18 / 80
04-3 好きになったかも(3) 恐怖ではない支配
しおりを挟む
カリストの声は確かに届いていた。
だが届いたのは、群衆のほんの一部にすぎない。
怒りに燃える者たちは耳を貸さず、叫びを繰り返す。
「言葉なんかで腹は膨れねえ!」
「今こそ城を落とせ!」
広場は完全に沸騰しつつあった。
その中心で、カリストは必死に手を伸ばす。
「待ってくれ! 武力で争えば……!」
だが次の瞬間、群衆の一人がカリストに掴みかかった。
「うるせえ! お前も王族の犬だろ!」
「くっ……!」
ユリウスは、バランスを失い倒れかけた。
だが、その瞬間。
「……そこまでだ」
低く響く声。
広場全体の空気が一変する。
レオンハルトが一歩、前に出た。
その巨躯から溢れ出す圧力に、群衆は息を呑む。
「俺は聖者レオンハルトだ。お前らが不満を抱くのは勝手だ。だが――」
レオンハルトが拳を振り下ろした瞬間。
轟音が広場を揺るがし、石畳が粉砕される。
群衆が息を呑む中、ロイはその姿を見つめ、胸が熱くなるのを抑えられなかった。
(……これだ。誰もが従う、圧倒的な力。……やはり、レオン様こそ……)
頬に朱を宿しながらも、騎士としての顔を崩さぬよう、必死に表情を整えた。
「これ以上、剣を振るうつもりなら……この拳で止める」
雷鳴のような声が響き渡る。
誰もが震え、武器を握る手を強張らせる。
その視線に、レオンハルトは鋭い光を宿し、堂々と歩を進めた。
「民を守るのも、国を守るのも、俺の役目だ。だが王子を脅かすなら一切の容赦はしねぇ」
その名を出した瞬間、ユリウスの胸が大きく跳ねた。
民衆は互いに顔を見合わせ、次第に武器を落とし始める。
「な……なんて力だ……」
「これが、聖者……」
「逆らえば、一瞬で……」
恐怖だけではない。
彼の背に立つ姿には、圧倒的な信頼と畏敬を呼び起こすものがあった。
やがて広場は静まり、残ったのは重苦しい沈黙だけ。
レオンハルトは拳を下ろし、群衆を見渡した。
「……いいか。怒りをぶつける相手は王族じゃねぇ。民を苦しめる腐った貴族共だ。奴らは私腹を肥やすため税を上げまくってると聞く。許せねぇよな?……俺が必ず引きずり出す。だから今は、剣を置け」
その言葉に、民の瞳に迷いが宿る。
そして、一人、また一人と武器を捨てていった。
やがて群衆全体が膝を折り、地面に額を擦り付ける。
「聖者様……!」
「どうか我らを導いてください……!」
広場は、一瞬で服従の場へと変わった。
その光景を見つめ、ユリウスは息を呑む。
――これが、王をも凌ぐ威光。
自分が目指していた「言葉の力」よりも、ずっと強く、民を従わせる力。
(まるで……彼こそが王のようだ……)
胸がざわめく。
羨望か、嫉妬か。
それとも、ただの動揺か。
ユリウスは答えを見出せぬまま、レオンハルトの背中を見つめ続けていた。
だが届いたのは、群衆のほんの一部にすぎない。
怒りに燃える者たちは耳を貸さず、叫びを繰り返す。
「言葉なんかで腹は膨れねえ!」
「今こそ城を落とせ!」
広場は完全に沸騰しつつあった。
その中心で、カリストは必死に手を伸ばす。
「待ってくれ! 武力で争えば……!」
だが次の瞬間、群衆の一人がカリストに掴みかかった。
「うるせえ! お前も王族の犬だろ!」
「くっ……!」
ユリウスは、バランスを失い倒れかけた。
だが、その瞬間。
「……そこまでだ」
低く響く声。
広場全体の空気が一変する。
レオンハルトが一歩、前に出た。
その巨躯から溢れ出す圧力に、群衆は息を呑む。
「俺は聖者レオンハルトだ。お前らが不満を抱くのは勝手だ。だが――」
レオンハルトが拳を振り下ろした瞬間。
轟音が広場を揺るがし、石畳が粉砕される。
群衆が息を呑む中、ロイはその姿を見つめ、胸が熱くなるのを抑えられなかった。
(……これだ。誰もが従う、圧倒的な力。……やはり、レオン様こそ……)
頬に朱を宿しながらも、騎士としての顔を崩さぬよう、必死に表情を整えた。
「これ以上、剣を振るうつもりなら……この拳で止める」
雷鳴のような声が響き渡る。
誰もが震え、武器を握る手を強張らせる。
その視線に、レオンハルトは鋭い光を宿し、堂々と歩を進めた。
「民を守るのも、国を守るのも、俺の役目だ。だが王子を脅かすなら一切の容赦はしねぇ」
その名を出した瞬間、ユリウスの胸が大きく跳ねた。
民衆は互いに顔を見合わせ、次第に武器を落とし始める。
「な……なんて力だ……」
「これが、聖者……」
「逆らえば、一瞬で……」
恐怖だけではない。
彼の背に立つ姿には、圧倒的な信頼と畏敬を呼び起こすものがあった。
やがて広場は静まり、残ったのは重苦しい沈黙だけ。
レオンハルトは拳を下ろし、群衆を見渡した。
「……いいか。怒りをぶつける相手は王族じゃねぇ。民を苦しめる腐った貴族共だ。奴らは私腹を肥やすため税を上げまくってると聞く。許せねぇよな?……俺が必ず引きずり出す。だから今は、剣を置け」
その言葉に、民の瞳に迷いが宿る。
そして、一人、また一人と武器を捨てていった。
やがて群衆全体が膝を折り、地面に額を擦り付ける。
「聖者様……!」
「どうか我らを導いてください……!」
広場は、一瞬で服従の場へと変わった。
その光景を見つめ、ユリウスは息を呑む。
――これが、王をも凌ぐ威光。
自分が目指していた「言葉の力」よりも、ずっと強く、民を従わせる力。
(まるで……彼こそが王のようだ……)
胸がざわめく。
羨望か、嫉妬か。
それとも、ただの動揺か。
ユリウスは答えを見出せぬまま、レオンハルトの背中を見つめ続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
オメガバースの世界に転生!?アルファに生まれ変わってパパになります
みたらしのだんご
BL
オメガバースの世界に転生します。村でのびのびします。
ボーイズラブ要素はゆっくり出していきますのでしばしお待ちを
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる