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オーパーツ、動く
湿地帯の目覚め 2
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移動を開始した俺たちは、木に隠れながらも大胆に──というかハミースがデカいだけだが──円を描くように敵陣営の反対側、前線の後方へと移動した。
途中、敵の兵士が複数名剣を磨いている光景や、投擲器を整備する姿も見えた。つぎの大規模攻撃は近そうだ。
「おい、地図を見せろ」
「おう」
ハミースが地図を出すようせかすので、懐のポケットから一帯の地図を出す。
小さな地図には土がつき、あまりきれいとは言えないくらい汚れていた。
この汚れ、どこでついたっけ? もう数週間は使ってるから、どこかで汚したんだろうな。
「どれ、俺たちは今どこだ?」
「だって確認する暇もなかったじゃねぇか。お前わかってたか?」
「地元民じゃあるまいし、わかるわけないだろ」
そもそも土地勘がない俺に聞いても回答は返ってこないって理解してるくせして、ニヤニヤと聞いてくるものだから耳でもつねってやろうかとイラついた。
こんな森の中では方位感覚もわからなくなる。実際、今も自分の向いてる方位が一切わからない。
「てか、ここが把握しないまま移動してたのか?」
「把握も何も、ただなんとなくあっちの方が木が多そうだったし、立てそうだなって思ってこっち来たんだよ。特に理由はないぞ」
目的がないなら何のために動いたんだよ!?
「じゃあ、俺たち何しに来たんだ? こんなところに」
「わかんね」
……前々から悩んでたことだが、いつもコイツは記憶力が足りない。大体のことは覚えているが、数分前のことだって忘れることがある。
たくさんあるハーミスの欠点の中でも、一番めんどくさい欠点。
「まぁいいや──で、俺たちは前線の後ろにいるわけだが、今までざっくりみてきてまだ敵の増援部隊が来ていないみたいだな。それはわかるよな?」
「そうだな、たしかに数は少なかった」
ここにくるまでに記録した敵兵の数は、情報と違い明らかに少なかった。もっといるかと思ったが……。
と、なるとだ。
「で、しかも元々いたはずの兵士も消えている。あの数でもわかるだろ?」
「あぁ、捨てられてる食器の数もつじつまが合わない。まだ二日前の偵察のほうが数は上だったよな?」
「そうだ。で、騎兵も見えないってことはどこかに隠れてるか、撤退したか」
通常歩兵の他にも、二日前までいた騎兵隊も見えなかったため、これは怪しい。先日の偵察ではまだ騎兵隊が馬と一緒に寝てたのに、忽然と消えてしまった。
「それか他の方向から攻撃を試みている可能性だ」
「でも、もし右側に行った場合自軍と確実にぶつかるから……」
ハーミスが首を捻る。
「行くとしたら左側。敵も同じことを考えてたのかもな」
「そうなると大変だな」
腕を組み、ムムムと唸るハーミス。もし敵がそんな動きをしているとしたら大変だ。両軍とも、互いに同じタイミングで攻撃を行うことになる。
自軍は明日の朝に攻撃を行うことになっている。騎兵隊、歩兵、重槍兵。右側から一気に攻め、司令部を攻撃するのが目的だ。
この平原を占領すれば、戦況は多少優勢へ向かう。その後の反撃次第では、島の山脈まで押し返せるかもしれない。
しかし、どこまでもだだっ広いこの平原ではそのような動きをすれば感づかれる。だから、とある奇策をとる。
「明日の朝、平原に巡らせた石油導火線で事前に積んだ材木に発火すると、発生した黒煙でどちらも相手陣営の動きは把握できなくなる……メランコ将軍の案はいいと思うんだがなぁ」
「あのおっさんにしてはまともな案だよな。俺ビビっちまったよ」
「軍将メランコは頭脳もピカピカ、頭はテカテカってか」
「クククッ、笑わせんなよ」
なんでこんなことで吹き出すのかわからないが、もう気にするのはやめた。
こんなくだらない話をするが、どっちも顔はマジだ。この偵察次第で、作戦が変わる。
「とりあえず、ここの湿地帯の脇を調べよう。ここは敵の大動脈だ」
「それ、危なくねぇか? だってよ、敵と遭遇するかもしれねぇんだぜ?」
「だけど、そうでもしないと撤退か転進か確認できない。ほら、つべこべ言わずさっさと行くぞ!」
嫌がるハーミスを引き連れ、少し先の湿地帯を目指すことにした。
早く前線の司令部に戻らねば──
途中、敵の兵士が複数名剣を磨いている光景や、投擲器を整備する姿も見えた。つぎの大規模攻撃は近そうだ。
「おい、地図を見せろ」
「おう」
ハミースが地図を出すようせかすので、懐のポケットから一帯の地図を出す。
小さな地図には土がつき、あまりきれいとは言えないくらい汚れていた。
この汚れ、どこでついたっけ? もう数週間は使ってるから、どこかで汚したんだろうな。
「どれ、俺たちは今どこだ?」
「だって確認する暇もなかったじゃねぇか。お前わかってたか?」
「地元民じゃあるまいし、わかるわけないだろ」
そもそも土地勘がない俺に聞いても回答は返ってこないって理解してるくせして、ニヤニヤと聞いてくるものだから耳でもつねってやろうかとイラついた。
こんな森の中では方位感覚もわからなくなる。実際、今も自分の向いてる方位が一切わからない。
「てか、ここが把握しないまま移動してたのか?」
「把握も何も、ただなんとなくあっちの方が木が多そうだったし、立てそうだなって思ってこっち来たんだよ。特に理由はないぞ」
目的がないなら何のために動いたんだよ!?
「じゃあ、俺たち何しに来たんだ? こんなところに」
「わかんね」
……前々から悩んでたことだが、いつもコイツは記憶力が足りない。大体のことは覚えているが、数分前のことだって忘れることがある。
たくさんあるハーミスの欠点の中でも、一番めんどくさい欠点。
「まぁいいや──で、俺たちは前線の後ろにいるわけだが、今までざっくりみてきてまだ敵の増援部隊が来ていないみたいだな。それはわかるよな?」
「そうだな、たしかに数は少なかった」
ここにくるまでに記録した敵兵の数は、情報と違い明らかに少なかった。もっといるかと思ったが……。
と、なるとだ。
「で、しかも元々いたはずの兵士も消えている。あの数でもわかるだろ?」
「あぁ、捨てられてる食器の数もつじつまが合わない。まだ二日前の偵察のほうが数は上だったよな?」
「そうだ。で、騎兵も見えないってことはどこかに隠れてるか、撤退したか」
通常歩兵の他にも、二日前までいた騎兵隊も見えなかったため、これは怪しい。先日の偵察ではまだ騎兵隊が馬と一緒に寝てたのに、忽然と消えてしまった。
「それか他の方向から攻撃を試みている可能性だ」
「でも、もし右側に行った場合自軍と確実にぶつかるから……」
ハーミスが首を捻る。
「行くとしたら左側。敵も同じことを考えてたのかもな」
「そうなると大変だな」
腕を組み、ムムムと唸るハーミス。もし敵がそんな動きをしているとしたら大変だ。両軍とも、互いに同じタイミングで攻撃を行うことになる。
自軍は明日の朝に攻撃を行うことになっている。騎兵隊、歩兵、重槍兵。右側から一気に攻め、司令部を攻撃するのが目的だ。
この平原を占領すれば、戦況は多少優勢へ向かう。その後の反撃次第では、島の山脈まで押し返せるかもしれない。
しかし、どこまでもだだっ広いこの平原ではそのような動きをすれば感づかれる。だから、とある奇策をとる。
「明日の朝、平原に巡らせた石油導火線で事前に積んだ材木に発火すると、発生した黒煙でどちらも相手陣営の動きは把握できなくなる……メランコ将軍の案はいいと思うんだがなぁ」
「あのおっさんにしてはまともな案だよな。俺ビビっちまったよ」
「軍将メランコは頭脳もピカピカ、頭はテカテカってか」
「クククッ、笑わせんなよ」
なんでこんなことで吹き出すのかわからないが、もう気にするのはやめた。
こんなくだらない話をするが、どっちも顔はマジだ。この偵察次第で、作戦が変わる。
「とりあえず、ここの湿地帯の脇を調べよう。ここは敵の大動脈だ」
「それ、危なくねぇか? だってよ、敵と遭遇するかもしれねぇんだぜ?」
「だけど、そうでもしないと撤退か転進か確認できない。ほら、つべこべ言わずさっさと行くぞ!」
嫌がるハーミスを引き連れ、少し先の湿地帯を目指すことにした。
早く前線の司令部に戻らねば──
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