て、ガキンチョ5人組は完全に引きつっていた。笑

 さて、焼け野原となった生息域に侵入し、ポイズンタランチュラの死骸から魔石を回収しに行こう。
 牛ぐらいの大きさまで育ってたと言う、一番大物の死骸はあっさり見付かって魔石をゲットした。しかし、残りの個体の死骸がない。
「なぁ、他のポイズンタランチュラはどこに行ったか分かる?」精霊たちに問い掛けてみた。
『土の中に潜ってるー。』『潜ってるー。』
 なんだと?咄嗟に土の中に避難した言うのか?
『でも土の中で死んでるー。』『死んでるー。』
 おそらく火の熱やら、酸欠やらで死んだんだろうな。
「生きてるのはいるか?」
『2体いるー。』『でも死にそー。』

 精霊たちの案内で、瀕死で生き残った2体が潜んでいる場所に順に行き、クレの土の精霊魔法で地面をモゴモゴやって引きずり出し、ダクが状態異常の精霊魔法でポイズンタランチュラを完全に動けなくした後、俺がトドメの矢を急所に射込んで絶命させた。
 この2体の魔石を回収した後、残りの地中で死に絶えた数体のいる場所を巡り、クレの精霊魔法で死骸を掘り起こしてもらって、魔石を回収した。
 殲滅したポイズンタランチュラは、全部で8体だった。

 最後にツリの精霊魔法で森林を再生し、ポイズンタランチュラ殲滅作戦完了である。

 得意気になっていた俺に、マリーが冷や水を浴びせた。
「ゲオルク様、今回のポイズンタランチュラ殲滅作戦ですが下策です。反省して下さい。」え?下策。なんで?
「マリーから見れば下策だったか?いったい何が不味かったのかな?」
「精霊たちの索敵能力は、地中に潜ったポイズンタランチュラの位置を正確に突き留めました。それなら最初から、ポイズンタランチュラのいる場所まで行って、各個撃破すればよかったのです。」
「でも、一気に殲滅するんでもよかったんじゃないかな。」
「いいえ。森を一旦焼け野原にしてしまったではありませんか。」
「でもこうやって再生したよ。」
「森は確かに再生しました。でも焼かれた森に住んでいた動物たちは、巻き添えで死んでしまいました。」あ…、確かに。
「そこまで気が回らなかった。マリーの言う通りだ。ごめん。」
「分かって頂けたらよいのです。精霊魔法は非常に強力です。その分、使い方を誤ったら恐ろしい凶器となります。そのことを忘れないで下さいね。」
「はい。」
 8歳…いやもう9歳になってたっけか。9歳の女の子に諭されてしまった。いやいや、年齢は関係ないな。

「あなた、私も同罪よ。マリー様のご指摘に気付かなかったわ。」
「お前さん、あたしもだ。面目ない。」
「そだねー、僕たち、精霊魔法の威力に慣れちゃってさ、その危険さを忘れちゃってたよ。反省、反省。」
「そうですわね。わたくしも肝に銘じますわ。」
「それにしても、その御慧眼、流石マリー様です。エリザベス、恥じ入るばかりです。」と言ったベスは、マリー様の前で片膝を付いて首を垂れた。
「ベス、よいのです。これからも一緒に、ゲオルク様を支えて参りましょう。」
「はい。」
 うーん、9歳の女の子なのに正妻の貫禄?苦笑

 一方で、
「なぁ、トーラよ。わらわは、獣など放っといてもすぐ増えると思うのじゃがのう。」
「そう、すぐ増える。森さえ、再生すれば、それでいい。」
 ドーラとトーラは頷き合っていた。流石、生態系の頂点に君臨するエンシェントドラゴンとホワイトタイガーである。
 価値観の異なるふたりなのであった。笑

 ミュンヒェーに帰って、ポイズンタランチュラの殲滅を報告すると、ギルドだけではなく、ハイジからも大いに感謝された。
 そして、最後の夕餉も、昨日の晩餐会に負けず劣らず豪勢なものだった。

 明日からは教都に向けての度の生活になる。最後の夜、リーゼ、ビーチェ、ドーラの3人を、心行くまで堪能した俺とマイドラゴンなのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/12/25

更新は火木土の週3日ペースでしたが、11月中旬にストックが尽きてしまい、1か月ちょっとの間、自転車操業で更新していました。
このため、後からの付け足しなど、修正改稿が増えてしまいました。
次週より、しばらく更新をお休みして、ストックを増やしてから再開いたします。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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