ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

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第0章 豹変編

穴と絶望

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 カマキリが追ってくる様子がないと感じた頃には、ローは絶望していた。何やら光る水たまりがあるだけで、特に進む道はなかったのだ。

「……何だよそれ……。ここまで来てそんな……」

 ローは、出血多量と空腹でもう動けなかった。重症と体力の限界である。

「……もう無理だ……。はは……いや、最後に水だけでも飲めるだけましか……?」

 気力をなくし、まともな思考さえできない。そのまま光る水たまりに向かって倒れた。
そして水を飲みながら、目をつむり、意識を失いかけたが……。

(……? ……何だ? 痛みが薄くなった? 疲れが消えていく? 意識がはっきりしていく?)

 水を飲んだ時、体が回復するのを感じ、さらに飲み続けると落ち着いた考えられるようになった。この光る水はおそらく……

(回復薬? こんなところに? 湧き出てるみたいだから天然のものか?)

 よく考えると光ってるだけで普通の水とは思わないし、すぐ飲もうとするのは安直だったが、おかげで彼は助かった。今の彼は出血が止まり、体力は全快し、空腹も感じなかった。

「助かったのか……。だけど後はどうするかな……」

 まだ生きられることに彼は素直に喜べなかった。むしろ死んでもよかったとすら思う。
 今のローが回復したところで戦うすべがないのでここからは出られない。仮に出ていけばカマキリか別の魔物に食われるだろう。

 助けを待つとしても、ローしか知らない迷宮で誰が助けに来るだろうか、無能のローを。
 こんな場所で魔物に怯えながら過ごすなど正気ではいられない。
 そう考えた時、ローは再び気力をなくし、光る水から離れたところで寝転がった。生きて出ることを諦めてしまったのだ。

「ははは! もうおしまいだ! ……いや、やっと終われるんだ。」

 彼は、空腹で飢え死にという最後を選んでしまった。



三日後。

 ローは苛立っていた。空腹と、そしてそんな方法で死のうとした自分に。

「………………………………………………………………………………イライラする」

 頭の中は苛立ちでおかしくなっていた。ついに精神に異常をきたしたのだ。そのうち、苛立ちの原因を空腹以外に求めた、自分の過去を思い出しながら。

「僕を……カマキリが切った……水が流した……井戸に落とされた……雷が脅かした……」

 呻くようにつぶやく、恨み言を。

「みんな……優しかったのに……魔法がない……それだけで……いじめた……」

 過去に対して、

「裏切られたんだ……村の人に……友達に……幼馴染に……仲良かったあいつに!」

 怨嗟の声が出始める。目に涙を浮かべながら、

「あいつらは裏切り者! 敵だ! 俺はあいつらにまだ何もしてない! 見返してない! 仕返しをしてない! 傷つけてない! 痛み付けてない! 壊してない! 恨みを晴らしてない!」

 彼の心の奥にしまっていた負の感情があふれ出てきた。それは復讐心に変わる。

「何もできないままだと! こんなところで死ねるか!」

 ローは、怒りと憎しみから生きる気力を取り戻した。そして、何とか這いつくばるように移動して回復の水を飲んだ。そして、決意する。

「生きて出てやる! 僕が、いや、俺は生き残ってやる!」
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