続 人妻や未亡人と浮名を流しまくりの婚約者と婚約破棄したい! 免許皆伝の技で婚約者の鼻っ柱をへし折ったけど今度は私が返り討ちにあいました

木蓮

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乙女の唇を奪うなんて、わたくしは許可しておりませんわよ!

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(なんですって!?この卑怯者!!!くされ〇〇〇!!!侮っていた小娘に勝負に負けたのがそんなに悔しいからって、こんな言いがかりをつけるなんて!!!わたしは正真正銘の純潔の乙女で処女だっつーの!!)

頭の中でエリックを罵倒する言葉が次から次へと湧いてくる。怒りでどうにかなってしまいそうだけど、ここで怒りに負けたらエリックの思うつぼだ。

(いけない、いけない。平常心平常心。これはハリボテよ、ハリボテ。エリックのハリボテ)

怒りでこわばりそうになる顔に、これまでの淑女教育で培ってきた笑顔を張り付ける。

「失礼しました。エリック様の思いも掛けないお言葉に驚いてしまって。ただ、先程も言いましたように、わたしくはまだ純潔を守っておりますわ」

言いがかりをつけられて困っていますと言った風情を漂わせ、サラディーナはエリックに小首をかしげて見せる。

「確かに昨夜はエリック様も知らない「奥深さ」をご教授しましたが、あれは学ぶつもりがあればどなたでも出来るようになると思いますわ。それをわたしくがしてみせただけの事で、純潔を疑われても....」

「ほう、誰でも出来ると?あれだけの手管をだれでもが出来るとサラディーナは言うのか?」

「はい、エリック様。ただ、わたくしに教えて下さった方は、ある伝手で内密にお願いした方ですので、エリック様にご紹介することは出来かねますが」

「なるほどね。わたしは貴方の純潔を疑っている。貴方は自分の純潔を疑っていない。どこまで行っても平行線だ」

少し考える素振りをして、エリックが答えた。

「となれば、確認するしかないね」

「確認、でございますか?」

サラディーナの問いかけにエリックが続ける。

「私と貴方の主張が真っ向から喰い違うんだ。後は第三者に確認してもらうしかないだろう?王家に嫁ぐ女性に対して、純潔かどうか、王宮侍医が確認する決まりは知っていると思う。今回はそれとは違うが、医師であれば純潔かどうかを調べる術を持っている。医師にサラディーナが純潔を守っているのかいないのか、確認してもらうつもりだ。サラディーナ、何か異存は?」

エリックッが挑戦的にサラディーナを見つめてくる。サラディーナにとっては脅しにもならない。

「構いませんわ、エリック様が私の言葉を信じられないのであれば、致し方ありません」

サラディーナの返答にエリックは目を見張る。

(きっと、わたしが異を唱えると思っていたのね。純潔じゃないだろうから、調べられると困ると思って。お生憎様、調べられたって痛くも痒くもないわよ)

「ではエリック様、医師に確認をしてもらったら、速やかに婚約破棄の手続きをしてくださいね」

ふふっとエリックにサラディーナは微笑んで見せる。エリックは一瞬眉を顰めるが、すぐにその表情を消してサラディーナに答える。

「勿論だとも。医師が確認して純潔が失われていないのであれば、心から謝罪し貴方の望むようにするよ。それまでは私達は婚約者だという事を忘れない様に」

「勿論ですわ。で、いつ医師の方に確認をしていただくのかしら。今日には戻ると家族に告げてきておりますので」

「あぁ。医師については明後日になる。侯爵家と親交のある女医に依頼したが、別の患者のところに出かけているとの事で。昨夜のうちにベルライド侯爵家には、もう少し二人だけで話し合いをしたいと伝えて居るから、心配はしなくていい」

優雅に足を組んで、エリックが微笑む。

「これまで婚約者のサラディーナに対して、わたしの対応が至らなかった事は大いに反省しているんだ。せめて、ここにいる間は、これまでのわたしの至らなさを償わせてほしい」

エリックが微笑んでいるものの、その微笑みに黒さを感じる。

(私が純潔の確認を拒まなかった事で、何か思いついたのかもしれないわ)

「今更ですわ、エリック様。いずれ破棄する関係ですもの。お気遣いいただかなくても、わたくしは一向にかまいませんわ」

部屋に戻ろうと席を立つと、エリックがエスコートをしようと立ち上がった。

「サラディーナ、部屋まで送るよ」

エリックがサラディーナの手を取ろうとする。

「大丈夫ですわ、エリック様」

伸ばされた手を避ける様に後ずさると、エリックがグイッと手を掴み強引に引き寄せた。

「きゃっ..! エリック様、一体何を…あっ」

ガゼボの柱に背中を押しつけられ、目の前にはエリックが。
柱に押しつけられた際に背中を痛めない様に自分の左腕を差し込み肩に這わせる。右腕は柱に手をつけ、サラディーナを身動きできない様に封じ込めた。

「わが婚約者はつれないな。これまでのわたしの態度が気に入らないのはわかるが」

至近距離にエリックの顔があり、サラディーナを見つめる視線は、サラディーナがこれまで見た事のない熱を孕んでいた。

「つれないなんて、エリック様もお人が悪いですわ。わたくし達のこれまでの関係から見れば、今、この状況の方が可笑しいのですわ」

手を触れるのはどうしても断れない夜会でエスコートをする時と、1曲ダンスを踊る時だけ。抱きしめられた事も、今みたいに体に触れられる事もなかった。
壁の花になって、エリックが別の女性達とダンスを踊る姿を、身体に触れ親密な雰囲気を醸し出す姿も、何も感じなくなる位、サラディーナは見てきた。

エリックとの将来になにも希望が見いだせなくなって切り捨てようと決めた今、何故、こんな事をするのか?サラディーナは悲しくなるよりも、腹立たしい気持ちで一杯になった。
だが、目の前の淫靡な雰囲気を纏ったエリックに熱く見つめられ、多くの婦人達と浮名を流したエリックの、そんな男の腕の中に今自分が囚われている事に、サラディーナは気づき動揺してしまった。

「お放しください、エリック様」

顔を赤らめたサラディーナが、エリックを見上げてキッと睨むが、エリックはそんなサラディーナを見て、クスッと笑う。

「わたしに、したことの無い様な奥深い体験をさせてくれた妖艶な貴方のはずなのに、今の貴方は、毛を逆立てる子猫の様だ。強気の貴方もいいが、戸惑う貴方もまた一興」

さぁ、そんな怯えないで とエリックがサラディーナの耳元に唇を寄せながら囁く。

「あっ....、いやっ」

エリックの甘く低い声と唇が、サラディーナの耳を嬲る。

「サラディーナ。月の光で見た貴方も美しかったが、陽の光の下でみる貴方もまた美しいな」

耳を嬲る様にささやかれるエリックの甘い声に、これまで壁の花の経験しかなく、こういった誘惑に免疫のないサラディーナの身体は、強引に高められつつある官能によって震えていた。

「震えているね、可愛いよサラディーナ。その綻びかけている蕾のような、麗しい貴方の唇に触れても?」

ハッとなったサラディーナが否と答える前に、エリックの唇がサラディーナの唇に重なった。
閉じた唇と唇が触れるだけの口づけ。
サラディーナはとっさに顔を背けようとしたが、背中に回っていたエリックの左手が逃がさない様にサラディーナの後頭部を押さえた。

一旦唇を離し、エリックはサラディーナの目を見つめる。

「サラディーナ、口づけは初めて?貴方の甘い唇を最初に味わったのが、他の男でないことを心から祈るよ」

エリックの瞳に浮かんだ強い熱に、サラディーナは自分でも分からない焦燥を感じた。


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