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プロローグ
出会いは唐突に
しおりを挟む「ここで何してる?」
高層ビルの屋上、僕に話しかけてきたのが、女神を名乗る少女だ。
「べ、別に……」
家族全員と家を火事で失って何も無くなった僕としては、もう生きている価値がないので、今話しかけられても、と思う。
もっとも、ずっといじめられてきたので、それから解放されたいというのも心のどこかにあったかも。
「死ぬのか?」
少女の言葉に、屋上の金網を乗り越えていた僕の体が少し揺らめいた。
思わず後ずさる。
恐怖で息が荒くなり、はぁはぁ言っている。
「そんなへっぴり腰で飛ぶのか?」
少女はさっきと同じ体勢で立っている。
明らかに僕が飛べないと思っているのだ。
「……」
僕は少女を無視することにした。
飛んでしまえば、あとは重力に従い落下して……。
「私と共に世界を救ってみないか? それから死んでも遅くないだろう」
少女の言葉に、僕は驚愕した。
何を言い出すんだと思う。
「橘 龍之亮」
不意に少女が僕の氏名を呼んだ。
「! な、なんで、し、知ってるんですか?」
冷静に考えれば相手は女神なのだからそんなのお見通しということに気づいたはずなのだが、今の僕には思いもつかなかった。
「お前が家族全員と家を火事で失っていることも、お前がそれで生きる希望を失ってここに来ていることも、全て知っている。一応これでも女神だからな」
少女は至極冷静に話をしている。
しかも僕の事をことごとく当ててきている。
そして最後の『女神だからな』に全て集約されているような気がする。
「違う世界を見るのも、いいと思うけどな」
少女の言葉に僕の何かが変わった。
「嫌なら仕方がない」
彼女は踵を返して、歩き始める。
「ほ、本当に、ち、違う世界、み、見れますか」
僕の言葉に彼女は足を止める。
「もちろん、色んな世界に連れてやるよ」
僕には彼女が笑ったように見えた。
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