41 / 229
41.フミーナ視点/産まれた家
しおりを挟む
(フミーナ視点)
私の今の名はフミーナ・イカゾノス。以前の名前は、忌々しい思い出の象徴のようなので、もう思い出したくもない。随分前に没落した貴族の名なんて周りに笑われるだけだからね。若かりし頃の私の、挫折と屈辱と苦痛を思い起こす名前なんてね。
◇
私の産まれた家は子爵家だった。私はそこの次女であり、いずれはどこかの貴族の家を相手に政略結婚する予定だった。子供の頃の、貴族令嬢だった頃の私は不器用ではあったけど美貌に恵まれていたこともあったから、いい男を捕らえることはできる自信があった。
ただ、長女にして私の姉はそうでもなかった。姉はそこそこ綺麗な方だったんだけど、妹の私の方が綺麗だと周りが比べるため、私に対してコンプレックスを持ってしまった。それがもとで姉は私に対して冷たい態度を取ることが多く、よく八つ当たりされた。私もそんな酷い姉が大嫌いだったため、私達の姉妹関係は最悪だった。
姉の婚約が決まった時、私は意地悪な姉を悔しがらせてやろうと思って、姉の婚約者よりも格上の相手と婚約しようと企てた。姉の婚約者は伯爵令息だったから、私は侯爵か公爵の令息をターゲットに決めた。本当は王族の方がよかったんだけどね。
当時は、公爵の令息で私と年が近い人はいなかったから仕方なく侯爵令息にターゲットを絞った。それで良さそうな条件になったのがイムラン侯爵家の嫡男、ルカス・イムランだった。当時のルカスには婚約者がいたけど、私の美貌をもってすれば簡単に奪えると思って、何度も好意を持っているかのような思わせぶりな発言をしながら接触を図った。
しかし、肝心のルカスは私に全く興味を持たず、それどころか私が何かするたびに苦言を呈したり厳しく注意するばかりで何度も苛立たせられた。それに、このままではマズいと思った私は、二人きりになった時に思い切って嘘の愛の告白までやってのけた。それなのに、ルカスはそれさえも一蹴してしまう。挙句には、私が爵位目当てであることまで見破って侮蔑を込めた目さえ向けるのだから、最悪の気分にされた。……どうやらルカスは相当人を見る目がないか、婚約者にぞっこんのようだったのだ。
私になびかなかったことに、私は失意と怒りを覚えた。そして、ルカスを口説き落とすのは無理だと判断した私は、別の男を探そうとした。しかし、それが不可能になってしまった。
何故なら、私が婚約者のいる男を無理矢理口説こうとしていたことが両親と姉にばれてしまったのだ。しかも、ばらしたのはそれをよく知るルカスだった。どうやら、イムラン侯爵家の婚約を白紙にしようと企てたと訴えてきたらしい。しかも、慰謝料まで請求してきたからはた迷惑極まりない。……このことで両親はカンカンに怒り、姉はこれ見よがしに私を嘲笑った。
……本当に屈辱的だった。ルカス・イムランという男をどうしようもなく呪ったわ。
私の今の名はフミーナ・イカゾノス。以前の名前は、忌々しい思い出の象徴のようなので、もう思い出したくもない。随分前に没落した貴族の名なんて周りに笑われるだけだからね。若かりし頃の私の、挫折と屈辱と苦痛を思い起こす名前なんてね。
◇
私の産まれた家は子爵家だった。私はそこの次女であり、いずれはどこかの貴族の家を相手に政略結婚する予定だった。子供の頃の、貴族令嬢だった頃の私は不器用ではあったけど美貌に恵まれていたこともあったから、いい男を捕らえることはできる自信があった。
ただ、長女にして私の姉はそうでもなかった。姉はそこそこ綺麗な方だったんだけど、妹の私の方が綺麗だと周りが比べるため、私に対してコンプレックスを持ってしまった。それがもとで姉は私に対して冷たい態度を取ることが多く、よく八つ当たりされた。私もそんな酷い姉が大嫌いだったため、私達の姉妹関係は最悪だった。
姉の婚約が決まった時、私は意地悪な姉を悔しがらせてやろうと思って、姉の婚約者よりも格上の相手と婚約しようと企てた。姉の婚約者は伯爵令息だったから、私は侯爵か公爵の令息をターゲットに決めた。本当は王族の方がよかったんだけどね。
当時は、公爵の令息で私と年が近い人はいなかったから仕方なく侯爵令息にターゲットを絞った。それで良さそうな条件になったのがイムラン侯爵家の嫡男、ルカス・イムランだった。当時のルカスには婚約者がいたけど、私の美貌をもってすれば簡単に奪えると思って、何度も好意を持っているかのような思わせぶりな発言をしながら接触を図った。
しかし、肝心のルカスは私に全く興味を持たず、それどころか私が何かするたびに苦言を呈したり厳しく注意するばかりで何度も苛立たせられた。それに、このままではマズいと思った私は、二人きりになった時に思い切って嘘の愛の告白までやってのけた。それなのに、ルカスはそれさえも一蹴してしまう。挙句には、私が爵位目当てであることまで見破って侮蔑を込めた目さえ向けるのだから、最悪の気分にされた。……どうやらルカスは相当人を見る目がないか、婚約者にぞっこんのようだったのだ。
私になびかなかったことに、私は失意と怒りを覚えた。そして、ルカスを口説き落とすのは無理だと判断した私は、別の男を探そうとした。しかし、それが不可能になってしまった。
何故なら、私が婚約者のいる男を無理矢理口説こうとしていたことが両親と姉にばれてしまったのだ。しかも、ばらしたのはそれをよく知るルカスだった。どうやら、イムラン侯爵家の婚約を白紙にしようと企てたと訴えてきたらしい。しかも、慰謝料まで請求してきたからはた迷惑極まりない。……このことで両親はカンカンに怒り、姉はこれ見よがしに私を嘲笑った。
……本当に屈辱的だった。ルカス・イムランという男をどうしようもなく呪ったわ。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!
ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。
侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。
そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。
「国外追放となってもアイリス以外は要りません」
国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。
両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる