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第0章 豹変編
VSヘビ
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全快した後、片手と両足を器用に使って新しい石のナイフを作った。そして、これからのことを考える。
(石のナイフはここでも作れるが、あまり役に立たない。どれだけ敵に見つからないか、敵から逃げられるかが重要になる。見つからないためには前だけ見ても駄目、周囲に注意する。音がして振り向くでは遅い気配を感じ取れるよう気を付けよう。見つかった時は、石のナイフをすぐに投げつけて逃げよう。そして自分の都合のいいことは考えないようにしよう)
依然のローに比べ、よく考えられるようになったのは復讐心と生への執着からくるものだ。彼の生存率は上がったかもしれない。魔法があればさらに上がったのだが……
「さて、行くか」
石のナイフを多く準備してその場から行こうとしたが、その先で嫌な気配を感じた。
「嘘だろ…」
嫌な気配は気のせいではなく、奥からかすかに音が近づいてくるのが分かる。彼は逃げることができない状況で魔物と遭遇することになれば、隠れるか逃げる隙を作るしかないと考えていた、回復薬のあるこの場所での遭遇は想定外だった。
(なんてこった! まさかこの水が目当てか!? いや俺か!?)
さすがにそれはないだろうと思うが、それでも対処しないよりはいいと思って水の後ろのほうに移動した。目当てが水ならこれで隙を作る。
魔物が目で見える範囲にまで来た。蛇の頭にムカデ、蛇の体にムカデの足を付けた魔物だ。人間大ぐらいあって気性が荒い。ローに注目して、水には目もくれないようだ。
(ヤバい。石のナイフで逃げられるか? 蛇といえば毒! 噛まれたら終わりだ!)
敵について考えているうちに、敵のほうから飛びついてきた。その直後にローは横に避けた。間一髪で噛まれずに済んだ。この蛇の魔物について考えられることは、
(動きが早い。気性が荒い。多分追ってくる。殺せるなら殺すべき。)
蛇を避けた一瞬の隙に、ローはナイフを力いっぱい蛇の頭に突き刺した。蛇の頭を貫き、壁に固定したが、蛇の胴体が絡みついてきた。ローの体を締め付ける。
「ぐっ! くそっ! ここで死ね!」
ナイフから手を放すと、もう一つのナイフを取り出して、蛇の頭と首の付け根に突き刺した。
「ここで殺す!」
蛇の首と体を強引に切り離そうとしたのだ。その直後、締まりが緩んだように感じた。
「くっ! 今だ!」
手に持ったナイフを力いっぱい振った。すると蛇の首が半分ほど切り離されたのだ。胴体のほうも力尽きて、ローは解放された。
「ふー。ヤバかったー。……ははは」
ローは、蛇の血で濡れた片手を見て、魔物を殺したことを実感した。
「俺は魔物に勝ったんだ! あっははははははは!」
初めての勝利に歓喜する。血で濡れた手が痺れていることに気づかぬまま。
だが、すぐに新たな危険が迫る。
ギチギチ、シュルルル、ガサガサ
「……!」
奥から、蛇系の魔物がたくさん迫ってきていた。
ムカデ足の蛇、角がある蛇、複眼の蛇、首が双頭の蛇、様々だ。ローは、絶句しながらも、どうにか思考を働かせる。
(また来た! どうする! 多い! 殺せない! 逃げなきゃ! どうやって! あれ? 手が……)
動かなくなった右手の異変に気付いた時には、体中から痺れを感じていた。
「どうして手が、まっまさか!」
ローは、素手で蛇の魔物の血に触れている。それが原因だろう。
(しまった! 血に触れるだけでも駄目だったのか! くそ! 水を飲まないと!)
すぐ傍の回復の水を飲んで、毒を消そうとしたが体が思うように動かない。
「動け! 動け! 動けええええええええええええええええええええええええええ!」
必死に体を動かそうとしている間に蛇が迫る。そして、一匹が噛みついた。
「ひっうぐっ!」
さらに、ほかの蛇が噛みついたり、巻き付いてきた。
「くっ! くそ、くそ、くそ、くそ……く……」
動かないローの体を、たくさんの蛇が巻き付いてる。そんな状況では誰でも絶望するしかないのだが、ローの頭の中は怒りと憎しみしかなかった。
(やっぱりここで死ぬしかなかったてのか、生きたいと思うことの何が悪いんだ、こんな理不尽に屈したままでいろってのか、ふざけんな! 殺す! 殺してやる!)
一度絶望から立ち直ったローの心には、絶望よりも更なる怒りが込み上げる。怒りと憎しみのあまり、ついに狂気的になる。
「ググ……こっ殺す! ぶっ殺す! ははっ! 殺してやる! ぶっ殺してやるぁ!」
ローの頭の中には、憎いもの全てが浮かんでいた。自分を蔑んだ人間、襲い来る魔物、大きな雷等、あらゆるものが自分の敵だったと思いながら。
「ぐ……ううう……」
(お前らも! 同じ目に! いや、それ以上ひどい目に合わせてやる!)
妄想の中で、目の前の敵を苦しめる自分を思い浮かべる。蛇を雷で殺すという想像をしたその時、ローの体が紫色に光りだしたのだ。
そして、
ドゴオオオオオオオオオオオオッ!!
雷の轟音が響いた。頭の中が真っ白になった。
(石のナイフはここでも作れるが、あまり役に立たない。どれだけ敵に見つからないか、敵から逃げられるかが重要になる。見つからないためには前だけ見ても駄目、周囲に注意する。音がして振り向くでは遅い気配を感じ取れるよう気を付けよう。見つかった時は、石のナイフをすぐに投げつけて逃げよう。そして自分の都合のいいことは考えないようにしよう)
依然のローに比べ、よく考えられるようになったのは復讐心と生への執着からくるものだ。彼の生存率は上がったかもしれない。魔法があればさらに上がったのだが……
「さて、行くか」
石のナイフを多く準備してその場から行こうとしたが、その先で嫌な気配を感じた。
「嘘だろ…」
嫌な気配は気のせいではなく、奥からかすかに音が近づいてくるのが分かる。彼は逃げることができない状況で魔物と遭遇することになれば、隠れるか逃げる隙を作るしかないと考えていた、回復薬のあるこの場所での遭遇は想定外だった。
(なんてこった! まさかこの水が目当てか!? いや俺か!?)
さすがにそれはないだろうと思うが、それでも対処しないよりはいいと思って水の後ろのほうに移動した。目当てが水ならこれで隙を作る。
魔物が目で見える範囲にまで来た。蛇の頭にムカデ、蛇の体にムカデの足を付けた魔物だ。人間大ぐらいあって気性が荒い。ローに注目して、水には目もくれないようだ。
(ヤバい。石のナイフで逃げられるか? 蛇といえば毒! 噛まれたら終わりだ!)
敵について考えているうちに、敵のほうから飛びついてきた。その直後にローは横に避けた。間一髪で噛まれずに済んだ。この蛇の魔物について考えられることは、
(動きが早い。気性が荒い。多分追ってくる。殺せるなら殺すべき。)
蛇を避けた一瞬の隙に、ローはナイフを力いっぱい蛇の頭に突き刺した。蛇の頭を貫き、壁に固定したが、蛇の胴体が絡みついてきた。ローの体を締め付ける。
「ぐっ! くそっ! ここで死ね!」
ナイフから手を放すと、もう一つのナイフを取り出して、蛇の頭と首の付け根に突き刺した。
「ここで殺す!」
蛇の首と体を強引に切り離そうとしたのだ。その直後、締まりが緩んだように感じた。
「くっ! 今だ!」
手に持ったナイフを力いっぱい振った。すると蛇の首が半分ほど切り離されたのだ。胴体のほうも力尽きて、ローは解放された。
「ふー。ヤバかったー。……ははは」
ローは、蛇の血で濡れた片手を見て、魔物を殺したことを実感した。
「俺は魔物に勝ったんだ! あっははははははは!」
初めての勝利に歓喜する。血で濡れた手が痺れていることに気づかぬまま。
だが、すぐに新たな危険が迫る。
ギチギチ、シュルルル、ガサガサ
「……!」
奥から、蛇系の魔物がたくさん迫ってきていた。
ムカデ足の蛇、角がある蛇、複眼の蛇、首が双頭の蛇、様々だ。ローは、絶句しながらも、どうにか思考を働かせる。
(また来た! どうする! 多い! 殺せない! 逃げなきゃ! どうやって! あれ? 手が……)
動かなくなった右手の異変に気付いた時には、体中から痺れを感じていた。
「どうして手が、まっまさか!」
ローは、素手で蛇の魔物の血に触れている。それが原因だろう。
(しまった! 血に触れるだけでも駄目だったのか! くそ! 水を飲まないと!)
すぐ傍の回復の水を飲んで、毒を消そうとしたが体が思うように動かない。
「動け! 動け! 動けええええええええええええええええええええええええええ!」
必死に体を動かそうとしている間に蛇が迫る。そして、一匹が噛みついた。
「ひっうぐっ!」
さらに、ほかの蛇が噛みついたり、巻き付いてきた。
「くっ! くそ、くそ、くそ、くそ……く……」
動かないローの体を、たくさんの蛇が巻き付いてる。そんな状況では誰でも絶望するしかないのだが、ローの頭の中は怒りと憎しみしかなかった。
(やっぱりここで死ぬしかなかったてのか、生きたいと思うことの何が悪いんだ、こんな理不尽に屈したままでいろってのか、ふざけんな! 殺す! 殺してやる!)
一度絶望から立ち直ったローの心には、絶望よりも更なる怒りが込み上げる。怒りと憎しみのあまり、ついに狂気的になる。
「ググ……こっ殺す! ぶっ殺す! ははっ! 殺してやる! ぶっ殺してやるぁ!」
ローの頭の中には、憎いもの全てが浮かんでいた。自分を蔑んだ人間、襲い来る魔物、大きな雷等、あらゆるものが自分の敵だったと思いながら。
「ぐ……ううう……」
(お前らも! 同じ目に! いや、それ以上ひどい目に合わせてやる!)
妄想の中で、目の前の敵を苦しめる自分を思い浮かべる。蛇を雷で殺すという想像をしたその時、ローの体が紫色に光りだしたのだ。
そして、
ドゴオオオオオオオオオオオオッ!!
雷の轟音が響いた。頭の中が真っ白になった。
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