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フードから叔父上の顔を見て、目が点になった。
幼いミリアから薔薇の妖精と言われた叔父上。今でさえ、流れる様な金の髪に吸い込まれそうになる蒼の瞳。
10人が10人、見とれてしまう美貌の叔父上の顔が、あー、なんというか、青と黄色みがかった青と、フリエラー以上に膨れた顔になっていた。
『笑うなと言わなかったか?』
叔父上の顔を見た瞬間、後ろに向きになったフリートの肩が激しく揺れている。流石に声を出す事は我慢しているのだろうが、誰が見ても笑っているのはわかる。
『ああ、あの、叔父上。すみません、ご事情は分かりました。なので、あの、フードを......』
叔父上の自尊心が崩れ落ちるのが早いか、フリートが笑い崩れるのが早いか、ここは私が声をかけるしかないだろう。
フードをかぶり直した叔父上。フリートの肩はまだ揺れている。
『一体どうされたのですか、それは.....』
余りの叔父上の姿に、驚いて笑うどころの話ではなかった。
『グイードと兄上だ』
『侯爵と父上に、ですか?一体なんでまた......』
『グイードからは、ミリアとの事は本人の希望だから婚姻に関しては許していたけど、婚前になんて、いい年をして我慢がきかなかったのかと左に一発』
侯爵は見た目は文官みたいに細身だが、騎士団団長とも仲がよく、一緒に鍛錬をしているとミリアから聞いた事があった。
『兄上からは、色々と我慢をさせてきたからというのも理解はしているが、年長者としての行いたるものではないだろうと右に一発。』
父上も王たるもの、自分の身も守れない様ではと近衛騎士と鍛錬しているのを見かけたりはしていた。
『それでこんな有様だ。グイードや兄上がおっしゃる事は当然だし、これは甘んじて受けるべき私の咎だ』
苦笑する叔父上。確かにそれだけ腫れていれば、話すのにも事欠く有様だろう。
『ミリアとの事は謝るつもりはないが、ただ、お前のこれまでの努力について軽んじいた訳ではないが申し訳なかった』
臣下に下ったとはいえ、王弟としての叔父上が頭を下げるのは父上だけ。そんな叔父上が目の前で頭を下げている。
『止めてください、叔父上。わかっていますから』
自分の歪んだ判断が、叔父上の気持ちを揺らがせる結果になっただけで、叔父上が悪い訳ではない。
『ミリアには会ってはいかないのか?』
叔父上の言葉に、ぐっと手を握りしめる。表情には出さない様に、叔父上に気付かれない様にと思うが、表情がすっと抜けていくのが自分でもわかる。
『えぇ、このまま出発します』
それになにも言わず、そうか...と叔父上が答えた。
『ミリア嬢にも宜しく伝えて下さい。春には、結婚式には、会いに来るからと』
『分かった』
『それから.....』
『うん?』
『叔父上も早くその顔を何とかしてくださいよ。薔薇の妖精と言われた美丈夫が形無しです』
『な、なんで?な、なんでその言葉を??』
アタフタと慌てる叔父上を横目に、フリートを促し、出発する為に騎乗した。
『叔父上、父上を宜しくお願いします!』
『任せておけ。安心して行ってこい』
叔父上に見送られ、フリートと一緒に王宮から出立する。他には誰も見送りのない静かな出発だ。
『アーレン様、本当に良かったのですか?』
笑いのツボからようやく脱却したのか、フリートが涙を拭いながら話しかける。言葉にはしないが、ミリアの事だろう。
『あぁ、いいんだ。今は上手く自分を取り作れないから』
先程叔父上にミリアの話を出されただけであの有様だ。もっと時間が経たないと、彼女に会って平静でいられる自信がないから.....。
フリートと並走して街道を走り抜ける。後ろを振り返ると、城も大分小さく見える。
『ッ!アーレン様!』
急にフリートが叫ぶ。フリートの視線の先を確認すると、少し離れた小高い丘の上に、誰かが立っているのが見えた。白馬に騎乗したまま、こちらをずっと見ている。
足を弱めずそのままのスピードで進む。丘と街道の間を風が吹き抜ける。その風にたなびく銀の髪。ずっと想い続けてきた彼女の姿をそこに認めた時に、アーレンの目から涙が流れ落ちた。あの夜、あれだけ泣いたのに、自分の中にまだ涙が残っていた事にアーレンは苦笑した。
『アーレン様、お気をつけて。ロイド様と2人で無事お戻りになるのをお待ちしてます』
彼女に出せる精一杯の声を張り上げて、アーレンを見送ってくれるミリア。応えたいけど、今口を開けば嗚咽になってしまうだろう。ミリアには情けない姿は見せたく無いし、ミリアだってそんな姿は見たく無いだろう、叔父上以外には。
言葉にはせず、右腕を、握りしめた拳を天に突き上げる様にミリアに見せる。うんうんとうなづいて、ミリアは手を振ってくれた。
遠ざかるミリアの姿。今度会う時にはきっと、笑顔でミリアの幸せを祝える様になっていると、アーレンは自分に誓ったのだった。
幼いミリアから薔薇の妖精と言われた叔父上。今でさえ、流れる様な金の髪に吸い込まれそうになる蒼の瞳。
10人が10人、見とれてしまう美貌の叔父上の顔が、あー、なんというか、青と黄色みがかった青と、フリエラー以上に膨れた顔になっていた。
『笑うなと言わなかったか?』
叔父上の顔を見た瞬間、後ろに向きになったフリートの肩が激しく揺れている。流石に声を出す事は我慢しているのだろうが、誰が見ても笑っているのはわかる。
『ああ、あの、叔父上。すみません、ご事情は分かりました。なので、あの、フードを......』
叔父上の自尊心が崩れ落ちるのが早いか、フリートが笑い崩れるのが早いか、ここは私が声をかけるしかないだろう。
フードをかぶり直した叔父上。フリートの肩はまだ揺れている。
『一体どうされたのですか、それは.....』
余りの叔父上の姿に、驚いて笑うどころの話ではなかった。
『グイードと兄上だ』
『侯爵と父上に、ですか?一体なんでまた......』
『グイードからは、ミリアとの事は本人の希望だから婚姻に関しては許していたけど、婚前になんて、いい年をして我慢がきかなかったのかと左に一発』
侯爵は見た目は文官みたいに細身だが、騎士団団長とも仲がよく、一緒に鍛錬をしているとミリアから聞いた事があった。
『兄上からは、色々と我慢をさせてきたからというのも理解はしているが、年長者としての行いたるものではないだろうと右に一発。』
父上も王たるもの、自分の身も守れない様ではと近衛騎士と鍛錬しているのを見かけたりはしていた。
『それでこんな有様だ。グイードや兄上がおっしゃる事は当然だし、これは甘んじて受けるべき私の咎だ』
苦笑する叔父上。確かにそれだけ腫れていれば、話すのにも事欠く有様だろう。
『ミリアとの事は謝るつもりはないが、ただ、お前のこれまでの努力について軽んじいた訳ではないが申し訳なかった』
臣下に下ったとはいえ、王弟としての叔父上が頭を下げるのは父上だけ。そんな叔父上が目の前で頭を下げている。
『止めてください、叔父上。わかっていますから』
自分の歪んだ判断が、叔父上の気持ちを揺らがせる結果になっただけで、叔父上が悪い訳ではない。
『ミリアには会ってはいかないのか?』
叔父上の言葉に、ぐっと手を握りしめる。表情には出さない様に、叔父上に気付かれない様にと思うが、表情がすっと抜けていくのが自分でもわかる。
『えぇ、このまま出発します』
それになにも言わず、そうか...と叔父上が答えた。
『ミリア嬢にも宜しく伝えて下さい。春には、結婚式には、会いに来るからと』
『分かった』
『それから.....』
『うん?』
『叔父上も早くその顔を何とかしてくださいよ。薔薇の妖精と言われた美丈夫が形無しです』
『な、なんで?な、なんでその言葉を??』
アタフタと慌てる叔父上を横目に、フリートを促し、出発する為に騎乗した。
『叔父上、父上を宜しくお願いします!』
『任せておけ。安心して行ってこい』
叔父上に見送られ、フリートと一緒に王宮から出立する。他には誰も見送りのない静かな出発だ。
『アーレン様、本当に良かったのですか?』
笑いのツボからようやく脱却したのか、フリートが涙を拭いながら話しかける。言葉にはしないが、ミリアの事だろう。
『あぁ、いいんだ。今は上手く自分を取り作れないから』
先程叔父上にミリアの話を出されただけであの有様だ。もっと時間が経たないと、彼女に会って平静でいられる自信がないから.....。
フリートと並走して街道を走り抜ける。後ろを振り返ると、城も大分小さく見える。
『ッ!アーレン様!』
急にフリートが叫ぶ。フリートの視線の先を確認すると、少し離れた小高い丘の上に、誰かが立っているのが見えた。白馬に騎乗したまま、こちらをずっと見ている。
足を弱めずそのままのスピードで進む。丘と街道の間を風が吹き抜ける。その風にたなびく銀の髪。ずっと想い続けてきた彼女の姿をそこに認めた時に、アーレンの目から涙が流れ落ちた。あの夜、あれだけ泣いたのに、自分の中にまだ涙が残っていた事にアーレンは苦笑した。
『アーレン様、お気をつけて。ロイド様と2人で無事お戻りになるのをお待ちしてます』
彼女に出せる精一杯の声を張り上げて、アーレンを見送ってくれるミリア。応えたいけど、今口を開けば嗚咽になってしまうだろう。ミリアには情けない姿は見せたく無いし、ミリアだってそんな姿は見たく無いだろう、叔父上以外には。
言葉にはせず、右腕を、握りしめた拳を天に突き上げる様にミリアに見せる。うんうんとうなづいて、ミリアは手を振ってくれた。
遠ざかるミリアの姿。今度会う時にはきっと、笑顔でミリアの幸せを祝える様になっていると、アーレンは自分に誓ったのだった。
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