ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

文字の大きさ
1 / 252
第0章 豹変編

プロローグ

しおりを挟む
 魔法。それはこの世界のでは一般常識なものである。思春期ごろに自然に身につくのだ。その力をいつまでたっても使えないでいる者は、無能・役立たず等と呼ばれる。
 王国の辺境の村に生まれたロー・ライトという名のこの少年もその一人である。青い瞳で、赤い髪に少し黒が混ざった頭髪が特徴だ。彼は16歳にもなって魔法が身につかなかったのだ。その頃の彼の境遇は最悪で、周りから蔑まされる毎日である。その上、両親もいないためほとんど一人で生きているようなものだ。
 そんな彼が今、迷宮の中で魔物を警戒しながら先へ進んでいる。心に暗い炎を燃やして。
「必ず...、生きて出てやる...」
 何故こんなことになっているのかは、少し前にさかのぼる。

数日前。

 ローとほぼ同年代の幼馴染たちが、生まれ育った村を旅立つことになった。戦闘向けの魔法を持ち、十分に使いこなせるようになっので、冒険者役場で働く冒険者を始めるつもりのようだ。
 彼らは魔法を使えないローに魔法をぶつけていじめていたが、送別会が行われるこの日はいつもよりも過激だった。

 家に帰りつくころには、仕事の疲れと痛みのせいでベッドの上でぐったりしていた。

「どうして僕だけこんな目に…」

 何百回こんなことをつぶやいただろうか。ローは幼い頃からとてもやさしい子供なので幼馴染たちとも仲良しだった。しかし、魔法が使えないということが分かってしまった時から少しずつ疎遠になり、今の関係に至る。

 気が付くと隣の家が騒がしい。どうやら送別会が行われているようだ。声が聞こえる。いろんな話をしている。
 特に自分を嘲笑する声が聞こえる。
 今も昔も悪ガキだった者、昔だけは仲が良かった者、あまり会話をしなかった者の声が。

 そして、…一番仲が良かった隣の家の女の子の声が! 彼女がローを侮辱する声が!

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 彼女の言葉が決定打になった。もう限界だ。傷ついた身でありながら、ローは窓から外へ飛び出してそのまま走り出した。頭の中は絶望しかなかった。負の感情でいっぱいだった。自分以外の、世界のすべてに怨嗟の声を口にしていた。

「どうして! どうして! 魔法がないだけでこんな! 僕が何をした! どうしていじめられるんだ! どうして裏切られるんだー!」

 しばらく走り続けていると、空から大きな音と光が降ってきた。

「ワアッ!」

 ローは雷に驚いて転んでしまった。

「ハアッハアッ…雷かぁ。ハアッハアッ」

 そのまま倒れたまま気を失ってしまった。走り続けて体力が尽きたのだ。

翌日。

 気が付くと朝日が目に入った。どうやらそのまま寝込んでしまったのだ。

「ああ、朝か。雷は嫌いだったけどおかげで死ぬまで走らずに済んじゃったな」
「あーもう嫌になった。あの村に戻ってもこれから先も同じことの繰り返しだしなぁ」

 ローは自分の故郷に愛想が尽きてしまった。そのため村から出ていこうと決めたのだが、両親の墓参りだけが気がかりだった。彼が出ていけば誰も墓参りに来ないだろう。
 少し悩んだ末に最後の墓参りをして出ていくことに決めた。

「父さんと母さんにお別れしないとな。もう戻ってくる気にもなれないし」

 家に戻って万全の準備をしなければならない。魔法を持たない身で旅をするのはかなり危険が伴うことぐらいローは理解していた。

「さて、戻るか。ん? これは井戸かな?」

 隣に古井戸があるのに気が付くとのどが渇いてきた。腹もすいている。

「ちょうどいいや」

 ローが水を汲もうとしたその時だった。

ドンッ!!

「えっ!ちょっ!わあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 誰かがローを突き飛ばしたのだ。そしてローは古井戸の底の闇に落ちていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...