68 / 71
おまけ18 元伯爵令嬢の末路5
しおりを挟む
男達は武器を持ってソルティアの乗る馬車に向かってくる。ソルティアへの復讐だ。武器で痛めつけ素手で殴り足で蹴り、女としての尊厳を奪う。少し前に彼女の姉とその友人にしようとしていたことをソルティアにするつもりなのだ。
そして、最後は命も……。
「ひいいいい!」
肝心のソルティアは、彼らが自分に何をしようとしているのか察して恐怖するしかない。逃げようと思ったが恐ろしくて体が思うように動かないため、馬車の中で縮こまるしかなかった。
「う、うわああ、し、死にたくない……死にたくない……!」
恐怖と絶望がソルティアの頭の中を支配していく。
(こんなことになるなんて! これも、自業自得だっていうの!? 私の、これまでの行いのせいで!?)
ソルティアは今再び己の行いを後悔する。これから自分に降りかかる不幸になすすべもないのだから。きっと自分は散々痛めつけられて殺されるに違いないとソルティアは絶望した。
「あああ、お姉様~……」
ソルティアの脳裏に浮かんだのは、カリブラでも両親でも義兄でもなく、姉のアスーナの顔だ。皮肉にも、一番頼りたくて一番頼ってきた相手が姉だったのだと今になってソルティアは気づいた。命の危機が迫る時に、今一番頼ることができない状況で。
――ただ、ソルティアの運命はここで途切れることはなかった。
「――そこまでだクズども」
若い男の声が不思議とはっきり聞こえた。感情の籠もっていない淡々とした声色は明らかに襲いかかってくる男達とは違う。不思議に思ったソルティアは何事かと顔をあげて窓を見れば、驚くべき光景があった。
「えぁっ!?」
「ぐたっ!?」
「ぜしゅっ!?」
「いぐっ!?」
「どばっ!?」
どういうわけか、ソルティアを乗せた馬車の御者が襲いかかってくる男達を槍で叩きのめしていたのだ。たった一人で武器を持った男達をなぎ倒す御者の姿に、ソルティアは唖然とした。
「……何あれ」
馬車の御者は二十代後半の地味で目立たない感じの男。それ意外にソルティアは知らない。そもそも会話すらしていないのだから、男達をなぎ倒す男のことをどう思えばいいのかも分からない。ただ、男達を『クズ』呼ばわりしている辺りからしてソルティアの敵では無さそうだが、頭が追いつかないソルティアは困惑するしかなかった。
「――撃土流我」
「「「「「ぶわああああっ!」」」」」
御者は槍を回転させて満身創痍にまでなった男達を容赦なく薙ぎ払った。薙ぎ払われた男達は倒れてピクリとも動かない。それはつまり……。
「ソルティア嬢、お気になさらず」
「――っ!?」
御者が初めてソルティアに口を利いた。しかし、未だに彼が敵か味方かも分かっていないソルティアは何も答えられない。思わず後ろに倒れ込むが、御者は構うこと無く続ける。
そして、最後は命も……。
「ひいいいい!」
肝心のソルティアは、彼らが自分に何をしようとしているのか察して恐怖するしかない。逃げようと思ったが恐ろしくて体が思うように動かないため、馬車の中で縮こまるしかなかった。
「う、うわああ、し、死にたくない……死にたくない……!」
恐怖と絶望がソルティアの頭の中を支配していく。
(こんなことになるなんて! これも、自業自得だっていうの!? 私の、これまでの行いのせいで!?)
ソルティアは今再び己の行いを後悔する。これから自分に降りかかる不幸になすすべもないのだから。きっと自分は散々痛めつけられて殺されるに違いないとソルティアは絶望した。
「あああ、お姉様~……」
ソルティアの脳裏に浮かんだのは、カリブラでも両親でも義兄でもなく、姉のアスーナの顔だ。皮肉にも、一番頼りたくて一番頼ってきた相手が姉だったのだと今になってソルティアは気づいた。命の危機が迫る時に、今一番頼ることができない状況で。
――ただ、ソルティアの運命はここで途切れることはなかった。
「――そこまでだクズども」
若い男の声が不思議とはっきり聞こえた。感情の籠もっていない淡々とした声色は明らかに襲いかかってくる男達とは違う。不思議に思ったソルティアは何事かと顔をあげて窓を見れば、驚くべき光景があった。
「えぁっ!?」
「ぐたっ!?」
「ぜしゅっ!?」
「いぐっ!?」
「どばっ!?」
どういうわけか、ソルティアを乗せた馬車の御者が襲いかかってくる男達を槍で叩きのめしていたのだ。たった一人で武器を持った男達をなぎ倒す御者の姿に、ソルティアは唖然とした。
「……何あれ」
馬車の御者は二十代後半の地味で目立たない感じの男。それ意外にソルティアは知らない。そもそも会話すらしていないのだから、男達をなぎ倒す男のことをどう思えばいいのかも分からない。ただ、男達を『クズ』呼ばわりしている辺りからしてソルティアの敵では無さそうだが、頭が追いつかないソルティアは困惑するしかなかった。
「――撃土流我」
「「「「「ぶわああああっ!」」」」」
御者は槍を回転させて満身創痍にまでなった男達を容赦なく薙ぎ払った。薙ぎ払われた男達は倒れてピクリとも動かない。それはつまり……。
「ソルティア嬢、お気になさらず」
「――っ!?」
御者が初めてソルティアに口を利いた。しかし、未だに彼が敵か味方かも分かっていないソルティアは何も答えられない。思わず後ろに倒れ込むが、御者は構うこと無く続ける。
23
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
〖完結〗時戻りしたので、運命を変えることにします。
藍川みいな
恋愛
愛するグレッグ様と結婚して、幸せな日々を過ごしていた。
ある日、カフェでお茶をしていると、暴走した馬車が突っ込んで来た。とっさに彼を庇った私は、視力を失ってしまう。
目が見えなくなってしまった私の目の前で、彼は使用人とキスを交わしていた。その使用人は、私の親友だった。
気付かれていないと思った二人の行為はエスカレートしていき、私の前で、私のベッドで愛し合うようになっていった。
それでもいつか、彼は戻って来てくれると信じて生きて来たのに、親友に毒を盛られて死んでしまう。
……と思ったら、なぜか事故に会う前に時が戻っていた。
絶対に同じ間違いはしない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全四話で完結になります。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる