地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。

火曜日の風

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1章 宇宙遭難編

10話 わずかな希望に向けて

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 瑠偉はおしるこを飲み終え缶を地面に置く、そして俺を見た。

「貴方についての質問はやめておきます、では本題の質問をしますね」
「ああ、がっつり聞いてくれ。出来る限り答えよう」

「飛行機の後方に光の穴を見たと言いましたよね、それってワームホールじゃないですか?」
「ワームホールは見たことないからな、そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。仮にそれがワームホールだったとしたら、どうなるわけ?」

「作れますか?」
「どうやって? 作りかたは?」

「知りませんか?」
「知らない、だから作れないな、仮に作れたとしても、地球の場所が解らないからなぁー、入り口を作っても出口をどこにするかを決めないと無理だと思うぞ? たぶん・・・」

「そうですよね」
「おれも、考えてたんだけど全くいいアイデアが浮かばなかったよ、ほかに何かないの?」

「飛行機の無線で救難信号を出すのはどうでしょうか?」
「地球に届くと思うか? 電波も光の速度でしか進まないんだよ? 仮に届いたとしても何十年も先だしな、そもそも地球の科学力ではここには来れないだろう」

「このまま、こ、このまま……死ぬまでここで暮らすことになるんですか?」

 瑠偉の目が潤うのが見えた、泣き始めか・・・
 気まずいから慰めておこう、頭が空っぽで何も考えられないが・・・

「な、なんとかするよ。誰かが、助けに来るかもしれないし?」
「誰かって、誰ですか?」

 さすがに誰も来ないな、隣の惑星は真っ赤な火山だったし・・・

「たまたま、偶然に通りかかったUFOに? いやまてよ、誰かに救援を求めるってのも一つの手か・・・」
「なにか、いい案がうかびました?」

「ああ、戻れる可能性が見えた、気がする」
「どんなことですか?」

「確信がないので、まだ言えないな、出来ると言って出来なかったら、落ち込むだろ? 俺はここで作業するけど、飛行機に戻るか?」
「見てます」

「空を見てるだけだし、喋らないし、動かないぞ?」
「では、私は星を眺めてますね。2度と見れない星空になるかもしれないですから」
「そうなるといいな・・・」

 では<近くの居る知的生命体に救援を求める>これだな、宇宙空間に飛ばされた直後は時間がなかったし焦ってたから、恒星の距離しか見なかった。

 が、今は時間がたっぷりある、恒星周辺の惑星に重点を置いて見てみよう。
 まず移動距離を考えると近い方がいい。

 俺は立ち上がり小さな木片を枕にし地面に仰向けになる、そして夜空を見上げた。
 こ、これは・・・星が一杯ありすぎて時間がかかりそうだぞ。

 夜空には大量の星々が輝いていた。

 ……
 …

 よし候補が3つあったぞ、他も見て見たいが遠すぎて力が届かった、おかげでかなり力を消費したから結論が出ても今日は休むしかない、明るくなってから、全員に話すとしよう。

 瑠偉を見ると丸太から降りて地面に座っている、そして丸太に頭を載せて上を見上げている、もし寝ているなら確実に首を痛める格好だ。

 俺は立ち上がり再び丸太に腰かけ瑠偉に話しかける。

「瑠偉、起きてるか? ここで寝て体調を崩すなよ、俺は治療系の力は使えないから最悪死ぬぞ」
「なんですか? 起きてますよ」

 瑠偉はそのまま頭を起こしこちらを向いて言った。

「ところで麻衣って、何時もあんな喋り方なのか?」
「いつも通りです、ちなみに同じ学年に4人ほど患者がいますね」

「頭の緩い子は、扱いに疲れるよ、まったく」
「言っておきますが、麻衣は学年2位の学力を持ってる秀才ですよ?」

「えぇっぇ、それ年齢偽証よりビックリな情報だぞ」
「ちなみに、私は1位です」

「美憂は?」
「その辺は察してあげてください」
「じゃ、じゃあ聞かない…」

「あと昨日あれですが、あの高さから落とすのはやり過ぎだと思いますよ?」
「まぁ、それは少し反省している」

「今後は、軽率な行動をとらないでください、いいですね?」
「う、うん」

 なんか怒られたぞ・・・しかし瑠偉と結婚する奴は大変だろうな、主導権を握られて絶対尻に敷かれると思うぞ。

「なかなか、明るくならないな、何故か薄暗いままだ」
「スマホで時計を見ましたが、暗くなってから14時間が経過してますね」

「意外と長く寝ていたんだな俺、して、あいつらはいつ起きるんだ?」
「外が暗いから起きないかと、それ以前に起こさないと起きないタイプですし」

「さすがに、12時間以上寝たら自然に起きるだろ?」
「起こしましょうか?」
「いや俺が起こす、見てろ」

 俺は飛行機の全体を見て確認し、そのまま右手を向けて力で飛行機を1mほど浮かせる、そして上下に小刻みに揺らした、それをしばらく続ける。
 しばらくして中から叫び声が聞こえた。

「麻衣ぃー、瑠偉ぃー、織田さーん、地震だぞ! 起きろ、起きろ、何かにつかまれー」
「なに、なに、揺れてるよ揺れてるよ、わぁわぁわぁ、死ぬ死ぬ死んじゃうよー」
「麻衣、落ち着け、私のそばに来い」

「よし起きたな、もうやめてやろう。しかし美憂はしっかり者だな? ちゃんと冷静に判断しているぞ」

 俺はそのままゆっくりと飛行機を地面に下した。

「美憂は、人を思いやる、いい子ですよ」
「そ、そうか・・ってうぇ?」

 飛行機から目線を外し瑠偉を見る、いつの間にか立ち上がり腕を組み直立不動で俺を睨んでいた。

「先ほど言いましたよね? 軽率な行動はしないで・・・と」
「す、すまん…以後気を付けます」

「とりあえず、太ももを出してください」
「なぜ?」

「言っても解らないから、太ももペン刺しグリグリの刑です。大丈夫です、ペン先は出してないので丸まってます、深く刺さることはありません」

「そういう問題じゃないから……あ、2人を迎えに行ってくる」
「ちょっと、逃げない!」

 俺は逃げるように飛び上がり換気のために開けっ放しにしていた出入口から顔を覗かせた。

「おーい、おきろー、集まれ重大な話がある」
「ふぇ?」

「織田さん、居たのか。瑠偉は?」
「瑠偉は外にいるぞ、こっちに来い外に出してやる」

 側まで来た二人を俺は力で浮かせる、昨日の事もあるし美憂は大丈夫かな?

「美憂、大丈夫か?」
「大丈夫だ、気合を入れなおしたからな」

「兼次ちゃん、ゆっくりだよ? ゆっくりだよ?」
「わかってるよ」

 2人を浮かしそのまま飛行機から出し焚き木の前まで移動したところで地面に落とした、俺はそのまま飛行機に入り荷物から飲み物を補充して瑠偉達の場所に戻る。

「よし、2人ともどこかに座ってくれ」
「あ、瑠偉、織田さん、地震は大丈夫だった? 長い時間揺れてたけど、怪我無かった?」

「美憂、私は大丈夫ですよ、地震は兼次がやりましたから」
「っな」

「兼次ちゃん、ひどいよ<腹黒の>という二つ名でも付いてるの?」
「付いてないからな」

「まぁ、飲み物やるからこれで許せ、瑠偉の分もあるぞ、ほら、3人分」
「「「なぜ、おしるこ?」」」

 3人は驚きの表情で俺を同時に見上げた。

「声を揃えて驚くことか?」
「兼次、普通じゃないですから」

「売ってないからわざわざ、持ってきたんだよ」
「喉が潤わないよーー」

「む、意外とうまいなこれ」
「お美憂、これの良さがわかるのか、素晴らしいな」

 さて、俺もゆっくり味わうか。
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