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第4章 因縁編

撤退する3人

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「魔物は倒した。ひとまずここを離れるぞ。誰も見ていないうちにな」

 ローグは魔法協会を後にするというが、ミーラもルドガーも唖然としたままだった。ローグをジッと見ているまま固まってしまっている。

(これぐらいしないと倒せない魔物だったんだが、驚くのも無理はないか……)

 今の二人の気持ちは分かるが、ローグとしては一刻も早くここを離れるべきだと思っていた。かなり派手に倒したため、人が集まって騒ぎになるのも時間の問題だからだ。大きな爆発音に破壊された壁、大きな魔物の死骸、大騒ぎの種には十分すぎる。

「二人とも!」
「えっ、あっ、はい!」
「あ、ああ、すまん。なんだ? というか、坊主は大丈夫なのか? あんな魔法をぶっ放すなんて……」
「そ、そうよ! すごい威力だったよ!」

 もう一度声を掛けてようやく二人は気付いた。

「あ俺はいいから早くここを離れるぞ! 騒ぎの中心になるのはまずいからな! 急いで戻るんだ!」
「も、戻るって?」
「分かった! ほら行くぞ、嬢ちゃん!」

 ローグはすでに走り出していた。ローグの真意を察したルドガーはミーラの手を引っ張って同じく走り出す。


 だがここで、二人に思いもよらない事態が発生した。

「くっ……」

ガクン

「「っ!?」」

 ローグが突然立ち止まり、膝を曲げて激しく息切れし始めたのだ。あれだけ強かった少年が今にも倒れそうなほど消耗しているのだ。

「はあはあ……くう……」
「ローグ! どうしたの!?」
「坊主!?」
「魔力、も……体力も……限界、に……近い」
「「っ!」」

 ローグの言葉を聞いた二人は、理解した(ミーラは?)。ローグは今日、多くの戦いを経験した。作戦を指揮し、敵を操り、幹部を倒し、魔法の秘密を暴いた。そして、二体の魔物を倒したのだ。そのうちの一体は3人で戦ってやっと倒した。ここまでして魔力と体力が尽きないほうがおかしいくらいだ。ローグが強すぎたために、二人は限界について失念していた。

「坊主、回復させる! 待ってろよ!」
「だ、ダメだ……後でいい……ここを離れるんだ……!」
「そんな!」
「ここに、いたら……厄介ごとに……巻き、込まれる……早く……!」
「「……!」」

 ローグの言う通りだと思ったルドガーは、ローグを強引に肩に担いでそのまま走り出した。

「ル、ルドガーさん!?」
「坊主の言う通りだ。ここを離れることのほうが先決だ。行くぞ!」
「……おう……」

 ミーラは驚くが、そのまま一緒に走り出した。こうして、このまま3人は魔法協会を去った。

 ローグが魔法協会を後にすることにしたのは、再び暴徒が集まるからではなかった。魔物を倒す過程で魔法による爆発を起こしたために、国の兵士や騎士が駆けつける危険がったからだ。

 何の準備のしていないうえに体力と魔力を消耗した状態で、国の兵士や騎士を相手にするなど無謀もいいところだ。ルドガーから情報をもらってはいたが、すでにだいぶ過去の情報になってしまうので、それは役に立たない。

 魔法協会を通して、『ロー・ライト』も『ローグ・ナイト』も知れ渡った可能性があるが、直接対決するのはまだ早いのだ。少なくとも今は。

 ローグの復讐対象の一人を追い詰めるためには、まだその準備もなければそういう時期でもないのだ。





 しかし、3人は既に目をつけられていた。国そのものに。
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