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第4章 因縁編
幕間・王国の密偵(前編)
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魔法協会。
「坊主、回復させる! 待ってろよ!」
「だ、ダメだ……後でいい……ここを離れるんだ……!」
「そんな!」
「ここに、いたら……厄介ごとに……巻き、込まれる……早く……!」
「「……!」」
長身の男が少年を強引に肩に担いでそのまま走り出した。
「ル、ルドガーさん!?」
「坊主の言う通りだ。ここを離れることのほうが先決だ。行くぞ!」
「……おう……」
少女が一緒に走り出した。こうして、このまま3人は魔法協会を去ったのだ。
その様子を、魔法協会の向かい側の建物から注意深く観察していた男がいた。男は王国の暗部に所属するもので、密偵や暗殺などを担っている。そんな彼の目的は、魔法協会の調査だった。
その命を受けた要因は、王都全体に響き渡った『会話』のせいで大騒ぎになり、城に暴徒が集まってしまったからだ。城にいた王は、この状況を嘆き一刻も早く打開しなければならないとして、原因である『会話』の発信源を探すことにした。そして、その発信源が魔法協会にあると考えた王国の上層部の密命で、魔法協会側に何の連絡もなしにこの男が差し向けられたのだ。
男はすぐに魔法協会に潜入しなかった。何故すぐに潜入しないのかというと、その時の魔法協会は、多くの暴徒が押し寄せていたのだ。その数は、城に集まった暴徒と化した民衆と同じかそれ以上だったのだ。この状況を魔法協会側はどうするのか、男は少し観察することにしていたが、予想だにしなかった事態になってしまった。
レシオン・ザールという構成員が民衆に向けて謝罪の意を示している途中で、魔法協会から魔物が出てきたのだ。しかも、魔法協会の構成員を民衆の目の前で殺害してしまった。暴徒だった民衆の頭は、怒りと憎しみから恐怖に切り替わりパニックを引き起こしてしまった。
こんな事態は危険すぎると感じた男は、城に戻って兵士か騎士をよこしてもらうか迷ってしまった。それもそのはず、城も暴徒の対応で大変なのに、ここに戦力を回す余裕があるはずがないのだ。だが、流石に見ているだけなのはまずいと思った男は自分が魔物を処理しようと決意した時に、おかしなものを見てしまった。
多くの民衆が逃げ出した中で、一人の少年が魔物の前に立ったのだ。更に、その少年は魔物の前だというのに落ち着いているように見えた。そして、少年は魔物と戦いを始めた。そして、あっという間に魔物を倒してしまった。
驚いた男は少年に注目するが、潜伏している建物と魔法協会の位置が離れているため、黒い髪だということしか分からない。その少年に長身の男と少女がそばにやってきて、少女が少年に抱き着いてきた。おそらく仲間なのだろう。そう思った時、異変が起こった。
「ウォルルルルルルルルルルルルゥッ!」
(これは!? まさか!?)
突然、新たな魔物の唸り声が響いてきた。魔法協会の奥から聞こえてきたそれは徐々に近づいてくる。長身男が少女の手を引いて、物陰に隠れた。その一方で少年は魔法を発動する。赤紫色の光の壁が出現したことから防御系の魔法なのだろう。その判断は正しかった。
「ウォルルルゥアアアッ!
バキンッ!
「ウォオオッ!?」
唸り声の主と思われる魔物が少年に向かって噛みつこうとしてきたが、展開された防御魔法に触れた瞬間に派手に弾かれた。そこで男は魔物の全容を見て絶句した。出てはいけないものだったのだ。
魔物は全長3メートルほどある狼型。全身は緑色の固い鱗に覆われて、鋭い爪と牙を持っている。顔に8っつの真っ赤な目があり、口は従来の狼よりも少し長い。
どう見ても、魔法協会が最近捕まえたという迷宮の魔物だったのだ。男がそう思ったのは、魔法協会からもらった魔物の資料に一致していたからだ。その資料の中で、多くの構成員を殺してしまった魔物があいつだった。
男は自分の手に負えないと考え、今度こそ城に戻るべきだと思っていたが、そんなときに3人と魔物の戦いが始まった。
「ウォルルルルルル!」
(始まった!)
魔物は少年に向かって突進していった。少年は迎え撃とうとして、その手から光の剣のような魔法を発動した。
ダンッ!
だが、あと一歩っというところで魔物は方向転換した。少年の仲間と思われる二人の人物のほうにだ。それに反応した少年は魔物に向かって飛び出した。体が魔力のオーラを放っている。魔法を使って身体能力を上げたのだろう。その動きに目を見張るものがある。あれなら魔物に追いつく。男はそう思ったが、
ダンッ!
ここで魔物は、再び方向転換した。その先にいるのは少年だった。
(あの魔物、あんな体勢からまた方向を変えた!?)
今の少年は走ってきたのではなく、飛び出している。地に足が着かない状態だと、どう見ても不利だ。これが偶然ではなく狙った動きだとすれば、あの魔物はかなり知能が高い。恐るべき魔物が解き放たれてしまったと男は思った。そして……
「ウォルルルルルル!」
少年の血が舞った。
「坊主、回復させる! 待ってろよ!」
「だ、ダメだ……後でいい……ここを離れるんだ……!」
「そんな!」
「ここに、いたら……厄介ごとに……巻き、込まれる……早く……!」
「「……!」」
長身の男が少年を強引に肩に担いでそのまま走り出した。
「ル、ルドガーさん!?」
「坊主の言う通りだ。ここを離れることのほうが先決だ。行くぞ!」
「……おう……」
少女が一緒に走り出した。こうして、このまま3人は魔法協会を去ったのだ。
その様子を、魔法協会の向かい側の建物から注意深く観察していた男がいた。男は王国の暗部に所属するもので、密偵や暗殺などを担っている。そんな彼の目的は、魔法協会の調査だった。
その命を受けた要因は、王都全体に響き渡った『会話』のせいで大騒ぎになり、城に暴徒が集まってしまったからだ。城にいた王は、この状況を嘆き一刻も早く打開しなければならないとして、原因である『会話』の発信源を探すことにした。そして、その発信源が魔法協会にあると考えた王国の上層部の密命で、魔法協会側に何の連絡もなしにこの男が差し向けられたのだ。
男はすぐに魔法協会に潜入しなかった。何故すぐに潜入しないのかというと、その時の魔法協会は、多くの暴徒が押し寄せていたのだ。その数は、城に集まった暴徒と化した民衆と同じかそれ以上だったのだ。この状況を魔法協会側はどうするのか、男は少し観察することにしていたが、予想だにしなかった事態になってしまった。
レシオン・ザールという構成員が民衆に向けて謝罪の意を示している途中で、魔法協会から魔物が出てきたのだ。しかも、魔法協会の構成員を民衆の目の前で殺害してしまった。暴徒だった民衆の頭は、怒りと憎しみから恐怖に切り替わりパニックを引き起こしてしまった。
こんな事態は危険すぎると感じた男は、城に戻って兵士か騎士をよこしてもらうか迷ってしまった。それもそのはず、城も暴徒の対応で大変なのに、ここに戦力を回す余裕があるはずがないのだ。だが、流石に見ているだけなのはまずいと思った男は自分が魔物を処理しようと決意した時に、おかしなものを見てしまった。
多くの民衆が逃げ出した中で、一人の少年が魔物の前に立ったのだ。更に、その少年は魔物の前だというのに落ち着いているように見えた。そして、少年は魔物と戦いを始めた。そして、あっという間に魔物を倒してしまった。
驚いた男は少年に注目するが、潜伏している建物と魔法協会の位置が離れているため、黒い髪だということしか分からない。その少年に長身の男と少女がそばにやってきて、少女が少年に抱き着いてきた。おそらく仲間なのだろう。そう思った時、異変が起こった。
「ウォルルルルルルルルルルルルゥッ!」
(これは!? まさか!?)
突然、新たな魔物の唸り声が響いてきた。魔法協会の奥から聞こえてきたそれは徐々に近づいてくる。長身男が少女の手を引いて、物陰に隠れた。その一方で少年は魔法を発動する。赤紫色の光の壁が出現したことから防御系の魔法なのだろう。その判断は正しかった。
「ウォルルルゥアアアッ!
バキンッ!
「ウォオオッ!?」
唸り声の主と思われる魔物が少年に向かって噛みつこうとしてきたが、展開された防御魔法に触れた瞬間に派手に弾かれた。そこで男は魔物の全容を見て絶句した。出てはいけないものだったのだ。
魔物は全長3メートルほどある狼型。全身は緑色の固い鱗に覆われて、鋭い爪と牙を持っている。顔に8っつの真っ赤な目があり、口は従来の狼よりも少し長い。
どう見ても、魔法協会が最近捕まえたという迷宮の魔物だったのだ。男がそう思ったのは、魔法協会からもらった魔物の資料に一致していたからだ。その資料の中で、多くの構成員を殺してしまった魔物があいつだった。
男は自分の手に負えないと考え、今度こそ城に戻るべきだと思っていたが、そんなときに3人と魔物の戦いが始まった。
「ウォルルルルルル!」
(始まった!)
魔物は少年に向かって突進していった。少年は迎え撃とうとして、その手から光の剣のような魔法を発動した。
ダンッ!
だが、あと一歩っというところで魔物は方向転換した。少年の仲間と思われる二人の人物のほうにだ。それに反応した少年は魔物に向かって飛び出した。体が魔力のオーラを放っている。魔法を使って身体能力を上げたのだろう。その動きに目を見張るものがある。あれなら魔物に追いつく。男はそう思ったが、
ダンッ!
ここで魔物は、再び方向転換した。その先にいるのは少年だった。
(あの魔物、あんな体勢からまた方向を変えた!?)
今の少年は走ってきたのではなく、飛び出している。地に足が着かない状態だと、どう見ても不利だ。これが偶然ではなく狙った動きだとすれば、あの魔物はかなり知能が高い。恐るべき魔物が解き放たれてしまったと男は思った。そして……
「ウォルルルルルル!」
少年の血が舞った。
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