時計塔には秘密が眠っている~Rewrite

無名小女

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NO.8.5

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ジレット視点

最近、リックと遊ばなくなった。
リックを遊びに誘っても断られるからだ。

あいつが放課後毎日のように時計塔に向かっているのを俺たちは知っている。確か1年の学年末テストの3週間くらい前だろう、その辺りからだったはずだ。あの時期、あいつが初めてテストを気にし始めたことにとても驚いたのが……今でも記憶に新しい。

あいつが時計塔に向かっているのではないか、という話はリエルから聞いた。勉強会に誘うのにリックとすれ違った道。その先には時計塔くらいしかないはずだ、と。本来立ち入り禁止の場所で何をしているのかは気になったけれど、何故か聞いてはいけない気がして誰も問いただしたことは無かった。

「テスト勉強に真剣なのかとばかり思ってたけど、どうも違そうだよなぁ」

俺の呟きは、薄く曇った空に溶けてなくなる。

今日もリック不在の中3人で遊んでいる。校内の中庭の芝生が生えている場所で、川の字になってぼんやりと空を眺めていた。薄い雲は、俺たちの心の影を視覚化したものだった。

「嫌われちゃったのかな……リック君に……」

リエルが泣き出しそうに震える声でそう言った。

「……それはないな」

付き合いは悪くなっているが、嫌われているわけではない。それだけは分かっていた。そのくらいは昼食の時間を見ていれば伝わってくる。

あいつは嘘が得意ではないし、むしろ苦手なのではないだろうか。

かつて俺とあいつが初めて会った時の、何か一つのことにしか興味が無いような目――授業も先生の説教も、面倒臭そうに流している様子――勉強を始めて驚かれた時の、憂鬱そうな顔。それ以外にも普段から喜怒哀楽の表現には富んでいる。リック自身に有利になる感情しか見せないとか、どこかミステリアスだとか、演技を思わせる要素がない。そして俺自身の直感もあいつが正直者だと告げている。

それに男の友情というのは、時間経過で崩れ去るものではないのだ。

「そうね、きっと嫌われてはいないわ。だからリエルも落ち着いて?」

ミーシャが同意を示しながら、寝返りをうってリエルの手に優しく触れる。まるで幼い子供をあやす母親のような表情を浮かべながら。ニヒルな笑みが多いミーシャにしては相当珍しい表情といえた。

「嫌われてなくても、リック君は離れていっちゃう。このまま手の届かないところまで……」

リエルの消えて無くなりそうな心の叫びは、ミーシャによって拾われていた。

「決めたわ」
「何を?」

俺は間髪入れずに尋ねていた。待ってました、と言わんばかりに上がるミーシャの口角。

「――あの鈍感男に私たちの気持ちを分からせるのよ」
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