3 / 4
第三話
しおりを挟むルナが光属性の欠片を洞窟内で入手した後、新たに旅路を共にすることとなったヴェンを加え、一度別の街に移ることにした。
「ここからしばらく歩いたところに、ちょっとした街があるんだけど、まだあの黒雲の侵略には相当時間がかかる位置にあるし、しばらくそこを拠点に置かないか?」
「そうね、そうさせてもらうわ。」
ルナ達は、ヴェンの提案に乗ることにした。
しかし、もう空も淡い赤色に染まってきているので、どこかで夜を明かす必要があるだろう。
「今日もどっかで野宿かなぁ、間違いなく着かねぇだろ。」
ラロノスは少し不満そうな顔をしながらも、休息に使えそうな場所を探し始めた。
その日の夜は、非常に空が澄み渡っていた。街の灯りも一切存在せず、星と月明かりのみが辺りを静かに照らす。
ルナ達は、3人並んで近場で見つけた川辺に寝そべっていた。
「昨日よりもすっごく星が綺麗ね。」
「ああ、そうだな。遥か遠くで輝いてるなんて想像出来ねぇよ。」
ラロノスがそう言うと、ルナは幼い頃に友人から聞いた、星はこの世界からずっと離れた場所で光ってるから取れないんだよ、と言われた事を思い出した。
この話を聞くまでは、空へ登れば星が取れると本気で信じ込んでいたものだ。
「でも、あの異変を解決しない限りは、世界の人はこの宙を見ることもできなくなるんだよね?」
「そういう事だ。だからこの空を見続けたいなら、俺達はどんな脅威にも立ち向かわないとダメなんだ。」
ヴェンは戦いを決意したように、それでも少し悲しい声でそう言った。
そして、夜空に輝く星々に見守られながら、ルナはいつの間にか深く眠りについていた。
ーーー何なの、この感覚は…?
ルナは辺りが何も見えない空間に立たされていた。
ただひたすらに「闇」と「無」が広がるだけの世界。
音一つとして聞こえてこない、空虚の世界。
「あなたは、私であって、あなたなの。」
「……え?」
空虚の中に聞こえる、謎の少女の声。
「いつか、会おうね。」
「うわっ!?」
ルナは驚いて飛び起きた。どうやら夢を見ていただけのようだ。
「ん?どうしたんだ?」
既に起きていたらしいラロノスが聞いてきた、ヴェンも起きているが、朝に弱いのか付近の木にもたれてぼーっとしている。
「あ、いや、何でもないわ。とにかく、行きましょ。」
そんな会話をした数分後には、次なる目的地を目指して歩き始めた。
街に着く頃にはもう昼間になっていた。街には未だに人々が生活しているそうだが、今は異変を恐れてか、住民達はあまり外には出てこないらしい。
「で、来たは良いけど何処を拠点に置くんだよ。」
「ん?あぁ、俺の家があるし、そこにしようかなって。家の中のもの自由に使っていいしさ。」
そう言いつつ、ヴェンは自分の家まで案内してくれた。外見はルナの住んでいる家に少し似ているが、これはこの世界の家の基本形だからだ。
「あ、じゃあ、お邪魔します。」
中に入ると、玄関のきちんと靴は整理されていた。そして奥に見える部屋も非常に綺麗で、パッと見だと新築かと疑う程だった。恐らく、よっぽどの綺麗好きなのだろう。
中まで案内されると、ソファや簡単な椅子が置かれている。
「まぁ、適当に座ってくれ。」
言われるままにルナ達はそれぞれソファや椅子に腰掛けた。
「で、早速なんだけど、俺は今回の異変は間違いなく『闇の世界』の影響だと思うんだ。」
「闇の世界?」
ルナにも聞き覚えのある言葉だった。
この世界は過去の戦争によって、光と闇に別れており、それぞれ光の女神と闇の皇帝が統治していると。しかし…
「で、でも、闇の世界と光の世界こっち側はお互いがちゃんとバランス取ってるって…」
「それはもうずっと昔の話だ。皇帝シュヴァルツが数十年後に謎の反乱を起こしたせいで今は光と闇のバランスが崩壊してる。その影響が今になって現れたんだろうな。」
ヴェンからの聞いた言葉の意味が、最初はよく分からなかった。光と闇のバランスが崩れたのなら、世界の存続自体が危ういと言っても過言ではないからだ。
「ど、どうすればいいの?」
「俺はもう、闇の世界に直接行くしかないって思ってる。そして、皇帝に直に話を付けるんだ。」
「んな無茶な!?」
ラロノスは叫んだ。
「でももうそれしか方法がないんだ!ただ、3人じゃ心細すぎる。だから、俺の友人の能力者も協力してほしいって頼んだんだけど、あいつ、あんまり人前に出ねぇしさ…会ってから決めるって。」
ヴェンは少し暗い表情でそう告げた。
「と、とりあえず、友人は基本的に街の図書館に居るから、今からでも会いに行くか?」
「早めに会っておいた方が良さそうよね。今から行きましょう。」
「だな、行くか。」
そうと決まると、ルナ達は大きめの荷物はヴェンの家に置いて、図書館まで行くことにした。
ヴェンに案内されて辿り着いた図書館は、ルナの街にある図書館以上に大きく、本の種類も尋常ではないだろうと伺える。
「ここには魔導書とか、歴史書も多いからな。あいつ、そういうの好きだし。」
ヴェンはそう言いながら、木製の大きな扉をゆっくりと開けた。
中はいい感じの温かさで、湿気も少なく、読書に適した環境である。床には赤い絨毯が敷かれ、天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。
壁はダークブラウン色をしており、見ているだけでも心が落ち着いてくる。
「さて、あいつのことだから……歴史書の所から見てみるか。」
ヴェンは慣れているのか、大量に本棚が並ぶ道をスラスラと渡っていく。
そして、しばらく歩いていると、金色の髪をした青年が本を読みつつ頭を悩ませてるようだった。
「……あの子?」
「ああ、そうだ。おい、アル!」
ヴェンがそう呼ぶと、青年はこちらへと振り向いた。
「……なんだ?ヴェン。」
「見つかったぞ、協力者。まぁ…最初は闇の世界の能力者と勘違いして攻撃しちまったけどさ。」
「全くお前らしいな…」
青年はため息混じりにそう言うと、本を丁寧に元あったらしい場所へと戻し、こちらへと歩いてきた。
「俺の名前はアル、雷属性の能力者だ。」
「私はルナ、この子はラロノス。よろしくね。」
「………立ち話もなんだ、あそこの席で話そう。」
青年、アルはそう言うと近くの席まで歩いていった。ルナ達もそれに続く。
「ねぇ、いきなり本題なんだけど、本気で闇の世界に行くつもりなの?私、行き方すら知らないけど…」
「俺はそれを調べる為にここに来たんだ。でも、やっぱりそう簡単には見つからなかったよ。ただ、相応の魔力を持った上で、『闇属性』を所有しているなら、ゲートが開けるらしいが…」
「けど、まだなんの準備も出来てねぇし、仮に行き方が判明してもいきなり飛び込むのは危険そうだな。」
「あぁ、だからどういう備えをして行くかだけでも調べようと思ったんだが……やっぱり資料が見つからないんだ。」
やはり、闇の世界の資料などそう簡単には手に入らないのだろう。
「じゃあ、みんなで片っ端から本探してみる?」
ルナがそんな提案をした途端ーーー
「大変だーーーっっ!」
図書館の入口から、街の住民であろう人の声が聞こえてきた。
「何かあったのか!?」
ヴェンの問いに、住民は恐ろしい言葉を発した。
「魔物の大軍が町に迫って来てやがる!」
「嘘っ…!?」
「みんな、今すぐ行くぞ!」
ラロノスのがそう言うと、全員が急いで外に駆け出した。
外に出たが、幸いにも赤黒い雲は迫ってきていない。
「何処から来る!?」
ルナ達はエレメントソードを召喚し、敵の襲撃に備えた。
小さな街での攻防戦の火蓋が、切って落とされようとしていたーーー
ーーーやっとここまで来れたわ。
あなたのこと、ずっと探してた。
私はあなた、あなたは私。
私達は互いに引かれ合う。
とにかく、一緒にこの闘いを乗り切ろうね
ルナ。
0
あなたにおすすめの小説
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる